
多元的無知とは社会心理学者のオルポート,F.H.が使用した言葉です。/これは集団内で取られるある行動について、自分は賛成していないにもかかわらず「きっと他の人たちはそうした行動に賛成しているのだろう」と、その集団内の多くの人が思い込む状態を表します。/ 例えば、大きな災害があり、飲み会やお花見などを一切自粛しようというムードが国全体に拡がっている時、自分自身は「ちょっとやり過ぎで、過剰反応ではないか」と反対意見を持ったとしても、「きっと周りの人は自粛するのが当然だと考え納得しているに違いない」と思い込むような場合が当てはまります。/ そこで、ちょっと本音を話してみようということになれば、実はみんなが「自粛ムードが過剰すぎる」と思っていると判明するということも往々にしてあります。(「心理学用語集サイコタム」=https://psychoterm.jp/basic/society/pluralistic-ignorance)
「多元的無知(pluralistic ignorance)」を別の表現に換えれば、「集団感染(outbreak)」、あるいは「群集心理(herd mentality)」とでもいえるでしょうか。あるいは「同調圧力(peer pressure)」「過同調(oversynchronization)」でもありますね。集団のメンバーはそれぞれ個々人で意識的に判断できる能力があるにもかかわらず、「みんながそう考えている」と思う・思い込まされることで、自分も「そうなんだ」「自分の考えは異端かも」と、あえて集団の中に自分を潜らせ、右に倣えという仕儀に至る。ぼくはこれを「付和雷同(follow the crowd)」と言い換えたい。「一定の主義・主張がなく、安易に他の説に賛成すること」(デジタル大辞泉)

この社会では「空気を読む」のに多くの人は敏感であるともいわれています。だから、逆に「空気を読まない」ものは✖印をつけられるらしい。アメリカは、それに反して「個が発達」しているので(そうでない人もたくさんいるのに)、自分の意見をはっきりと表明するなどと、そんなにはっきりとした根拠もないのに(とぼくには見える)、この国では多くの人々は間違った評価をしている・きたんじゃないですか。何処(いずこ)も同じ「秋の夕暮れ」、「8時だよ、全員集合」なんですよ。集団というのは、一つに固まると、ある意味では手に負えなくなる。だから、肝腎なのは、「固まり」から足を抜け出していること」ですね。
本日の「余録」はどうでしょう。この時期に、米国大統領の言動に対して、このような批判や意見を言わねばならぬと筆者は感じたかどうかわかりません。でも、「トランプは裸の王様だ」と断言しているのは、自分は極東の小島にいる安心感があるからで、いかにも「空気を読んでいる」と感じられなくもありません。「一番怖いのは相次ぐトランプ流に感覚が次第にまひし、国際社会が『多元的無知』に陥ってしまうことだ。『王様は裸だ』と叫ぶ少年がいない世界は危機である」と、まるで他人事のように高みからの見物を決め込んでいるようで、ぼくにはその「火事場見物的姿勢」が気に入らないですね。じゃあ、「日本はどうなんだ」と、返したくなるね。貴新聞は「王様は裸だ」と叫ぶ少年ではないんですか、なるつもりはないということでしょうか。

「自分は裸の王様だ」という事実に、誰よりも気づいているのはトランプ自身ですよ。にもかかわらず、「なんと美しい服でしょう、王様」とそれこそ嘘八百を並べ立てている取り巻きが、トランプの「自分は裸なんだ?」という疑心暗鬼を晴らすが如くに「おべっか(おべんちゃら)(flattery)」を言いまくる。つまりは「忖度(そんたく)」するんですね。それで当人は舞い上がってしまうのですが。この小島の元首相もそうでした。舞い上がりすぎてとんでもないことになりました。忖度する側の典型はアメリカのマスメディアです。あらゆる既存の社会的な有力者がトランプへと靡きに靡いているのに歩調を合わせ、メディアそのものが、すべてではもちろんないが、それに便乗し、尻馬に乗ろうとしている、その状況は「狂気の沙汰(madness)」というほかありません。
繰り返していっているのですが、そんな「裸の王様」に、まるで猫なで声で「立派なご洋服ですね」と揉み手をして擦り寄ったのは誰だったか。この小島の、見たくもない「裸の王様」ではなかったか。大小(米日)二人の「王様」は、自分たちは裸だと気が付いている。しかし取り巻きはその偽りの「無知蒙昧」から目が覚めることを阻害しているのです。
誰もかれもが、「王様は裸」だと知っている。もっと下品に言えば、「彼はパンツすら履いていない」というべきだ。多くの民衆は、醜悪な裸を見せつけられて、気分がすぐれない(反吐を吐きそう)にもかかわらず、本当のことを言えば、この「町内(社会)」に住めなくなるとでも妄想しているのでしょうか。彼の最初の大統領就任時から「彼は裸である」、「真っ裸である」と、ぼくは断じてきた。単なる「裸の王様」ではなく、女性蔑視(misogyny)を隠さないで「強姦」や「暴力」を犯し、「性犯罪」を金で片づけることを繰り返している、そんな野獣のような「裸の王様」であり、「脱税等の犯罪」を繰り返している知能的な「裸の王様」でもあるといってきました。彼自身が自己嫌悪に陥るとは思われませんが、自分が上等の人間ではない、下品な男性であることを知っているのに、周りが持ち上げ、胡麻をすり、「裸ではありません」「殿、さすがです」と彼自身の意識を朦朧とさせ麻痺させているのです。要するに、彼の支持者自身もまた、まぎれもなく「裸の家臣」なんですよ。

「にじむ万能感が気になる」とコラム氏は書くが、すでに米大統領は狂気の域に入っている、正気を失しているとぼくは言いたいほど、良識も正常な判断力も持ち合わせていない、それこそ「剥き出しの情念」が全裸で世間を彷徨・闊歩しているのです。取り巻きも支持者も、自分のためにもはっきりと「ノー」を突き付けるべきだ、そうでなければ、世界は彼の狂気にふりまわされ、危殆に瀕することになるのは請け合いです。さて、この先、いかなる振る舞いが始まるか。アメリカの社会には無数の「裸の王様」がいる。大統領の椅子を目指している「真っ裸」の有象無象が満を持しているのです。醜悪の極み、それがアメリカの政治社会だろう。(でも、この国だって事情は同じです)
「多元的無知」とは「集団催眠(mass hypnosis)」に罹患しているということでしょう。どこからか一陣の風が吹き込んでくれば、全員ではないけれど、少しは覚醒するものも出て来るに違いありません。「大統領は偽情報に踊らされている」とウクライナ大統領は真実を言った。ロシアの宣伝に踊らされている、と。本当のこと(「あなたは裸である」)を指摘されて、著しく恥辱を舐めさせられたから「ウ大統領は独裁者」だと、本能的に叫んだのです。図星を指されると、人間は狼狽する。何でこんな出鱈目な「和平」実現を主張するのだと問われて、「ノーベル平和賞が是が非でも欲しいからだ」と当たり前の感覚をもつ人間ならいうことはできないけれど、この飛び切りの「裸の王様」は、恥も外聞も一切持たない、文字通りの「裸一貫」ですから、世評などものともしないでしょう。世界の良識ある首脳(そんな御仁がいればの話ですが)が「羽交い絞め」にしてでも、彼の狂気を沈め、催眠状態からの覚醒を促す時期に来ているんじゃないですか。
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「だれも自分が見えないと言うことを気づかれないようにしていました。自分は今の仕事にふさわしくないだとか、バカだとかいうことを知られたくなかったのです。ですから、今までこれほどひょうばんのいい服はありませんでした。
「でも、王さま、はだかだよ。」/とつぜん、小さな子どもが王さまに向かって言いました。/「王さま、はだかだよ。」/「……なんてこった! ちょっと聞いておくれ、むじゃきな子どもの言うことなんだ。」
横にいたそのこの父親が、子どもの言うことを聞いてさけびました。そして人づたいに子どもの言った言葉がどんどん、ひそひそとつたわっていきました。/「王さまははだかだぞ!」/ついに一人残らず、こうさけぶようになってしまいました。王さまは大弱りでした。王さまだってみんなの言うことが正しいと思ったからです。でも、「いまさら行進パレードをやめるわけにはいかない。」と思ったので、そのまま、今まで以上にもったいぶって歩きました。めしつかいはしかたなく、ありもしないすそを持ちつづけて王さまのあとを歩いていきましたとさ。(THE EMPEROR’S NEW SUIT(Hans Christian Andersen)(後掲参照)
【余録】童話作家、アンデルセンの名作「裸の王様」は、周囲に批判者がいない中で非常識な行動をしてしまう権力者が主人公だ。一方で、陰の主役もいる。本当は衣服が見えないのに王様をほめそやした家来や国民である▲社会心理学などの分野に「多元的無知」という言葉がある。集団の多くの人が規範を受け入れていないにもかかわらず「多数派は受け入れている」と思い込み信じたり、言い出せなくなったりする状態だ。裸の王様はその例として、よく引き合いに出される▲就任1カ月、自らを「王様」と呼び始めた米国のトランプ大統領である。ニューヨーク市で導入された「渋滞税」承認の取り消しを発表し、自身のSNSに「渋滞税は死んだ。王様万歳」と書き込んだ。ホワイトハウスのX(ツイッター)にも転載された。にじむ万能感が気になる▲この1カ月、ガザ地区の米国所有構想、関税外交などの言動が波紋を広げ続けたトランプ氏だ。ロシアと米のウクライナ和平協議を巡り、ゼレンスキー大統領を「選挙で選ばれていない独裁者」と批判したのには心底、驚いた▲ロシア寄りスタンスが指摘され、ウクライナの頭越し決着に動くことが懸念されるトランプ氏だ。反発は計算ずくの恫喝(どうかつ)かもしれないが、他国指導者の正統性を根拠もなく否定する言動は一線を越えている▲一番怖いのは相次ぐトランプ流に感覚が次第にまひし、国際社会が「多元的無知」に陥ってしまうことだ。「王様は裸だ」と叫ぶ少年がいない世界は危機である。(毎日新聞・2025/02/22)
(へッダ―写真・「今日発売の小学館『めばえ』5月号の「おはなし読み聞かせ」ページ、アンデルセン童話の『はだかの王様』の絵を描かせていただきました!」:by ehon_yuriko_igawa |2019-04-01)(https://ehonigawa.exblog.jp/30205810/

空気は読むものではなく、吸うものだ。いつでも新鮮な空気を脳細胞に補給してやらないと、「多元的無知」「集団催眠」「付和雷同」に罹ってしまうでしょう。ある種の「洗脳(brainwashing)」です。「洗脳」されているもののもっとも困ったところは「自分は由緒正しい原理や哲学に従っている」という、自らの思考停止に気づかないところです。いくら言っても、かえって「自らの由緒正しさ(実際は「荒唐無稽」「反社会的暴力」なんだが)」を信じ込む、妄信する方向に行くのです。質(たち)はいたって悪い。「憑き物」に取りつかれているんですね。「狐憑き」大流行の時代がありました。今だってあるんですね。「おかしい」と思うことは世の中には溢れている。多くの人はそれに気が付いています。
でも「おかしいことはおかしい」と指摘するのは、なかなかできない、つまり「場の空気」「集団に吹く風」「得たいの知れない雰囲気」を読んでしまう、飲まれてしまう、そう解釈されます。でも、それ違いますね。自分の利害に関係ないなら無関心を装っておけ、そんな無責任な態度に馴れ切っているんです。少しでも新鮮な空気を吸収して肺臓に取り入れ、それを脳内細胞に送り込むことによって、脳は活性化されるんじゃないですか。「読むんじゃなく、吸うんです、空気は」ね。ここらで「深呼吸」の必要がありますね、長田先輩。
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THE EMPEROR’S NEW SUIT(Hans Christian Andersen) むかしむかし、とある国のある城に王さまが住んでいました。王さまはぴっかぴかの新しい服が大好きで、服を買うことばかりにお金を使っていました。王さまののぞむことといったら、いつもきれいな服を着て、みんなにいいなぁと言われることでした。戦いなんてきらいだし、おしばいだって面白くありません。だって、服を着られればそれでいいんですから。新しい服だったらなおさらです。一時間ごとに服を着がえて、みんなに見せびらかすのでした。ふつう、めしつかいに王さまはどこにいるのですか、と聞くと、「王さまは会議室にいらっしゃいます。」と言うものですが、ここの王さまはちがいます。「王さまは衣装部屋にいらっしゃいます。」と言うのです。
城のまわりには町が広がっていました。とても大きな町で、いつも活気に満ちていました。世界中のあちこちから知らない人が毎日、おおぜいやって来ます。(中略) / 王さまはきらびやかなてんがいの下、どうどうと行進していました。人々は通りやまどから王さまを見ていて、みんなこんなふうにさけんでいました。「ひゃぁ、新しい王さまの服はなんてめずらしいんでしょう! それにあの長いすそと言ったら! 本当によくおにあいだこと!」/だれも自分が見えないと言うことを気づかれないようにしていました。自分は今の仕事にふさわしくないだとか、バカだとかいうことを知られたくなかったのです。ですから、今までこれほどひょうばんのいい服はありませんでした。

「でも、王さま、はだかだよ。」/とつぜん、小さな子どもが王さまに向かって言いました。/「王さま、はだかだよ。」/「……なんてこった! ちょっと聞いておくれ、むじゃきな子どもの言うことなんだ。」/横にいたそのこの父親が、子どもの言うことを聞いてさけびました。そして人づたいに子どもの言った言葉がどんどん、ひそひそとつたわっていきました。/「王さまははだかだぞ!」/ついに一人残らず、こうさけぶようになってしまいました。王さまは大弱りでした。王さまだってみんなの言うことが正しいと思ったからです。でも、「いまさら行進パレードをやめるわけにはいかない。」と思ったので、そのまま、今まで以上にもったいぶって歩きました。めしつかいはしかたなく、ありもしないすそを持ちつづけて王さまのあとを歩いていきましたとさ。(「はだかの王様」・大久保ゆう訳:青空文庫)(https://www.aozora.gr.jp/cards/000019/files/46319_23030.html)
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