
44歳のシングルマザー、アンドレヤ・ガーランドさんは、ミドルクラス中心の風情ある街・ニューヨーク州フィッシュキルで3人の娘とともに暮らしている。今年5月、彼女は護身用にショットガンを購入し、撃ち方を習うため、地元に新しくできた射撃クラブに加入した。クラブの規模は急速に拡大している。/ その後、ピストルの所持許可も申請し、ますます品薄になる弾薬類が入荷しないか常に気を配っている。地元のウォルマートに週3回は通うが「いつも品切れだ」と彼女は言う。/ 今年、米国の銃器産業は記録的な売上高を達成しているが、それを支えているのは、ガーランドさんのような初めて銃を購入する多数の顧客だ。彼女が銃器購入を決意した理由の一端は、気掛かりなニュースが重なっているためだ。新型コロナウイルスによるパンデミック、警察による黒人殺害をめぐる社会不安、そして多くの人が「選挙」の結果をめぐる紛糾が暴力事件につながることを心配している。/「周囲のあらゆる状況を考えると」とガーランドさんは言う。「銃は必要だと思う」──と。(中略) ロイターが10数人の業界専門家、研究者、銃砲店オーナーに取材したところ、今年の市場拡大には、女性やマイノリティ、政治的にはリベラルで、これまでは銃所有など考えたこともなかった人々など、新たに殺到した初回購入者が含まれていたという。/「ふだんなら銃について考えもしない人々が、自分たちの領域以外のことを真剣に考えざるをえなくなっている」と語るのは、イリノイ州シカゴ郊外のデスプレーンズで銃砲店「マクソン・シューターズ・サプライズ・アンド・インドア・レンジ」を営むダン・エルドリッジ氏。/ 業界アナリスト、業界団体、さらには大手銃器メーカーであるスミス&ウェッソン・ブランズのマーク・ピーター・スミスCEOによれば、今年は初回購入者の数が急増しているという。/ スミスCEOは9月3日、投資家とのオンライン会議の中で、今年の売上高の約40%が初めて銃器を購入する顧客になるとの推定値を示した。同氏によれば、これでも控えめな予測で、過去数年の「全国平均の2倍」に相当するという。(以下略)(https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/10/post-94802_1.php)



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彼の国は長い間、「世界の警察官」と自他ともに任じていたといわれていました。だからあらゆる人が銃にアプローチするのは不思議ではないのでしょう。だが、見方を変えれば、銃がなければわが身さえ守れないということの証明でもあるのです。前回の選挙時にも銃購入者の急増が話題にされていました。民主党が勝てば、…。ぼくは狭い了見というか、管見のかぎりで、米国は「憲法にロイヤリティ」を示す国と聞かされていました。憲法が主人というか中心であり、その下に人民が集う、約束するという政治・社会の姿が深く印象付けられてきたのです。しかし、その反面で「世界の介入者・節介者」であるという姿も、これまでにいかんなく発揮してきたのは事実です。アメリカの権力に楯突く、気に入らない勢力が政権を握る、そうなれば必ずと言っていいほど、「軍事介入」して政権を転覆させてきた、使われる手段は様々ですが、自国の軍門に下らせてきたのです。その典型はこの島の「戦後の歴史」です。戦後は一貫して「軍門に下り放し」であるのは承知の事実です。

国内にあっても、権力を握ったものの意向に沿わなければ、「引金を引く」という並外れた「規則」を持った社会であるようです。いまはあらゆるところで分断、断絶が叫ばれていますが、最後の手段は武器を携帯した(行使した)暴力でしょう。実に長い間、この国では「銃規制」が問題視されてきましたが、いっかなそれが実現する兆しは見えてきませんでしたし、いまでは銃の保持は市民の権利でさえあるという具合です。事柄や問題を「銃で解決」するのが、表向きはデモクラシーの先進国と称されるアメリカの「解決法」だというわけです。銃付き民主主義だった。(「ホおじさん」の写真を出したついでというのも変ですが、この半月間、ベトナムに台風が数次にわたって直撃し、フエをはじめとして各地で風水害が発生しています。多くの死者も出ています。被災に合われた方々のご無事を祈りつつ、さらにご注意されますように、島社会の一隅から祈っています)

ぼくは秀吉が断行した「刀刈り」以来、戦後まで時の権力者は一貫して民衆の「武器所持」を規制してきたことに、一定の理解を持つものです。でも、武器は国家権力が独占するという現実にも問題ありと考えています。ここで詳細は述べませんが、この島の「銃刀法」ほど奇妙な規制法はないように思います。まるで笑いばなしにもならないようですが、ある大工さんが「検問(職務質問)」を受け、車内から大工道具が出てきたので逮捕されたという事件がありました。また工事関係者が一本のドライバーで拘束されるという事案もありました。何が武器なのか、権力が認定するという行き過ぎもあります。武器の一極集中です。

さて米国の「現実」に戻ります。まことしやかに、杞憂(内乱・第二の市民戦争などと)が語られています。「杞憂」で終わればいいのですが。そうでない恐怖、あるいは危険性が除去できないほどに、対岸の大国も病んでいるということでしょう。間違いなく、その病は此岸(この島)にも押し寄せてきます。すでにこの島でも罹患者は少なくないようです。さらに悪化するのか。これまた「杞憂」では終わらない恐怖があります。ここまで事態を放置していたのはだれなのか、なぜなのか、世界の知恵を出しても間に合わない状況かもしれません。「戦争は他の手段による政治の継続である」(クラゼヴィッツ)
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