
ぼくは長年の「ながら族」で、本を読むときも原稿(駄文)を書く時も、きっと音楽を流している。「~しながら」聞く音楽。その昔はほとんどクラシックだったが、ここにきて、もっと気軽に聞けるポップス、あるいはジャズが多くなっています。もちろん、聞くともなく聞くのが心地いいからであって、声楽などは最もよくない。言葉を追いかけてしまうからです。いわば「BGM」に相応しい音楽ということを盛んに考えている。
今ではステレオ装置で音楽を聴くことはなくなった。もっぱらパソコン内蔵のプレーヤーと外付けスピーカをで聴いている。いまもこの駄文を書いている前方のスピーカーからクラシックでもよく演奏される「人気曲(ポピュラー)」、例えばパッヘルベルの「カノン」やヴィヴァルディの「四季」など、さまざまな演奏家のものをリストにしたプログラムから適当に流しています。五時間でも十時間でも流し続けられるので、とても便利に使っている。住んでいるのが「長柄町(ながらまち)」だから、文字通りに、身も心も「ながら族」というわけ。

ぼくの場合、何事かに集中するという時、一心不乱・無我夢中ということはまずありません。うんと若いころは、昼過ぎに読書を始めて、気が付いたら周囲が暗くなっていたということは何度もあった。若かったから集中力が続いたということもあろうし、読書に飢えていた時代でもあったからでした。拙い原稿も徹夜で書いたこともしばしば。無駄でしたね。それが、この年齢になると、寝食を忘れて夢中になるということは、まずないと断言できる。それだけの心身の持続力がないからです。当たり前と言えば当り前。だから神経や視力が疲れすぎないように、気分をそらすために「ながら族」になっているという面もありますでしょうね。

今流れているのは一昨年6月に亡くなった、アメリカの作曲家兼ピアニスト、ジョージ・ウィンストンの「ディセンバー」です(彼はギターもハーモニカもよくした)。レコードだったら、盤が擦り切れるほどというくらいに、繰り返し聴いたものでした。彼の「田舎性」というか「朴訥さ」がとても気に入っていた。彼のピアノは決して流麗とも颯爽とも違う。なんとも朴訥、無骨、それがぼくにはこの上なく心地がいいのです。まるで農夫の手指のようです。彼はモンタナ州で育った。
本日の駄文のテーマは決まっているのですが、なかなかそれに触れたくないので、もたもたしています。朴訥や素朴とはおよそ趣が異なる、上辺だけの、見せ掛けのパフォーマンスの悪質性・悪意性について、ということです。いやな時代だからこそ、単純で素朴な物事に身をあずけたい気もする。昨日の長崎新聞「水や空」の「お茶を濁す」について。 これを別の表現で言い当てるなら「巧言令色、鮮ナシ仁」(「論語―学而」にある)、「剛毅朴訥、仁に近し」(「論語‐子路」中の「子曰、剛毅朴訥近レ仁」 )でしょうか。同じ「人間の質」「品性」を裏と表からみとろうとしている。「仁」が人間性の核になることが最も望まれた時代もありました、遥かの遥かの昔でしたが。
(⁂ 「仁」というのは「思いやり。いつくしみ。なさけ。特に、儒教における最高徳目で、他人と親しみ、思いやりの心をもって共生 (きょうせい) を実現しようとする実践倫理」(デジタル大辞泉)
「茶を濁す」とは、茶の作法を知りもしないで、その礼法を「知ったふりして」、適当にごまかす風儀。それだけではないと思うのですが、要するに自他を誤魔化し、結果的には世間を欺くことになる。そこで愚考一番。世間を胡麻化そうという御仁や紳士淑女が叢生(そうせい)しているのは事実です。でも、その出現が一向に止まないのはどうしてか。おそらく世間の方が胡麻化されたがっているからではないかと、ぼくは愚かにも考える。騙そうとするものと騙されてやれという両者の「阿吽の呼吸」、それが今日の社会の危機の要因であることは間違いないところ。

「水や空」氏も触れていますが、米大統領は「まず平和賞が欲しい」と、前回の就任段階から懇望している。あの政敵の「オバマ」が貰って、どうして自分には来ないのかと、それこそ悔しがっているのです。平和賞受賞のきっかけはごろごろ転がっている。「ガザ」「ウクライナ」「移民」等々、どれ一つでもそれなりの進展があれば、「晴れて受賞」となるはずと、それを目当てに彼は動いているのですから、始末に悪いというばかりです。呉れてやりなさいな。
【水や空】お茶を濁す 谷川俊太郎さんに〈禁酒禁煙せぬことを誓う〉で始まる、ややひねくれた詩がある。〈人だかりあればのぞきこみ/美談は泣きながら疑うことを誓う〉(「年頭の誓い」)。▲ご当人は朗報、美談、良い話を届けたつもりだろう。トランプ米大統領が、米中ロ3カ国での核軍縮の協議に意欲を示したという▲ほかの2カ国がそんな話にたやすく乗るわけがない、と邪険にする米メディアもある。「夜も眠れないほどノーベル平和賞が欲しい」トランプ氏が受けを狙っただけだ、と▲疑うしかない美談、良い話ではある。眉唾と思いつつもしかし、大統領が「非核化が可能か確かめたい」と発言したのは銘記すべきだろう▲何かにつけて「前のめり」が際立つ人だが、こちらはどうか。核兵器禁止条約の締約国会議に日本は与党議員を派遣し、オブザーバー参加をまたも見送るという▲国民にはいくらか前進したように見せたい。ただし、条約参加に反対する米国の機嫌は損ねたくない。「お茶を濁す」の一語しか浮かんでこない▲谷川さんの詩の続きは〈誓いを破って悔いぬことを誓う〉と、さらにひねくれる。トランプ氏の胸の内と思えなくもないが、この国はと言えば「誓い」よりも米国の「顔色うかがい」を重んじる。十年一日(いちじつ)のごとく。いや、戦後八十年一日のごとく。(徹)(長崎新聞・2025/01/28)
閑話 「澆季溷濁(ぎょうきこんだく)」とか「濁流滾滾(だくりゅうこんこん)」などという死語を使いたくなるご時世が続いています。
「思いやりなどの人らしい感情が薄くなり、善悪や正邪の基準がおかしくなって、世の中が乱れること。『澆季』はこの世の終わりのような、道徳や人情が乱れた世の中のこと。『溷濁』は濁るや、汚れるということ」(四字熟語辞典オンライン)「「濁流滾滾(だくりゅうこんこん)」とは「勢いよく濁った水が流れる様子。『滾滾』は水がいつまでも激しく流れ続ける様子を言い表す言葉」(同上)

如何でしょう。現実の世の中は、東西南北、いずれの地においても「濁された」ままの水が滔々と、あるいは滾滾と流れるままに任せています。そこに「流れに掉さす」のが政治だといえば、悪い冗談、いや瓢箪から駒みたいな話です。「流れに棹をさして水の勢いに乗るように、物事が思いどおりに進行する。誤って、時流・大勢に逆らう意に用いることがある」(デジタル大辞泉)
「[補説]文化庁が発表した「国語に関する世論調査」で、「その発言は流れに棹さすものだ」を、「傾向に乗って、ある事柄の勢いを増すような行為をする」と「傾向に逆らって、ある事柄の勢いを失わせるような行為をする」の、どちらの意味だと思うかを尋ねたところ、次のような結果が出た。(左図表)(国立国語研究所)ここに「言語の誤用」に関する大問題があります。それに対して、学校教育はいかに貢献しているか(流れに掉さしているのかもしれない)。

閑話休題 核問題をなんとか現状から一歩でも、一寸でも動かせたら「ノーベル平和賞」なんでしょうか。「核兵器禁止条約の締約国会議」に、体裁だけを繕うために、オブザーバーを参加させんとする劣島政府。何を見て政治をしているのか。「核抑止力」などという寝言を、目を開けたまま言っていながら、恬として恥じないのはどんな蛙なのだろうか。まるで、パンツをはいたままで小便を垂れるという気色の悪さがあります。いずれにしても、核保有国の面々、それに付かず離れず身を寄せているタツノオトシゴ国の政治家たち、どれもこれもが「核を玩具(おもちゃ)」に、あるいは「核を弄んでいる」という謗(そし)りは受けるだろうけれど、これまた恥じるところがないのだ。
何が何でも欲しい人に差し上げるのも「世の平和」のためにはいいでしょう。授けたらどうでしょう。米大統領にノベール平和賞をぜひ。そうなれば、まさに「不世出(前代未聞)の大統領」でしょう。刑務所も平和所授賞も。その昔、この劣島国に「泣く子と地頭には勝てぬ」という世評がありました。「聞き分けのない子や横暴な地頭とは、道理で争っても勝ち目はない。道理の通じない相手には、黙って従うしかない」(デジタル大辞泉)。T 大統領、その「地頭並み」か、いやそれ以下の傍若無人ぶり。恥知らずとは、こういうのを言うのかもしれない。それを煽る取り巻きがいるから、この国も焼きは回っているだろう。その後には金正恩もプーチンもネタニヤフも、どうせなら、一括して授けたらどうか。「平和」なんて、彼らにすれば「容易いもの」なんですよ、きっと。
(参考文献 トランプ大統領をノーベル平和賞候補に推薦-ノルウェーの右派議員 トランプ米大統領がノーベル平和賞の候補になった。朝鮮半島の非核化に取り組む合意を北朝鮮から引き出した功績が理由。/ノルウェーの与党で右派の進歩党の議員2人が推薦した。国営のNRK放送が報じた。今年の受賞に向けた候補指名の期限は1月だったため、トランプ氏は来年の候補となる。今年の候補にも名を連ねているかどうかは不明。/ノーベル平和賞は政治家や学者、研究者らが受賞し得る。ノルウェーのノーべル賞委員会には例年、数百人が候補として推薦される。過去にはロシアのプーチン大統領やキューバのカストロ議長が候補に挙がったこともある。今年の候補者は過去最高の330人。(以下略)(Bloomberg・2018年6月14日)(https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-06-13/PA9MEBSYF01T01)
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