
ロバート・レッドフォードさんが亡くなった。熱心なファンではなかったが、偶然だったか、彼の映画は何本か観ています。大きな話題を呼んだ中でも、デビュー作となった「明日に向かって撃て」(1969年)と、民主主義社会の砦と目され、社会の木鐸と称される新聞社及び新聞記者を描いた「大統領の陰謀」(1976年)は印象深く記憶にとどめています。駄文を綴るのは止めて、各紙のコラムから、三本ばかり紹介したくなりました。それを読んでいただければ、レッドフォード氏の人となりや業績のおおよそは分かろうというもの。「雨にぬれても」はB.J.Thomasで嫌になるほど聴いたものです。(いつも以上にヘンテコな駄文になりました。書くべきことはいくらもあるのに、他に雑用がたくさん控えているので、この始末。書くべき「一つ一つ」を、稿を改めて愚考したい。特に「凋落する米国」については、無関心ではいられません)
*雨にぬれても/B・J・トーマス Raindrops Keep Fallin' on My Head/B.J.Thomas(https://www.youtube.com/watch?v=7kjIN5mEf44&list=RD7kjIN5mEf44&start_radio=1) *Raindrops Keep Fallin' On My Head - BJ Thomas (Lyrics Video) [HQ Audio](https://www.youtube.com/watch?v=Ss8_X2VvHZs&list=RDSs8_X2VvHZs&start_radio=1)
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【卓上四季】レッドフォードさん逝く 米ハリウッドのスターたちが興味を示し、当初はスティーブ・マックイーンさんが演じるはずだった役。どういういきさつだったのだろう、名もなき役者に白羽の矢が立った。ロバート・レッドフォードさんだ▼西部開拓時代に実在した強盗を描いた「明日に向(むか)って撃て!」で一躍脚光を浴びる。共演したポール・ニューマンさんとのコンビが最高だった。決してへこたれない天衣無縫のアンチヒーロー。笑顔がすてきな二枚目スターとして出発する▼ざっと半世紀にわたり、映画界で活躍した。再びニューマンさんと共演した「スティング」での詐欺師をはじめ、大統領の陰謀を暴く新聞記者、天才的な野球選手…と幅広い役で銀幕を彩った。ファンには思い思いのベスト作があるだろう▼売れっ子になるまで下積みが長かったせいか、弱き立場の人々へ支援を惜しまなかった。大手資本の後ろ盾がない独立系映画を支えて、新しい才能を発掘する▼環境保護に取り組む。社会へ発言を続ける。米国の良識を体現する存在だったが、89年の長い旅路に終止符が打たれた▼出世作「明日に―」の挿入歌「雨にぬれても」のフレーズを思い出す。これくらいではへこたれない、幸せはすぐそこに来ている。雨粒が降りかかるけれど僕は泣かない―。いつも前を向き、人を励ました俳優人生と重なる。(北海道新聞・2025/09/18)

【有明抄】レッドフォードの時代 1972年、米民主党本部への盗聴未遂に端を発したウォーターゲート事件は、ワシントン・ポスト紙の若手記者2人が大統領側の関与を暴き、当時のニクソン氏を辞任に追い込んだ。事件を題材に書籍の執筆に取りかかっていたころ、同紙編集局に一本の電話があった◆事件の中でいちばん面白いのは…電話の主は言った。「2人の記者が苦しみ迷いながら大統領を攻撃する記事を生み出す過程だ」。ジャーナリストの視点から事件を描くという発想はそこから生まれた、とボブ・ウッドワード記者の回顧録にある◆電話をかけたのはロバート・レッドフォードさん。いち早く映画化権を買い取り、自らウッドワード記者を演じた『大統領の陰謀』は代表作のひとつ。2018年の引退表明後、久しく消息を聞かなかったが、おととい訃報が届いた。89歳という◆野性味や個性がもてはやされる時代にあって、ハリウッド伝統の2枚目。史上名高い列車強盗団の一味、仲間の復(ふく)讐(しゅう)に立ち上がる詐欺師…次々に魅力的な主人公を演じた70年代は彼の時代だった◆作家の意向を無視して銀行も口を出す大手の商業主義が許せず、小規模な独立系映画の支援を続けた。役柄にも重なる芯のある生き方を通したひとは、時の権力者が気に食わないメディアを裁判で揺さぶる危うい時代に、背を向けるように逝った。(桑)(佐賀新聞・2025/09/18)

【筆洗】映画『明日に向(むか)って撃て!』(1969年)で、強盗ブッチ(ポール・ニューマン)の相棒となるサンダンス・キッドの役は当初、スティーブ・マックイーンと決まっていたそうだ▼だが、そのマックイーンが突然、役を降りてしまい、やむなく起用したのが売り出し中の俳優。起用に見事、応え、大当たりを取り、その後の映画人生に大きな弾みをつける。89歳で亡くなった俳優のロバート・レッドフォードさん▼折り紙付きの二枚目だが、それだけでは成功の道にはたどり着けなかったはずだ。『スティング』での生意気な詐欺師、『大統領の陰謀』の真実を追い求める記者、不幸な出来事にも再び立ち上がる『ナチュラル』の野球選手。多彩な色とにおいを放つ俳優だった▼自由で、強く、人道的で、負けず嫌い。それにユーモアと憂いも少々。レッドフォードさんの芝居から感じる手触りは遠い昔、世界が一目置いた米国の良質なイメージそのものだったかもしれない▼映画監督への挑戦や若手映画人の育成など、ハリウッドの伝統にこだわらず、映画の新しい道を模索した人だった▼『明日に-』にこんな場面がある。ボリビアの警察に追い詰められて2人は後がない状況である。それでもあきらめず、今度はオーストラリアへ逃げようかとブッチと語り合うサンダンス・キッド。常に前へ進もうとした俳優人生と重なるか。(東京新聞・2025/09/18)
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「明日に向って撃て!」(あすにむかってうて)(Butch Cassidy and the Sundance Kid)= アメリカ映画。監督ジョージ・ロイ・ヒル。1969年作品。ハリウッドの大手製作スタジオの興行収入競争の本格化という背景、時代を投影した反体制的でシニカルな視点、古典ジャンルへの懐古と革新的な映像表現との組合せなど、多くの点でアメリカン・ニュー・シネマの幕開けを告げる映画史的分岐点となった西部劇作品。物語の筋は、強盗を生業(なりわい)とし、『大列車強盗』(1903)のような古典西部劇であればヒーローであろう二人の主人公が、近代化によって西部劇の象徴的舞台である西部の荒野から南米へと追いやられていく刹那(せつな)的な逃避行。古典西部劇にはみられない生々しい性や暴力の描写も挿入される。結末部の凍結フレームで表現する死のメタファー(隠喩(いんゆ))、フラッシング技術(故意に短時間ネガを光に露出させ、映像上の色合いは薄くなるがスピード感を出す技術)など、斬新な映画技法を駆使している。西部劇というジャンルの確立期から、パロディ化などを含む変容期を経て、自らを回顧する時期に入ったことを告げた作品でもある。1969年アカデミー脚本賞、撮影賞など4部門受賞。1970年(昭和45)日本公開。(日本大百科全書ニッポニカ)
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「大統領の陰謀」(解説・あらすじ)ウォーターゲート事件の知られざる真相を暴き、ニクソン大統領を失脚に導いたワシントン・ポスト紙の記者カール・バーンスタインとボブ・ウッドワードの回顧録を映画化した社会派サスペンスドラマ。1972年6月、ワシントンD.C.のウォーターゲートビルにある民主党本部に不審な5人組が侵入し、逮捕される。ワシントン・ポスト紙の新米記者ウッドワードは裁判を取材し、当初は単なる窃盗目的と思われた犯人たちの裏に何か大きな存在をかぎとる。先輩記者のバーンスタインと組んで事件の調査にあたることになったウッドワードは、情報提供者ディープ・スロートの助言や編集主幹ブラッドリーの後ろ盾を得て徐々に真相に迫るが……。第49回アカデミー賞で作品賞をはじめ計8部門にノミネート。ブラッドリーを演じたジェイソン・ロバーズの助演男優賞ほか計4部門を受賞した。
1976年製作/132分/アメリカ 原題または英題:All The President's Men 配給:ワーナー・ブラザース映画
劇場公開日:1976年8月7日(映画.COM:https://eiga.com/movie/19063/)
(CNN) 米ハリウッド屈指の二枚目俳優として「明日に向って撃て!」「大統領の陰謀」など数々の映画で主役を演じたロバート・レッドフォードさんが16日、米ユタ州サンダンスの自宅で死去した。89歳だった。広報担当者が明らかにした。
映画監督としても活躍し、「普通の人々」「リバー・ランズ・スルー・イット」などでアカデミー賞を受賞。芸術と映画制作への情熱から、サンダンス映画祭の主催団体として知られるサンダンス・インスティテュートを創設した。
1961年にはユタ州に転居して、同州や米西部の環境保護活動に力を入れた。
俳優としての活躍は晩年になっても続いた。2017年にはネットフリックス映画「夜が明けるまで」でジェーン・フォンダと再び共演。翌年は82歳で「さらば愛しきアウトロー」の主役を演じた。本人は、これが最後の映画になるだろうと言いながら、引退は考えていないと語っていた。(以下略)(CNN・2025.09.17 Wed)(https://www.cnn.co.jp/showbiz/35238065.html)
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昨秋の米大統領選挙頃から、ぼくは盛んにボブ・ウッドワード氏の論評を何度も読み聴きしました。ぼくには「伝説の記者」だったボブさんは、穏やかな口調で、しかし明確にアメリカ政治の現状や課題を述べられていた。現大統領にも明確な発言を繰り返していたことを鮮明に覚えています。つい最近、立て続けに、米大統領が二大新聞を、驚愕の賠償額の「名誉棄損」で提訴した。New York Times(邦貨で2兆2千億円)とWall Street Journal(1兆5千億円)です。恐らく「前代未聞の事件」と言っていいと思う。大統領へ「批判」を繰り返すジャーナリズムに莫大な損害賠償を求めるという、文字通りの「スラップ訴訟」ではあります。この裁判の成り行きにも注目が集まるでしょうが、それ以上に、批判は一切許さないという「絶大な権力者」の暴挙・暴力というべき事案に、アメリカのジャーナリズムはよく対峙し得るのでしょうか。
名だたる私立大学が、大統領の軍門に降るという「醜態」を見せつけられている今、リベラル・ジャーナリズムへの剥き出しの攻撃をどのように見ることができるか。「対岸の火事」などと、暢気に構えてはいられない状況ですが、情けないことに、何、この国ではとっくにジャーナリズムは滅んでしまったという声は小さくないのです。
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「(CNN) トランプ米大統領は15日、米紙ニューヨーク・タイムズを相手取り、150億ドル(約2兆2000億円)の名誉毀損(きそん)訴訟を起こす予定だと発表した。/トランプ氏は自身のSNSトゥルース・ソーシャルで「本日、ニューヨーク・タイムズに対し、150億ドルの名誉毀損訴訟を起こすという大変光栄な機会を得た」と述べた。/訴訟はフロリダ州で提起される予定だとトランプ氏は述べたが、詳細は明らかにしていない。/トランプ氏は、同紙が自身や家族、自身の事業について虚偽の報道を行ったと非難したが、具体的な内容には触れなかった。(CNN・2025.09.16 Tue )
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「大統領の陰謀」から半世紀余。アメリカのデモクラシーは地に堕ちたというべきでしょう。今も現役であり続けているジャーナリストのウッドワードさんの発言に注目しているところに、ロバート・レッドフォードさんの逝去の情報が入ったのです。実に感慨深いものが、名もない、極東の一老人の脳裏にもあります。「トランプ王」を育てたのは誰か。リチャード・カーク氏が暗殺された直後から、米国大統領は「赤狩り」を彷彿させるような暴言暴挙を隠さないでいます。「大統領の陰謀」などではなく、白昼堂々の「大統領の謀略・暴挙」に、現下のアメリカはよく耐えることができるだろうか。そして、その「王国」の「属国(従属国)」である、この国の行く末はどうなるのでしょうか。

● ボブ ウッドワード(Bob Woodward)= 職業・肩書ジャーナリスト,ノンフィクション作家 元「ワシントン・ポスト」編集局次長 国籍米国 生年月日1943年3月26日 出生地イリノイ州ジュネバ 本名ウッドワード,ロバート・アプシャー〈Woodward,Robert Upshur〉学歴エール大学〔1965年〕卒,ジョージ・ワシントン大学大学院 受賞ピュリッツァー賞〔1974年〕「大統領の陰謀」,ドルーピアソン財団賞〔1974年〕「大統領の陰謀」 経歴米国海軍での5年の兵役を経て、1970〜71年モンゴメリー郡「センティネル」の記者となり、’71年「ワシントン・ポスト」に移る。入社して1年足らずの’72年、警察の夜間パトロールの記事を取るのが専門だったが、当時のニクソン大統領(共和党)再選支持派がワシントンのウォーターゲートビルにある民主党全国委員会本部に盗聴器を仕掛けるため侵入し逮捕される事件が起こり、相棒のカール・バーンスタインとともに調査報道で追求。ニクソン大統領のもみ消し工作も明らかになり、’74年には米国史上初めて現職大統領が辞任するという世紀の大スキャンダル“ウォーターゲート事件”の発端となった。その経緯をバーンスタインとの共作で「大統領の陰謀」(’74年)、「最後の日々」(’76年)の2冊の本にまとめて出版し、ジャーナリズム部門のピュリッツァー賞、ドルーピアソン財団賞など数多くの賞を受賞。調査報道の情報源については、当時流行のポルノ映画の題名をもとに“ディープ・スロート”と呼び、本人が死ぬまで明かさないとしていたが、2005年連邦捜査局FBI)副長官だったマーク・フェルトが自ら名のりを上げ、大きな話題になった。この間、1979年「ワシントン・ポスト」のコット・アームストロングとの共著で、米最高裁9人の裁判官を主題にした「ブレザレン」を発表。同年「ワシントン・ポスト」首都版編集長、’81年同紙副編集長を経て、編集局次長。他の著書に「大統領執務室―裸のクリントン政権」「マエストロ―アラン・グリーンスパンのFEDとアメリカの経済繁栄」などがある。(現代外国人名録)(左上写真の左側)
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