【有明抄】今年の漢字 若い頃に読んだ「銀牙―流れ星銀」という漫画は、主人公のマタギ犬が仲間の犬とともに巨大熊に立ち向かう物語。その熊は体長約10メートル。漫画でも恐ろしかった◆きのう発表された「今年の漢字」は「熊」だった。確かに「熊被害」が過去最悪のペースで起きた。人命を守るため、10月には仙台市で緊急銃猟が初めて実施された。一連のニュースで印象に残ったのは重さ300キロの箱わなをひっくり返す熊。漫画の中だけと思っていた巨大熊が実在したのである。この数カ月は民家の柿の木に堂々と居座る熊など驚くニュースばかり。12月に入ってからも熊の目撃情報が相次いだ◆今回で30年となる「今年の漢字」で熊が選ばれたのは初めて。「熊猫」と書くパンダが中国に返還され、来年2月には日本からパンダがいなくなることも理由の一つだろう◆世界に生息する熊は8種類。日本にはヒグマとツキノワグマが人間より早く生息していた。熊の領域に踏み入り、生活圏を拡大してきたのは人間の方。人間の都合で乱獲を続けた結果、絶滅した動物は多い。ホッキョクグマも絶滅危惧種に指定されている◆人口減などで山の手入れがおろそかになり、今は熊の方が生活圏を拡大しようとしているのかもしれない。それぞれの命に意味がある。熊が冬眠する間に共存の道を改めて考えたい。(義)(佐賀新聞・2025/12/13)

「日本に生息する2種のクマ、ツキノワグマとヒグマについて 日本国内には、北海道に生息するヒグマ(亜種としてのエゾヒグマ)と、本州以南に生息するツキノワグマ(亜種としてのニホンツキノワグマ)の2種類のクマがいます。/環境省が2000~2003年度に行なった調査によると、北海道の約55%の地域にヒグマが、本州の約45%の地域にはツキノワグマが生息しています。つまり日本の国土の半分の面積には、クマが生息していることになります」(WWF・2012/01/17)(https://www.wwf.or.jp/activities/basicinfo/2407.html)
昨日は「新語・流行語大賞」という催事について、埒もないことを喋りました。一年間で、いろいろな意味で注目を浴びた、あるいは話題になった「言葉」「表現」という点では、「今年の漢字一字」選び(日本漢字能力検定協会のキャンペーン)も、同じような行事と言うことで、ぼくにはどうでもいいことではあります。ただ、選ばれた「ことば(漢字)」によっては見逃せない問題であったり、傍観していてはいけない事態であったりするという意味で、「熊」と言う漢字が選ばれたことは、この社会の動物との「共生(共棲)」というか、動物愛護という観点では、深く考えなければならない課題を含んでいるとぼくには思われました。

(この「日本漢字能力検定協会(公益財団法人)」という組織は「鵺(ぬえ)」みたいな組織でしたね。「漢検協会背任事件 2009年1月、日本漢字能力検定協会が公益法人には認められていない多額の利益を上げていたことが発覚。大久保昇(おおくぼ・のぼる)元理事長らが役員を務める親族企業との不透明な取引も判明、文部科学省が立ち入り検査した。元理事長父子は09年6月、親族企業2社との架空取引で協会に損害を与えたとして背任罪で起訴され、14年に懲役2年6月の実刑判決が確定している」(共同通信ニュース用語解説)これほどの問題が発覚しましたが、更に健在で、いわゆる「漢検」人気に支えられて、大いに事業規模を拡大してきた法人でした。またこの漢検協会がなぜ「清水寺」と組むのか、裏にはいろいろあるようですが、今は触れません。
さて、今年の漢字の「熊」です。人間の生活圏に熊が下りてきたと言われているのですが、果たしてどうでしょうか。「アーバンベア」などと気楽な命名をしているのも、ぼくには大いに気に食わないことです。不満ですね。現象の背後には必ず原因や理由があるはず。そして、もちろん「熊の出没」は今に始まったことでもなさそうですのに、人間が被害を受けたからと、「猟銃」を持ち出すのも「大人気(おとなげ)ない」というか「人間気ない」のではないかと思う。人間の生活圏に現れたら、即殺害という心ない業の一方で、犬・猫の「殺害」には動物虐待として、あるいは動物愛護に照らして、当該者は「処分」される。矛盾していると言えば言えます。もちろん、現在のような危機的状況に際しては「緊急避難」として「殺害止む無し」と言う一面は否定しません。しかし、それを、根本の方策を取りえないままで、続けると、最後は絶滅にまで至るということになるでしょう。

当方の居住地では猪が多く見られます。自宅の敷地内を荒らしたりします。これまでも繰り返しそういう事態に遭遇しましたが、どこにも連絡しないことにしています。近所や街中に猪が見られたといって、テレビや新聞が報道します。ぼくに言わせれば、そんなことは当たり前で、イノシシは先住動物で、人間がその生活圏を奪ってきたということになるけれども、それにはいささかの顧慮も払われません。なぜ、熊が都市部や人間の生活圏に多く出回るようになったか、いろいろな人の意見を聞くが、どうも説明が一貫していないように思われる。「熊は冬眠動物」と言うのも、はたしてそうだろうかという疑問さえ湧いてきます。食料があるうちは「冬眠する」必要はないのでしょうから、熊に特有であろう「冬眠の機能」も考え直さねばならないのかもしれません。
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◎ 冬眠(とうみん)= 動物が活動をほとんど停止したまま冬を越すこと。夏眠に対する語。多くの陸生変温動物と一部の恒温動物でみられる。カエル、イモリなどの両生類やヒビ、トカゲ、カメなどの爬虫(はちゅう)類は、地中、石や倒木の下、水底の泥中などの温度があまり下がらない所へ移動し、環境温度の低下にしたがって体温が低下して冬眠に入る(ただし、夏に低温にさらしても冬眠状態にならない)。冬眠する爬虫類では、冬眠前に摂食をやめる。目覚めは受動的に暖められることでおこる(カエル型冬眠)。コウモリ類、ヤマネ、ハリネズミなどの哺乳(ほにゅう)類は、洞穴や樹洞や地中で冬眠し、体温は0℃近くまで下がるが、ある限度以下にはならない。コウモリでは環境温度が零下2℃、ヤマネでは零下7℃以下になると、体温は逆に上昇して冬眠から覚める。このように熱調節は行われていて、いわばサーモスタットの温度調節の目盛りを低くあわせたようになっている。この型(コウモリ型冬眠)を真の冬眠とする場合がある。クマは斜面に土穴を掘って冬ごもりをするが、体温低下はわずかで眠りも浅く、すこしの刺激で目覚める(クマ型冬眠)。鳥類では北アメリカのチビアメリカヨタカが例外的に冬眠する。節足動物ではカエル型の冬眠をするものと、休眠という特殊な状態で冬眠するものがある。冬眠中は体温、酸素消費、呼吸速度が低下して、代謝活動が低くなっており、エネルギー消費の節約になっている。寒さと食物不足という不利な冬の時期を生き延びるための仕組みと考えられる。(日本大百科全書ニッポニカ)
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今年の漢字一字は「熊」でしたと、ほんの一瞬(数分か数時間)は話題になるが、時の経過と共に即座に忘れられる。しかし熊(などの動物)との格闘に直面している人々は一瞬も安閑とはしておれないのです。これぞ「正解」と言う名案があるかどうか、ぼくにはわかりませんが、少なくとも熊は人間よりはるかに古くから地上に生存してきました(一説では2000万年前から)。地球(地上ばかりか、地下も空中も)は人間のものだ、邪魔だてする奴は許さないぞと言わぬばかりの「傍若無人」ぶり、その粗悪な振る舞いこそが、いろいろな面で、今日、反撃を受けているのではないですか。犬猫は動物愛護の対象にしてやるけれど、熊は獰猛すぎる奴だから、愛護なんかできはしないというのですか。それにしては、なんともお手軽な「愛護」だこと。
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「クマの系統は、約2000万年前に食肉類から分化したと推定されています。/食肉類とは、ライオンやトラなどの大型のネコ科動物などを含めた動物のグループで、その多くが他の動物を襲って食べる肉食動物です。クマもそうした動物と共通の特徴である、発達した犬歯と、鋭いかぎ爪を持ちます。/一方、分化したクマの祖先は、植物を含めたさまざまな食物を食べるようになりました。このクマの祖先が「雑食化」の道をたどったことで、その後、クマ類は世界のさまざまな環境に対応し、生息域を広げていきました。現在、世界には8種のクマがいます。/日本国内には、北海道に生息するヒグマ(亜種としてのエゾヒグマ)と、本州以南に生息するツキノワグマ(亜種としてのニホンツキノワグマ)の2種類のクマがいます。/環境省が2000~2003年度に行なった調査によると、北海道の約55%の地域にヒグマが、本州の約45%の地域にはツキノワグマが生息しています。つまり日本の国土の半分の面積には、クマが生息していることになります」「広範囲にわたって移動するクマですから、その行動圏に人間の生活圏(街や農地など)が入っていることも少なくありません。人間とクマの共生を考えるとき、広い行動域を持つクマの特性を十分に考慮する必要があるでしょう」(地図の出典:日本クマネットワーク小冊子「クマの保全と生物多様性」より)(前掲・WWF・2012/01/17)

◎ 動物愛護法= 動物虐待や遺棄を防ぐことなどが目的。1973年に「動物保護法」として議員立法で制定され、99年に現在の名称の「動物愛護法」に変わった。その後も改正が繰り返され、2019年成立の改正法では/(1)/動物虐待の罰則強化/(2)/子犬子猫の販売規制強化/(3)/マイクロチップ装着の義務化―の段階的施行が定められた。今年6月施行の販売規制では、生後49日超の販売を認める付則を削除し、生後56日以下の販売を禁止に。例外として、日本犬6種(柴犬、紀州犬、四国犬、甲斐犬、北海道犬、秋田犬)については飼い主がブリーダーから直接買うため衝動買いにつながりにくいなどとして、従来通り付則が適用される。更新日:2021年4月28日(共同通信ニュース用語解説)
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