【斜面】すぐ購入の代償 2500時間だった電球の寿命を1000時間に縮める-。欧米の大手企業が1925年に結んだカルテルだ。寿命が短ければ買い替え需要が増える。この「計画的陳腐化」によって企業は大もうけする一方、大量の電球が廃棄された◆現代にふえんし問題を提起した英国のドキュメンタリー映画がある。「今すぐ購入 購買意欲はこうして操られる」。頻繁なモデルチェンジや部品交換できないなどの陳腐化戦略、クリックすれば商品が届くシステムが操る過剰消費の構造をえぐり出す◆アップル、アマゾン、アディダスなどの元役員の告白が生々しい。アマゾンのアパレル部門の注文画面を立ち上げたという元社員の女性は自戒を込めて振り返る。「消費者に必要性を考える時間を与えず、衝動的な購入を促す。大量の商品がどこに行くか考えたことはなかった」◆世界ではいま、1時間当たり靴が250万足、スマホが約7万台、衣服は毎分19万着も製造されるそうだ。不用品は途上国に押し寄せる。人口約3千万人のガーナには「寄付」された衣服が週に1500万着も届く。大半は廃棄され海岸にあふれている◆電子廃棄物の行方を調査している男性はタイにたどり着く。そこでは住民が手作業で分解し、大量の有害物質が漏れ出ていた。過剰消費の代償は「貧しい国の人々の健康で払われている」。ブラックフライデーからクリスマスへと商戦が続く折、クリックの前に想像してみたい現実である。(信濃毎日新聞・2025/12/18)

「過剰消費の代償は『貧しい国の人々の健康で払われている』」という指摘が、我が身に甚(いた)く応えるかのように、やり場のない怒りが自分の胸中にも生じるのを痛感しています。この過剰生産と過剰消費の悪循環の鎖にぼく自身も長年にわたり掴まえられて来たからです。「経済発展」とか「経済成長」などという、一種の「マヤカシの言霊」で、ぼくたちはすっかりその「虜(captive)」にされてしまったのでしょうか。その昔、世界は「東西問題(何よりも「米ソ」の対立)」で危機的状況を過ごしていましたが、「冷戦時代」の雪解け(thawing)で、その後は一挙に趣を変えて、それまではまるで隠されていたかのように等閑に付されていた「南北問題」が広く語られ始めました。以来、少なくとも70年近くになります。南北問題の核心は「経済拡張」、あるいは「経済格差」にありました。今も、その傾向は変わらないままでしょう。端的に言うなら、「南北間の極度の格差」問題です。
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◎南北問題【なんぼくもんだい】= 1960年以降顕著となった北半球の先進国と南半球の発展途上国との間の諸問題。拡大する経済格差の是正が中心課題だが,それを通じて新興独立国の結束が強まり,国際政治の面では両者の緊張が問題となっている。1964年国連貿易開発会議(UNCTAD)開催後,先進国による資本・技術援助や1次産品中心の貿易拡大策が進められている。1971年に発展途上の77か国グループが,より効果的な国際協力による南北経済格差の是正を要求(リマ宣言)。資源ナショナリズムの高揚を背景に,新国際経済秩序卯(NIEO)宣言が1974年の国連資源特別総会で採択されるなど,北側に対する南側の圧力は著しく強まった。しかし1980年代にかけて急増した累積債務は南側各国にとって重圧となり,また一方では,資源問題は南側諸国間の経済格差(南南問題)を進行させ,南北問題をより複雑化している。さらに1980年代末からは地球環境問題が南北問題の重要な一環をなすことが明らかにされ,〈持続可能な発展〉という方向が提示されている。(百科事典マイペディア)

◎ 南北問題(なんぼくもんだい)north-south problem= 地球の北半球温帯地域以北に集中している先進資本主義諸国と,以南に多く位置する発展途上国との間の著しい経済的格差から生じる経済的,政治的諸問題の総称。この言葉は 1959年末にニューヨークを訪問したイギリスのロイド銀行会長 O.フランクスの「いまや世界の中心問題はこれまでの東西問題から南北問題に移ったのであり,したがって資本主義諸国は南の世界,すなわち発展途上国の開発援助をその対外政策のかなめに据えるべきである」との提言に由来するといわれている。南北問題はその後,単なる発展途上国の経済的開発=工業化問題ではなく,発展途上国による国際経済秩序変革の要求と,それに対する先進資本主義諸国の対応という2側面を含むにいたった。それは経済的であると同時に政治的問題でもある。なお南北問題を討議する国際会議の場として,国連に直属する国連貿易開発会議がある。(ブリタニカ国際大百科事典)
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(「今すぐ購入: 購買意欲はこうして操られる」| 日本語の予告編 | Netflix)(https://www.youtube.com/watch?v=Yqh7gAQboBw)
(<Buy Now: The Shopping Conspiracy>の「コンスピラシィ(conspiracy)」のおおよその原意は「陰謀」「結託」「悪巧み」というところです。ネット通販企業のやっている経営の一番の根底には、考え方によれば、それこそ「陰謀」が働いているというほかなさそうな状況にあるとも思われます。これをいかにして「抑制」「節度」のあるものに換えることできるのでしょうか。おそらく、それは不可能で、いかなる配慮や良心が企業や消費者の側に働いても、現状の南側の国々を抑圧し、貧困状態のままに閉じ込めて置くという驚くべき惨状は変わりえないような気もするのです。

それにしても、いまやネットの世界では「Netflix」が我が物顔で「現場」を徘徊し、睥睨しています。昨年でしたが、このドキュメンタリーを見ようとしたところ、「今すぐ購入」と強いられて、何度も購入を辞(止)めてしまいました。その後は、いろいろな映像に当たり、各種の史料を漁りつつ、この「大量生産・大量消費・大量廃棄」問題をていねいに考えようとしたところでした。何を隠そう、ぼくもこの歳になるまで、「大量生産・大量消費・大量廃棄」の渦巻きに巻き込まれて、それを「よしとしていた」のですから、いまさら「大企業の陰謀」を知るまでもなく、その企みの隅々までを、これまでに嫌というほど知らされてきた。今だって、ぼく自身は頻繁にアマゾンを利用して通販の品物を受け取っていますから、少なからず、この問題にはわが心も疼いていたのです。
現下の別口の問題です。「2027年末までに、一般照明用の蛍光灯の製造・輸出入が終了します。水俣条約締約国会議の決定を受け、水銀使用製品である蛍光灯は2026年1月より順次、製造と輸出入が規制されます。そのため、今後は、計画的にLED照明への切り替えをお願いいたします。なお、規制開始後も、蛍光灯の継続使用、在庫の売買及びその使用は可能です」(経済産業省)という呼びかけがなされています。例によって、この問題の発生は早い段階から分かっていたことですのに、企業側の論理や収益(利益)に配慮して、今頃になって、とにかく「早く交換」しなければ、と急(せ)かすのです。もちろん「電球」だけを変えればいいというわけにもいかず、場合によってはかなりの工事を伴うことにもなりかねないし、何よりも「使用済み」製品の途轍もない大量廃棄の行方が気になるところです。

「過剰消費の代償は『貧しい国の人々の健康で払われている』ブラックフライデーからクリスマスへと商戦が続く折、クリックの前に想像してみたい現実である」とコラム氏は結ばれています。しかし、この「南北問題」はさらに長く深く続くに違いないと、暗澹たる思いに駆られる。「産業廃棄物(industrial waste)」という名の現代社会の「生活の質・水準」を如実に示す「象徴」を目の当たりにしながら、ぼくたちは生き続けなければならないのでしょう。昨日のニュースによると、「EU」は35年までに生産を禁止する予定だったガソリン車の扱いを取りやめたと伝えられていました。「(石油を)掘って掘って掘りまくれ」と言う米国大統領の命令一下、ガソリン車は地球環境をさらにひどく汚染し尽くすまで利用されるのでしょう。深刻に過ぎる問題を前にして、ぼくにはいかなる思案も手段もありません。
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