
▣ 週のはじめに愚考する (第弐拾八)~ ただいまは午前五時。室温は29℃。昨夜から今朝方にかけて、当地は強烈な雷雨に見舞われました。あるいは停電するかもと、早めにパソコンの電源を切っておいたが、過ぎてみればこともなく、でした。何とか停電ばかりは免れていました。それにしても強烈な雷鳴が一処にとどまって、ここを先途と轟きわたった。猫たちは、おそらく初めての経験だったろう、右往左往の怖がりようだった。外に逃げ出そうにも豪雨が降りしきっているので、どうにもらない。これほどのすごみのある雷鳴は、ぼくもかみさんも初めてだったかも知れない。梅雨明けの「洗礼」というのも癪な天候で、それこそ世にままならぬものの最たるものと、「地震雷火事親父」に入るのはうなづけますね。末端に坐す「親父」は遠くに霞んでしまっているけれど。
梅雨が明ければ本格的な夏の到来と、順番はそうですが、とっくに夏は始まっている。猛暑が六月からで、その上に多湿のおまけまで付いて、老人の体力消耗は著しい。三日前の「いばらき春秋」に「カナカナ」が出ていました。記者氏が聴いたのは十五日(海の日)とか。ぼくもほぼ同時に、隣県の人間として「蜩(ひぐらし)」の哀調を耳にしました。それも早朝、家の隣の林からの「一声」でした。えっ、いまは七月半ば過ぎだよと、一瞬は驚いた。ぼくの経験・知識では夏の終わり、そう八月の中から末に聞くものと合点していたからでした。蜩(ひぐらし)は、季語としては「秋(旧暦)」だ。今はもう秋、誰もいない海 ♪、その「秋」。海の中も山の中も、すべての季節の巡りが狂っているのでしょう。四季ではなく、二季、それも夏と冬だけの寒暖差著しい季節に支配されたのが、この極東の小島です。

ところが、「蜩」は六月ころから鳴いているそうで、ただ、ぼくたちは耳にその声を聞き止めていないだけのことのようです。都合よく利用しているのは人間の方で、蜩は「秋」だというのはその典型。「六月のカナカナ」では俳句にはならぬとでもいいたげですね。俳句が先ではなく、季節に誘われているのが俳句だと、当たり前を忘れたくないね。
【いばらき春秋】海の日の3連休は梅雨空に戻り過ごしやすかった。夕方、草刈りを終え、ビールを片手にすがすがしい庭を眺めていると、「カナカナ」と哀愁を帯びたヒグラシの鳴き声が聞こえてきた▼漢字で「蜩(ひぐらし)」と書き、俳句では秋の季語である。小学生の頃、夏休みの終わりを告げるかのような物悲しい響きに、たまった宿題をどうしようかと憂鬱(ゆううつ)になった思い出がある。1年を72に区切った七十二候(しちじゅうにこう)だと、「寒蝉鳴(ひぐらしなく)」は8月12~17日ごろ▼日本人は古くから涼しげな虫の声を好んだ。NHK大河ドラマ「光る君へ」に登場する清少納言は、枕草子で「虫(で趣があるの)は、鈴虫、ひぐらし、蝶、松虫、こおろぎ、きりぎりす、われから、かげろう、蛍」(現代語訳)と書いた▼先週、大子町で38.1度、筑西市で38.2度を観測する厳しい暑さが続いた。猛暑の一服にヒグラシも秋と間違えて鳴いたのか▼散歩の途中、すっくと伸びたタチアオイが白紫色の花を咲かせ、隣で数輪のコスモスの花が風に揺れているのを見た。夏と秋が同居する不思議な光景である▼そういえば「ミーンミンミンミーン」とやかましい鳴き声をまだ聞いていなかった。「蝉(せみ)」は夏の季語。間もなく梅雨が明けて本当の盛夏が始まる。(山)(茨城新聞・2024/07/18)

● ヒグラシ(ひぐらし / 蜩)[学] Tanna japonensis = 昆虫綱半翅目(はんしもく)同翅亜目セミ科Cicadidaeの昆虫。体長は雄32~39ミリメートル、雌23~28ミリメートル。体は黒色で、茶色や緑色の斑紋(はんもん)がある。雄の腹部は大きく、空洞で、発達した共鳴室となる。雌の産卵管は腹端を越えない。はねは透明で、脈上に多くの暗色紋がある。雄の腹部第3、第4腹板上には各1対の小さないぼ状突起があり、これがヒグラシ属の大きな特徴である。北海道、本州、四国、九州、琉球諸島(りゅうきゅうしょとう)、朝鮮半島、中国大陸に分布する。7~9月に出現し、平地から山地にかけての薄暗い林中にすみ、明け方や夕方に独特なキキキ……という高い声で鳴く。聞きようによっては、カナカナ……とも表現され、カナカナの俗名もある。/ 琉球諸島にはヒグラシによく似たイシガキヒグラシT. j. ishigakianaのほか、近縁の属に大形のタイワンヒグラシPomponia linearisが知られる。(日本大百科全書ニッポンニカ)
「いばらき春秋」を読んでいて思いました。隣県とは距離にしてどれくらいか。大したものではないにもかかわらず、「散歩の途中、すっくと伸びたタチアオイが白紫色の花を咲かせ、隣で数輪のコスモスの花が風に揺れているのを見た。夏と秋が同居する不思議な光景である」とありました。わが拙庭の「立葵」はとっくに盛りを過ぎて、花は朽ち、幹はすっかり枯れている。「夕方、草刈りを終え、ビールを片手にすがすがしい庭を眺めていると、『カナカナ』と哀愁を帯びたヒグラシの鳴き声が聞こえてきた」と。でも、当地ではそうならない。草刈りを終えても『ビール片手』はないし、「すがすがしい庭」など見たくてもみられない、とまあ、よしなしごと(御託)をいくつ並べても仕方がありません。

「蜩」は「それだけで「セミ」とも読ませますから、たくさんの蝉類の代表だったかも知れないし、この蝉の異称の多さは群を抜いているのも不思議です。「蜩」「茅蜩」「秋蜩」「日暮」「晩蝉」などなど。呼び名の多彩さを愚考しようとしているのですが、いささか寝不足の気味もあって、面倒くさいのでここではしません。「強烈な雷鳴」に怖気付いた猫が家の中で泣き出しているし、外は大雨。その恐怖心を宥(なだ)めるのに、側につきっきりだったからです。おそらく二時間は続いたと思うほどに、間近で轟いた。幸いに落雷はなかったし、停電もなかったから、少々の寝不足は「お駄賃」みたいなものかも知れません。
それにしても、今は季節でいうと何時になるのでしょうか。冬や春でないことは確か。夏かと思えば夏、いや秋かと思えば秋かもなあと、至って頼りないのです。日本近海の魚の群れにも異変が生じているそうです。北海道や東北の漁港では、穫れるはずもない魚が大量に穫れ、お目当てのものはまったくの不漁だとか。これだけ海水温が高ければ、さもありなんと思う。魚の餌になるプランクトンからして、その異常高温に絶えきれないで死滅するのでしょうから、それを栄養源としていた魚群がいなくなるのは当然だし、仮にプランクトンがいたとしても量的に減少するのは不可避ですから、畢竟、魚の成長は止まるという始末になります。

海中も陸上も季節の巡りは異変続出です。熱波やハリケーンの来襲はところ選ばず、猛烈を極めています。世界各地では山火事が異常に発生。北極や南極の氷塊も溶解著しいものがある。かかる「災害」や「災厄」の直接間接の原因の多くは知られているにもかかわらず、あまりにも規模が大きくて、人智では施すすべもないと言ったところでしょうか。温暖化の防止策を取り入れたとして、この先、何百年を要するのか。その前に地球環境は大半の生物の存在を許さない事態を迎えているかも知れません。
フィリピン沖に「台風発生」かと天気予報。今年はたくさん劣島に来そうです。今から用心するに越したことはなさそうでうすな。

(七十二候のうちの)
31.小暑初候/温風至 7/7〜7/12頃
32.小暑次候/蓮始開 7/13〜7/17頃
33.小暑末候/鷹乃学習 7/18〜7/22頃
34.大暑初候/桐始結花 7/23〜7/27頃
35.大暑次候/土潤溽暑 7/28〜8/1頃
36.大暑末候/大雨時行 8/2〜8/7頃
「カナカナ」「蜩」の句をいくつか。膨大な数がありそうです。ぼくには読み(数え)きれません。この「対象」、誰もが詠みたくなる「魅力「魔力」があるということでしょうか。あるいは「散る桜」に重ねられているのかも知れません。以下、ランダムに出してみましたが、その詠みようはさまざまであり、尋常一様ではないところ、俳句の奥の深さでしょうか。(家の猫達は、連日のように蝉を加えては帰ってくる。よく見ると「カナカナ」も。「やがて死ぬけしきは見えず蝉の声」どころの話ではない。「地中何年、地上何日」、その数奇な生涯を生きる「セミ」を弄んでいるのです)

・蜩は寂しと幼な心にも(上野泰)
・人の世にかなかなの啼く淋しさよ(後藤比奈夫)
・かなかなや故郷は風の沙汰なりし(細谷てる子)
・朝蜩ふつとみな熄(や)む一つ鳴く(川崎展宏)
・ひぐらしが啼く奥能登のゆきどまり(山口誓子)
・一夜寝て暁ひぐらしを枕もと(橋本多佳子)
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