【春秋】国の形 政治の潮目を語るとき、思い出す言葉がある。19世紀ドイツの評論家ベルネの「政府は帆であり、国民は風、国家は船、時代は海である」▼第2次大戦後のドイツは、ナチスを生んだ過去への反省を大きく書いた帆を揚げ、国民が風を送って荒海を航海した。80年後、愛国的歴史観を叫ぶ極右政党が下院第2党に躍進し針路が揺らぐ▼同じ敗戦国の日本はどうか。新調した帆に平和国家建設や核廃絶の願いを大書し、国民が風を送って、国際社会の視線に堪える航海を可能にした、が…▼帆の書き換えが始まったのか。官邸幹部が記者団に「核を持つべきだ」と私見を漏らした。水面下で非核三原則の一部見直しが検討され始めた中でのこと。核なき世界を訴え続けてノーベル平和賞を得た被団協を持つ国の政府なのに▼戦争で原子爆弾を投下された唯一の国が、核兵器との間合いを縮める図は、「第2の敗戦」ともいわれた福島原子力発電所事故を経験した国が、一時掲げた脱・原発依存の旗をあっさり降ろし原発回帰に一直線、の現況と重なる。そういう国なのかと世界から思われかねない▼国の形を考えたくなる。時代の海は今は安全保障面での構えを政権に促し、特定の風が構えの強度を求める。この種の風は吹きがいのある帆を次々に催促する。ナショナリズムをあおる風に国の形を合わせていたら、21世紀が日本に求める国家像に堪える航海は難しい。(西日本新聞・2025/12/22)

「時代の海は今は安全保障面での構えを政権に促し、特定の風が構えの強度を求める。この種の風は吹きがいのある帆を次々に催促する。ナショナリズムをあおる風に国の形を合わせていたら、21世紀が日本に求める国家像に堪える航海は難しい」(上記「春秋」)この時期に、かかる政治批判をしなければならなくなった理由は単純かつ明白です。「人間は忘れる動物である」ということであり、社会の現状は「戦争を知らない人間たち」が否応なしに要路・要職を占める時代に遭遇しているのですから、「金輪際、戦争は御免蒙る」と考えない圧倒的多数の人々が、どこから見ても「思想」「哲学」などともいえない一種の「流行り」「ファッション」下にあるように、とっかえひっかえしてきて、今に至ったということでしょう。「弱い者いじめをする」「差別、上等じゃないか」という程度の「浮かれ主義(frivolity)」「移り気(caprice)」に身を任せるというのでしょう。これもまた一種の「風」ですね。

ニーチェという狂気の哲学者は「人間は約束する動物である」と、確か「道徳の系譜学」に書いていたと記憶します。「安らかに眠ってください 過ちは 繰り返しませんから」と、世界に向かってこの国(国民)は約束したことになっているにもかかわらず、「自分が生まれていなかった時の戦争の責任なんかあるはずもない」と言い切って恬として恥じない人間が一国の総理大臣になれる(押し上げられる)時代に、目下ぼくたちは生きています。幼稚な物言いを笑うなかれ、「自分の生まれていない時代の責任など、取れるものか」と言えば言うほど、「その通り」と拍手喝采が生じる現下、戦後八十年の怪異現象です。この「奈良の女」はいったい「誰」と「何」を約束するのでしょうか。昭和百年とされる本年、つまりは歴史の百年とは、嫌なことは忘れるには十分に長い時間であるということであろうし、新たな約束をするには格好の地盤が出来上がっているということでもあるでしょう。「やられたら、やり返せ」という報復主義は、無謀かつ無意味ですが、それを思慮する脳味噌が欠けているのですから、事態は極めて深刻です。

世界を席捲し、傍若無人に振る舞っている一頭の怪物、それは「排外主義」「人種差別」「自民族中心」などという看板を掲げて、向かうところ敵なしの勢いで暴力を振りかざしている「自虐主義者(masochism)」のようにも思われます。「極右(extreme right)」でなければ「まとも(正統・orthodox)」ではないという風潮があるのでしょうか。「異民族排撃」をしないのは愛国者(patriot)ではないとでもいうのでしょうか。この国の現状を嘆く前に、欧州の政治状況、アメリカの政治風潮を見れば、「人間は一人でも十分愚かになりうる」が、「多数になればどうしようもなく愚かな上に、暴力的になる」という、情けない人間の在りようを示して余すところがありません。そこには「歴史意識(記憶)」が介在する余地がないようにも見えます。
ぼくに奇異な感じが消えないのは、この国の「右派」は親米反共が「信条(相場)」であるとされることです。一国の独立を放棄してまで親米に傾く理由は何処にあるのでしょうか。アメリカは対中友好親善を更に進めようという方向を求めているとき、親米一辺倒であるこの国の「右派」はどうするつもりでしょうか。アメリカと踵を接して「対中親善」を選ぶとはとても思えない雰囲気にあると思われます。とするなら、はたして「親米反中」という「行動選択」が取れるのかどうか。内弁慶も甚だしい現下の政治状況にあって、世界に向けて何事を発信するというのでしょうか。「大いにお笑いください 過去を 取り戻したいのです」と宣言でもしているつもりなのでしょうか。

恐らく、どこよりも早く百年前の圧制の時代「治安維持法下の体制」にひたすら戻ることを、愚かにも考えているのではないでしょうか。為政者たちは。過去の「遺光」によって現在を照らすというのは「イデオロギー」の真骨頂です。国の求める価値観は「過去」こそあるのだというのでしょう。これが「イデオローグ」の生命線です。その昔、カール・マンハイムという人の「イデオロギーとユートピア」を必死で読んでいた時期を思い起こしています。未来から現在を照らすことにこそ、ぼくは「人間の約束する動物」の所以があると思えばこそ、現下の「先祖返り」の政治的雰囲気には反吐を吐き続けている。
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◎ ベルネ(べるね)(Ludwig Börne)(1786―1837)= ドイツのジャーナリスト。フランクフルトのユダヤ人ゲットーに生まれる。1818年、文芸雑誌『ワーゲ』を創刊して文筆生活に入る。パリ移住後のベルネの政治評論を代表する『パリ便り』(1832~1834)は、機知に富む鋭利な文体を駆使して、ドイツの時代錯誤の現状を容赦なく暴き出した。ハイネと並ぶ「青年ドイツ派」のリーダー格とみなされたが、「政治革命か社会革命か?」をめぐって両者は鋭く対立し、ついには誹謗(ひぼう)と私怨(しえん)の大激突のうちに決別する。ベルネのわずか50年の生涯は、自己の共和主義的信念をかたくなに守り通した清楚(せいそ)な革命家の一生であった。ドイツ・ジャコバン派の政治的ジャーナリズムは、彼によって引き継がれたといっても過言ではない。(日本大百科全書ニッポニカ)
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「徒然に日乗」(948~954)

◎2025/12/21(日)終日雨が降り続く。気温は低くはなった。▶自宅に籠りきり。▶何かとパソコンをいじりながら、この社会の政治・経済・防衛などについて思いを巡らした。いくつかの新聞論評を見ると、この国の経済はKO寸前だという見方が外国では主流。「日本売り」が始まっていると思う。日銀が政策金利を苦労して0.25%挙げた途端に、円安は158円直前まで進むし、国債の長期金利(10年債)は2%を超えた。株価も5万円を割り込む。物価高騰は留まる気配がない。という状況で、この国は亡国の道をまっしぐらと負う気分だし、あらゆる指標はそのことを示している。笑うべきは内閣支持率の高止まり傾向だろうか。「毎日新聞は20、21の両日、全国世論調査を実施した。高市早苗内閣の支持率は67%で、前回調査(11月22、23日)の65%からほぼ横ばいだった。不支持率も22%(前回23%)で大きく変動しなかった。内閣が発足した10月以降3カ月連続で支持率が65%以上となり、67%はその中で最も高い。所得税がかかり始める『年収の壁』の引き上げなどの経済対策が評価されている」(毎日新聞・2025/12/21)この「年収の壁」引き上げで必要となる財源は6500億円を超える。そのための増税が待ったなしだという状況を有権者はまったく見ようとはしていないのだ。「年収の壁」で失われる所得税の穴は防衛増税という名目で穴埋めされるということを忘れないでくれ。お年玉に100円貰い、その穴埋めのために、その後の食餌を減らされるようなもの。もう少し有権者は賢くなっても罰は当たらないのだが。(支持率に関して、あるいは「大掛かりな操作」が仕組まれているのではないかという疑念が拭えないな。ほとんどが内閣や首相個人を支持するような誘導尋問で、問いかけがはなはだ作為的。いずれ化けの皮は剥がれる)(954)
◎2025/12/20(土)午前中から雨が降る。その後は降ったり止んだりだったが、気温は上がらず、寒さを感じる一日だった。▶お昼過ぎに茂原まで買い物。いつもながらの高い買い物になった。▶日銀の政策金利上げ(0.75%)に反応して直ちに対ドル為替が2円以上も円安に振れ、157円後半まで下げる。「【NQNニューヨーク=戸部実華】19日のニューヨーク外国為替市場で円相場は大幅に反落し、前日比2円20銭円安・ドル高の1ドル=157円70〜80銭で取引を終えた。一時は157円78銭と約1カ月ぶりの円安・ドル高水準を付けた。日銀が利上げペースについて慎重な姿勢を示したと受け止められ、円売り・ドル買いが勢いづいた」「円は対ユーロでも大幅に反落し、前日比2円30銭の円安・ユーロ高の1ユーロ=184円65〜75銭で取引を終えた。円は対ユーロでも売りが勢いづき、一時は184円72銭と1999年の単一通貨ユーロ導入以降の最安値を付けた」(日経新聞・2025.12.20)それにしても、日経新聞は現内閣の経済・財政政策運営にほとんどフリーパスを与えているのはどうしてだろうか。裏があるのかもしれないと勘繰ってしまう。▶(953)

◎2025/12/19(金)陽射しのない、かなり寒い一日だった。夕方、少し買い物が必要になったので。近所の薬屋まで。▶日銀が政策金利を0.75に挙げた。30年ぶりの水準だと大きく報じられる。バブル崩壊時の水準。まさに「失われた30年」が実感される。「日銀は19日、金融政策決定会合を開き、政策金利である短期金利の誘導目標を現行の0.5%程度から0.75%程度に引き上げることを決めた。植田和男総裁は会合後の記者会見で、利上げ後も『(物価変動の影響を除いた)実質金利は極めて低い』と述べ、今後も政策金利を引き上げ、金融正常化を続ける考えを表明。利上げペースについては『経済、金融環境、物価の反応をよく見て判断したい』と説明した。利上げは今年1月以来7会合ぶりで、政策金利は1995年9月以来約30年ぶりの水準となる。植田氏は、今回の利上げ後も緩和的な金融環境が続くとして、「経済をしっかりサポートしていく」と語った」(時事通信・2025/12/19)その影響で株価が高騰し、為替相場では2円の対ドル円安が発生。高物価はこの後も続くだろうと予想されるので、生活実感は苦しいまま。(952)
◎2025/12/18(木)午前中に買い物で茂原まで。その途中のGSに立ち寄って灯油を購入(18㍑×3)、洗車機に車を入れる。いくつかの猫たちが、時には車の屋根に乗るのだ。天候に関係なしだから、雨天などの時には猫の足跡が半端ではなく、洗車した途端に即座に汚すのだから、溜まらない。拙宅の前の「会社」の車(複数台)にも、以前は頻繁に飛び乗っていた。今では従前ほどではなくなったようだが、やはり足跡を点けている。折を見て、それなりに。お詫びの印に「洗車券」を渡しているが、それだけで済まないだろう。いつも通りに食材を買って、帰宅。▶午後はしばらくパソコンいじり。もう十年近くも使っているからパソコンの容量(ストレージ)に余裕がまったくなくなっている。あるアプリをインストールして、不要なものは削除する作業を毎日数回は続けている。それにしても「更新プログラム」と称して、どれだけのものがインストールされていることか。おおよその見当をつけて、さしあたりぼくには不要だと思われるアプリはどんどん捨てているのだが、時には大いなるミスが生じて、毎日使っている「ワード文書」(office)を削除してしまっていることに気が付いた。再度使おうとしたら、無料版もあるけれども有料版の押し売りのような状態になっている。何十年もワード文書を使ってきたから慣れてもいるが、今回は試しに「note」なるアプリを使ってみている。これも慣れるまでは面倒なことだが、仕方がない。(951)

◎2025/12/17(水)月に一度の「ペットボトル・缶」回収日なので、回収場所に持参する。昨日の裡に準備しておいたので、用意されている回収袋に入れるだけ。早朝、それなりに寒いがサボるわけにもいかない。前々月だったか、日にちを間違えて、回収日に出せなかったので、先月は缶を2回分まとめて出したら、何時もの回収袋一つでは足りず、もう一つの袋まで使った。平均して猫缶の個数は大きく変動していないようだ。数えるの癪だから、いったいどれくらいあるのかわからないが、少なくとも250缶ほどはあるだろうか。▶本日で臨時国会が閉幕。新首相の登場だったが、いったい、何をどうしたというのだろうか。ひたすら「右旋回」を続けるばかりで、この先の展望が果たして開けてくるのだろうか。それにしても、経済運営、外交交渉、加えて、人心掌握と、どれをとってもどうしようもないほどの「無知・無能」だが、これを持ち上げるメディアは焼きが回っているだろう。(950)
◎2025/12/16(火)お昼過ぎに買い物に茂原まで。混乱は前回ほどではなかったが、それでも店内のイベント広場では催事が行われるようで、たくさんの観客が開始を待っていた。当方は必要なものだけを買って、早々に引き上げた。たいして買わなかったが、会計は8千円弱だった。怖くなるほどの物価高騰状態の持続だ。インフレを放置したままで、GDBは膨らむし、国の借金は相対的に目減りする。しかし国債の高金利と円安基調の局面はまったく変わらないまま。ますますインフレが拡大し、いずれハイパーインフレとなるのだろうか。何人も有効な物価対策を打てない現実の政治だ。「ハイパー=インフレーション(hyper-inflation)= 超インフレーション。ギャロッピング・インフレーション galloping inflationともいう。物価が非常な速度で騰貴し,貨幣価値が急激に下落する急激なインフレーション。多くの場合は戦争あるいは政治的内乱時における不換紙幣の乱発,赤字公債による巨額な財政赤字などが原因である」(ブリタニカ国際だ百科事典)(949)

◎2025/12/15(月)終日自宅に。当節らしい寒い日だった。▶このところ、すっかり体力に自信がなくなっている。もともと、頑健な体質であるはずもなかったが、それなりに外作業をして、体力を落とさないように努めていたこともあり、極端に体調不良に襲われることはなかったが、今回ばかりは、自分でもやや心細くなったほど。これぞ「老齢」ということなのかもしれないと思った。▶やはり、今夏の暑さの異常さが次第に体力を奪っていたことも災いしたということもあろう。それは毎年のように定番になっている庭仕事や植木の伐採が思うに任せなかったのだから、自分なりに「体力」の衰えを感じ取ってはいた。このうえは一層健康に注意深くなければなるまい。▶何日目になるか。二歳を過ぎた♂の猫がまだ家を出たきり帰ってこない。もう一週間近くになるだろうか。寒さも加わり、どうしているのか心配ばかりしている。拙宅の周りを探すにも、余りにも広大で茫漠としていて、探す手がかりがないのだから、運を天に任せるより仕方がないのだろうか。(948)
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