
ぼくは何よりも「唱歌」大好き人間です。研究というほどではなかったけれど、それなりに入れ込んできました。明治初期の「学制」導入以来、唱歌は学校とともに続いてきました。長野県の先覚、伊澤修二さんの多大な貢献ではありました。多くの人たちは「小学校唱歌」と聴くと、懐かしい、思い出すなあ、あの頃をなどと、しばし懐旧の情に浸るのが常です。「歌は旗になる」という一例証。ところが、令和 7 年の今もなお、「唱歌」花盛りというスポットが都内にあります。場所は「お台場」、言わずと知れた海浜地区の一大名所になっています。ぼくは出かけたことはないけれど(二度だけ、かみさんの同級生一家が所有していたレジャーボートで、臭いにおいを一杯に嗅がされながら、「お台場」近辺を周遊して、ほとほと懲りたことがある。もう一度は、親類が集まって「屋形船」でお台場付近で天ぷら宴会をしたことがある。二度とするものかという決意は固くなった)
もともと「台場」は幕末ペリー(黒船)の襲来に備えて作られた、砲台の設置場所でした。「黒船」に作らされたようなものだった。それ以来、幾多の変遷を経ながら、今は一大アミューズメントパークの趣を呈しているそうで、その中心には民間テレビ局が「奇抜なビル」を誇っているらしい。そのテレビ局が、まさに「内憂外患」の憂き目に遭遇し、今や落城寸前です。いや、疾(と)うに落城している。ぼくの意識では、すでに二十年も前から、テレビ時代は終わっていたのです。

以下、例によって、ばかばかしい「三題噺(さんだいばなし)」です。「ステークホルダー」「ACジャパン」「(唱歌)港」の三題。本来の放送法の主旨を捻じ曲げて、「バカ話」「お笑い」「旅と食」番組に現(うつつ)を抜かしている、その裏で自社女性職員を「タレント」に派遣(献上)していたとされる。会社ぐるみの「女衒商売」で名を馳せていたと、今になって、ようやく言われだしたのでしょう。心ある主は、この会社では払底してしまったのかもしれません。黒船株主から大砲を突き付けられ、やむなく仕組んだ「偽装会見」が飛んだ藪蛇。知らぬ存ぜぬ、タレントと女性職員とのプライベートな問題だ、と言い逃れできるはずもない、頓馬天狗たちの籠城している「頓馬天国」だった。そのおかげで、驚くほど多くのスポンサーが逃げ出した。珍しいことだが、この逃げ足の速さは、この会社はヤバい、こんなところに金を出していては、数多のステークホルダーから糾弾されるのは目に見えているというのでしょう。
たくさん給料を取っている(会社を食い物にしている)役員たちの、どれもこれもが箸にも棒にもかからない「木偶の棒」ばかりだったというのは見事ですね。この「木偶の棒」たちは、かなり長期間にわたり大学閥で結束して、この会社の土台を食いつぶしていた「クロアリ」たちだった。その大学名はぼくもよく知っている、W大、K大などと噂されている。この連中の程度をして「企業ガバナンス」を云々することは無意味でしょう。「楽しくなければテレビじゃない」とばかりに、テレビ電波を悪用して、視聴者までも食い物にしていた輩ですか。その挙句の「フジ大噴火」です。「やらせでなければテレビじゃない」ということだったでしょうか。

「さて、見る機会が増えたACジャパンの広告で印象に残ったのは『決めつけ刑事(デカ)』。SNSに上がる情報をうのみにし、罪のない人を傷つけてしまう危うさを描く。真実を見つめる目を曇らせていないかという警告にも思える」「マスコミは民主主義のとりでであり、権力監視の役割を担う。何より弱者に寄り添う姿勢が求められる」と、「有明抄」はびっくりするような寝言を垂れています。本気でそう思っているのか、と訊くだけ野暮でしょう。何を言われても「どこ吹く風」だったから、事態が窮迫しているんです。「糠に釘」を刺してどうしますか。「声を上げたくても上げられない人に思いを巡らせているだろうか」と、何処の国のテレビのことを言っているのでしょうか。マスメディアの現実を、満更知らないわけでもないのに。吉本とジャニーズのタレントたちにハイジャックされた、この社会の頽廃を、テレビ業界が一気に広げ、かつ深めた、一連の経緯を知っていたでしょうに。新聞だって、一面では「共犯(accomplice)」(ステークホルダー)だったのではありませんか。
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唱歌「港」は明治二十九に年発表された。(日清)戦争に勝利したと、国を挙げて舞い上がっている時期でした。島国の悲哀を託(かこ)つのではなく、その反対に、島国は「海洋国」の証とばかり、世界に開かれている将来を無条件に称揚しているのです。やがて、その国民感情は「日露戦争」で止めようのないほどに舞い上がる。お台場に君臨しているつもりだった「フジ」丸は「港はいつも春なれや(そんなことはないはずですのに)」と持ち上げられ、「よせ来る波も黄金なり(あり得ないこと)」と、バカ番組にも大枚を貢いでくれる、ありがたいスポンサーを「波扱い」です。一家・一族(フジ)の繁栄を誇り、お台場の春爛漫に狂喜してきたこの「フジ」も敢えなく沈下するほかない事態に陥っている。今回の問題に対して、グループを形成していた組だった「サンケイ」はおとなし過ぎて、彼の新聞らしくないのは、なぜか。

「港」(文部省・明治29年)
(一)空も港も夜ははれて
月に数ます船のかげ
端艇(はしけ)の通いにぎやかに
寄せくる波も黄金なり
(二)林なしたるほばしらに
花と見まごう船旗章(ふなじるし)
積荷の歌のにぎわいて
港はいつも春なれや
(作詞・旗野十一郎、作曲・吉田信太)
(「港」文部省唱歌 尋常小学3年)
(https://www.youtube.com/watch?v=wY5Z_2Zj7Dk)
第一に「港」が潰れれば、お台場は存在できないほどに、港とお台場は一体だったのですから、気の毒ですけれど、こういう運命にあったともいえます。今も変わりないと思いますが、大学生の憧れの職業が「お茶屋(テレビ局)」の店員(「局アナ:というらしい)だったとは。いつでもそうだったというのではないが、このお茶屋業で社業は順風満帆と錯覚したのが「港一家」だったのでしょう。学閥や人脈というものがどれほど組織を腐らせ、人間を堕落させるものなのか、それを考えれば、己のしていることに意識が働かないまま「裸の王様」「裸の家臣」になりきってしまった。汚い表現ですけれど、かわいそうな馬鹿者たち、そのようにいっておくばかりですね。
「空も港も夜ははれて」とは不夜城ということです。お台場一帯は「いつだって春」と、まるで「清盛」のような不遜な振る舞い(「わが世の春」意識)だったのは、明治期の島国の一面であったし、今ではお台場の「フジ」だったというのでしょう。運の尽き(月)というが、事ここに至っては、これまでに社内であった(起こった)、反社会的・非道徳的なことを洗いざらい明らかにすること。それを多くの人は「膿をすべて出せ」というのです。確かにそうです。でも「すべての膿」を出し切ったら、何も残らないことは明白ですね。

(余話として)「港町十三番地」(石本美由紀作詞、上原げんと作曲・昭和32年)、ひばりさんの歌ですが、どういうわけか、ぼくはこの歌が大好きでした。「港」というのは出会いと別れの場所でもありますし、もちろん、出船・入船の邂逅の場でもあります。なんだか、人生には「港(port)」が不可欠だという気になっているんですね。(美空ひばり「港町十三番地」)(https://www.youtube.com/watch?v=GFLDcnCsZO4)
今から七十年近く前の歌です。現在の銀座・築地界隈を歌たものとされます。でも、今この歌を聴いていると、どうもお台場の近辺の情景が見えてきそうです。「港」に着いた船乗りが、しばし旧交を温めて、また出ていく。出会いと別れの悲喜交々、それが港でしょうか。今次の騒動を遠くから見ていると、「港」をめぐる幾多の悲哀、そこには「渚」もあれば、「波を枕に」もあるという、何とも世相を如実に反映しているようにも、ぼくには思えてきます。やがて、「港」は水没する運命にあります。(この問題に関しては、ぼくはもう今後、一切触れないつもりです)
船が着く日に 咲かせた花を
船が出る夜 散らす風
涙こらえて 乾杯すれば
窓で泣いてる 三日月様よ
ああ港町 十三番地
(JASRAC No.083-0132-8)
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【新生面】ステークホルダー ビジネスの現場で飛び交う言葉の一つに「ステークホルダー」がある。企業活動の影響を受ける利害関係者のことだ。もともとは掛け金を保有する投資者を指したが、解釈が拡大されるようになった▼今週、その存在を最も痛切に感じたのはフジテレビの社長ではないか。タレントの中居正広さんが起こした女性トラブルに関する週刊誌報道を巡って記者会見を開いたのは先週の金曜日。しかし「説明が不十分」などと批判を浴び、今週に入りスポンサーが続々とCMを差し止める騒動になった。一部の動きは熊本にも波及している▼中居さんは芸能活動の引退を発表したが、それだけで収まる話ではなかろう。フジテレビが尊重していたのは、本当に被害女性の思いだったのだろうか。社内に巣くう何かの意思が働いたのでは。もう一方のステークホルダーである視聴者の多くも、釈然としないままだ▼フジテレビは総務相からも早期の調査と適切な対応を求められた。1週間で経営を揺るがす事態に陥るなんて、経営陣は想像していなかったに違いない。現場の混乱はいかばかりか▼「シェアホルダー」という言葉もある。より狭義の利害関係者、株主だ。米投資ファンドはフジテレビ側に送った書簡で、社長会見によって露呈した危機管理対応のまずさや、企業統治の欠陥を指弾した▼関係各所からの外圧を受け、渦中の社長は27日に再び会見に臨むという。さて、来週のフジテレビは? またも対応を誤れば、『サザエさん』の笑顔も消えかねない。(熊本日日新聞・2025/01/25)
【有明抄】中居さんの引退発表 最近、ACジャパンのテレビ広告がますます増えたと感じていたら、きっかけをつくったタレントの中居正広さんが芸能界からの引退を発表した。自身の女性トラブルを巡り、週刊誌をにぎわせていた◆この問題、真実がベールに包まれているようで何か釈然としない。週刊誌が報じたように、フジテレビ社員が関与していたのだろうか。中居さんの責任に加え、フジテレビが今月17日の記者会見で参加制限をかけたり、動画撮影を禁止したりしたことが問題をさらに複雑にした◆「知る権利」を掲げる報道機関にとって自縄自縛の行為。隠し事があるのではないかという不信感が増す。ACジャパンへの広告差し替えが相次いだのは中居さんに対する責任追及というより、フジテレビに対する抗議の現れだ◆さて、見る機会が増えたACジャパンの広告で印象に残ったのは「決めつけ刑事(デカ)」。SNSに上がる情報をうのみにし、罪のない人を傷つけてしまう危うさを描く。真実を見つめる目を曇らせていないかという警告にも思える◆マスコミは民主主義のとりでであり、権力監視の役割を担う。何より弱者に寄り添う姿勢が求められる。一連の問題で一番の被害者は誰だろう。声を上げたくても上げられない人に思いを巡らせているだろうか。報道機関に働く一人として、そう自問している。(義)(佐賀新聞・2025/01/25)

台場【だいば】= 江戸末期に江戸湾(東京湾)品川沖に築かれた砲台(史跡)。品川台場,お台場とも。現在は港区に属する。黒船来襲に備えて1853年―1854年江川太郎左衛門が設計。7砲台が築かれたが,第4・第7砲台は未完成,砲台は実戦には用いられなかった。東京港の築港に伴い,一部は埋立地,防波堤と連なり,一部は取り払われ,現在は第3,第6台場が残り,第3台場は史蹟公園となっている。1990年代に周辺の開発が著しく進み,レインボーブリッジが完成してゆりかもめや東京臨海高速鉄道が開通,お台場海浜公園一帯には住宅団地やホテル,放送局,ショッピングセンターなどが完成して,東京の新しい名所となった。(百科事典マイペディア)
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