
昨日(2月15日)午後、拙宅に卒業生が集まった。(半世紀近く在籍していた)大学の担当ゼミの卒業生でした。よく忘れないで、教師の風上にも置けないようなダメ人間のところを訪ねてくれたものと感謝しています。話せば長くなるし詰まらぬことでしたから、その話は省きますが、ぼくは授業を担当するのが他人よりうんと遅かった。「助手」になったのは25歳過ぎだったが、それから横道に入り込み、当時の上司(教授)の意に背いて論文なども書かなかったから、案の定、「君は首だ(You get fired.)」と告げられた。(この辺りの事情はどこかで触れています)「首になるのはかまわないが、先生から給料をもらっているのではないし、教授会で決められた人事ですから、そこに諮ってほしい」と告げたら、その件は沙汰止みになった。というわけで、昨日来てくださった面々は、担当した、最初期の「演習(ゼミナール)」の卒業生でした。
ほぼ、三十年ぶりの「ゼミ」の復活だったと思う。総勢は十三名。狭くて汚いわが家にはもったいないほどの訪問者(賓客)だった。スマホ電話で参加された方もいました。もちろん、その方も同時期のゼミ生でした。ぼくの連れ合いも、臨時ゼミに参加していたが、時に戦友の「旧悪をばらす」という宜しくない言動もあって、冷や汗ものだったが、最終的には夜の八時過ぎに解散。およそ6時間に及んだ臨時ゼミは終わりました。宮城や大阪から来られた方の帰宅行は大変だったと思う。ここで、十三名(+電話参加のおひとりも)の方々について、三十年ほどの間隔を埋めるべく、なにがしかのコメント(人物評)を書くところでしょうが、ぼくにはその観察力も表現力も備わっていない。いささか変則に流れますが、今から60数年前に観た映画「ブルーハワイ(Blue Hawaii)」の主題曲になった、エルヴィス・プレスリーの<Can’t Help Falling in Love>( 1961年作)を引用して、その代用にしたいと思う。

曲自体は、「チャラい恋愛節」です。しかし、昨日から今日に至る、ぼくの心境を正直に吐露するなら「愛さずにはいられない」というほかないと、懐旧の情の胸に迫る(込み上げる)ものがあったのです。ぼくは「教育」を志(むね)とする授業や活動に、ささやかながら従事していました。軽薄なことに、人並みに「教育とは…」と訳知り顔で語ってきたし、語りすぎてきたという慙愧の念がある。だから、その罪滅ぼしのように、かかる「駄文ブログ」を書き殴っているのでしょう。要するに、ひとはひとを、遂には<Can’t Help Falling in Love>という地点にまで至れれば、以って冥すべしとするのです。誰彼にも成功や失敗があるのは当然でしょう。それを含めて、教育は付き合いに尽きると、ぼくは確信している。長い付き合いの中で育つもの、それはお互いが作り上げるものであり、それをあえて「教育」と呼んでもいいでしょう。「教室を超えて続く」ものですよ。
(無駄話 かみさんと一緒になって54年目を迎えています。(山間ゼミ)開催の日が、ちょうどその「結婚記念日」にあたっていた。この長い間の連れ合いとの交際からは驚くほどたくさんのものを万田と思う。「教育とは長い間の交際に尽きる」「付き合いの最中で生じるあれこれこそが教育なんだ」ということです)
旧交を温めている際に「少しも変わらない」という言葉がたくさん出てきました。この評言にはいくつもの意味(含意)があります。三十年経っても変わらないというのは、いい・悪いではない、変わらない「その人(の核心部)」を掴まえたという確かさがあってのことだったでしょうか。プレスリーの歌は若い男女の、束の間の恋物語ですから、<Only fools rush in>、いわば「若気の至り」「一目惚(ひとめぼ)れ」というもので、これを世間では「恋は盲目」とかいうらしい。ぼくにもそんな時代があったかどうか、記憶力の衰えは何も示してくれません。だから、大事なのは、「ずっと盲目でいられれば」ということでしょう。

別の表現でいうと、「痘痕(あばた)も靨(えくぼ)」ということ。熱が冷めてみると「なんだ、アバタじゃん」ということになるのがお定まり。さてそれから先をどうしますか。「好きになり続ける」のは至難の業だけれど、その「好き」の中にたくさんの「嫌い」がなければ、「好きだけの感情」にはいささかの展望もないでしょう。「愛」の強さに応じて生まれてくるのは「憎」です。「愛憎半ばする」というのは本当ですね。恋愛とは何か、ぼくにはわかりませんが、好きと嫌いが背中合わせで、ひとは付き合う。
いささか脱線気味です。「二十歳前後の若者たち(三十年ほど前の)」が、拙宅の居間に集われていたことを想うと、一入(ひとしお)の感慨がありますね。うんと若いころ、ぼくはプレスリーに好(い)かれていたことがありました。後年、彼の伝記などを調べ、大変な生涯を送った人として、改めて聴き直したものでした。彼は双子で生まれたが、乳児期、片割れがその横で死に絶えている中、真っ暗な穴倉のような部屋で生き延びたのでした。その後も極貧に洗われた家庭で育てられた。後年の彼の明るくも、時に暗い影が差す表情に、ぼくは引き付けられていた。まだぼくは高校生だった頃のこと。
Can't Help Falling in Love
Wise men say
"Only fools rush in"
But I can't help
Falling in love with you
Shall I stay?
Would it be a sin
If I can't help
Falling in love with you?
Like a river flows
Surely to the sea
Darling, so it goes
Some things are meant to be(以下略)
<Elvis Presley – Can’t Help Falling In Love (Official Audio)>(https://www.youtube.com/watch?v=vGJTaP6anOU) <Elvis Presley – Can’t Help Falling In Love (’68 Comeback Special)>(https://www.youtube.com/watch?v=ttuVUynl5SU) <Can’t Help Falling in Love – Lucy Thomas – (Official Music Video)>(https://www.youtube.com/watch?v=0siyVtIxu4M)

● プレスリー(Elvis Presley)生没年:1935-77 アメリカの大衆音楽が生んだ戦後最大のスター。南部黒人音楽の中心地メンフィスで貧しい白人労働者家庭に育ち,黒人のリズム・アンド・ブルースをまねて歌ったのが,ロックンロールの創始者の一人としての栄光につながった。1954年に初めてのレコード《ザッツ・オーライト・ママ》を録音した。それがきっかけで広く認められ,56年に《ハートブレーク・ホテルHeartbreak Hotel》の大ヒットを放ち,ロックンロールのブームを世界中に巻き起こした。その後も《冷たくしないで》《ラブ・ミ―・テンダー(やさしく愛して)》などの大ヒットを連発。58年から60年までの兵役による活動中断後は映画出演が多くなり,歌手としても幅広い層を狙った保守的な行き方へと転換した。すでに映画界へは1956年《やさしく愛して》でデビューしていたが,60年代にはドン・シーゲル監督による《燃える平原児》(1961)のほか,ヒット曲をからめた《ブルー・ハワイ》《ガール!ガール!ガール!》《ラスベガス万歳》など多くに出演した。これらの多くは明るく健康な好青年が,恋と冒険に活躍する単純なストーリーで,興行的には成功したものの,しだいに衝撃力が弱まった観があった。しかし,68年以降,テレビの特別番組や,ラスベガス・インターナショナル・ホテルのショーで成功を収め,同じショーを記録した映画《エルビス・オン・ステージElvis On Stage》(1970),ホノルル公演の世界宇宙中継など華やかな活動で王者復活の話題をまいた。しかし過酷なスター生活のなかで健康をむしばまれ,42歳で死去した。(世界大百科事典)
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大学一年生の英語の授業で、担当教師は「RとL」の発音の違いを正確にしないと大変なことになると、実際にあった話を教えてくれました。プレスリーの「優しく愛して」はその時の格好の教材だった。love が rub になっている、それが<Only fools rush in>ということの真意かもしれません。「優しく擦(こす)って」と、愛することを取り違えないでおこうと、若かった(なんと二十歳前でした)ぼくは心に決めました。この担当教師のU 先生。彼は優れた言語学の研究者でもあったが、若くして亡くなられた。このUさんの結婚式で、ピアノ演奏者を探すように頼まれて、知り合いの女性音楽家を紹介したことも思い出します。
間断なくというのか、間断を挟みながらかもしれない、それでもなお続く関係を大事にしたい。「あの人は、昔のままの人だった」という再発見が、また新たな関係のきっかけになるのでしょか。教育は教室を超え、学校を越えて続く(「付き合い」という関係です)。だから、「遠路はるばる」と、辺鄙なところに来てくださった方々に、深く感謝します。
(postscript 小さな声(文字)で。「ヨーコチャン、この駄文、あなたの目に留まるといいな」 そして、先は長いぜよ、とも言っておきたいね)
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