When will they ever learn? 

 このところずっと心晴れない日が続いています。理由はさまざまでしょうが、何よりも世界の各地で起こっている「戦争」「殺戮」「民族浄化」…。なんとでも形容できます、その惨禍・惨状がぼくたちの日常の一コマになっていることに耐えられないからだということです。その意味合いは異なるでしょうが、自動車事故で一人が亡くなるのと、一発のミサイルで何十人もが亡くなる、その軽重を問うのではありません。「いのちの重み」に変わりはないと思うと、ぼくは現状には居たたまれないのです。戦争に対峙するのに、ぼくには何もできない、せいぜい、間接の間接のようなまだるっこい署名やささやかな寄付くらいしか、今のぼくにはできない。だから、こそ、その不条理な殺人に怒りを思いきりぶつけるのです。気休めにもならないけれど、そうするほかに手がないと思うから、「心晴れない日々」が続くのです。

 その「戦争」(双方が悪い場合もあろうが、そのほとんどは「大義」を掲げて人を殺し合うのであり、戦争に「大義」があるはずもないのに。いずれもが、ほんの一握りの「権力者」のつまらない自尊心や功名心の為せる業。ぼくは政治は大嫌いだし、政治家などは、まさに軽蔑の的と言っていい存在でした。その背景には、どんな人間でも根っこには「政治性」があり、人というものは、時には誰彼に対して「政治的(暴力的)」になるという性質を持っているから、その「わが内なる暴力性」を限りなく抑制することが、ぼくには至上の命題となっているし、なってきたのです。

 高校時代、この国は日米安保条約改定問題に発する政治の季節は酣(たけなわ)だった。その状況も少しは知っていたが、ぼくは野球やラグビーに血道をあげていた。大学に入り、アメリカのベトナム戦争深入りが抜き差しならぬ時代に入っていた。当然のことながら、米国の地に「戦争反対」の輪が広がり、それを支えるように、たくさんの反戦歌が流れていました。たくさんあった中でも、ぼくは「花はどへ行った」に心を奪われた。ピートシガーは、ある意味ではアメリカンフォークの中興の祖の趣があったし、その単調・素朴な歌唱が気に入っていた。同時期には、この「花はどこへ行った(Where Have All The Flowers Gone)」は、ジョン・バエズ、キングストン・トリオ、ピーター・ポール・マリー(P.P.M.)などのレコードや歌唱は多くの市民に受け入れられ、方々でその歌声とともに反戦の意気は上がっていたと思う。

 心晴れない日々、ぼくの耳には「花はどこへ行った」が流れ続けていたのです。そんなとき、奇遇というかめぐり合わせというか、今朝の「ラジオ深夜便」午前2時台にピート・シーガー特集があり、ぼくはそれを聞くともなく聞いていた。猫が盛んにぼくを起こしかけていました。「花は…」が聞こえてきて、ベッドを出た。一瞬、シーガーは何年生まれだったかが気になった。亡くなったのは2014年だから、とても高齢で亡くなっていたはず。咄嗟に評論の加藤修一、俳人の金子兜太さんの顔が浮かんできた。(多くの人の生年没年を覚えるのがぼくの趣味?)そして、改めてシーガーの年齢に驚いた。彼の詞はむずかしくはない。野原一杯に咲いていた花は何処へ行ったのか。若い娘がすべて摘んでしまった。その娘たちは何処へ行ったか。夫を探しに…。そして、それぞれの結びに<When will they ever learn? When will they ever learn?>と問いかける。「いったい、いつになると学ぶのか?」と。戦争が愚かであり、無辜の民を殺すことが名誉になるということがあるはずもないと、どうして人間は学ばないのだろうか。反戦歌というのは、人間の愚かさへの終わりのない「警鐘」、いやむしろ「弔鐘(a funeral bell)」だとぼくには思えるのです。

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⦿花はどこへ行った アメリカのフォーク・シンガー、ピート・シーガーの曲。1955年発表。コサック民謡に触発されてつくった曲。その後フォーク・シンガーのジョー・ヒッカーソンが歌詞を一部書き足したため、シーガーとヒッカーソンの共作とも言われている。サンフランシスコのフォーク・グループ、キングストン・トリオが1961年に発表したカバーが全米第21位を記録。1962年にはピーター・ポール&マリーがデビューアルバムに収録してヒット、以後反戦曲のスタンダードナンバーとなる。原題《Where Have All The Flowers Gone?》。(デジタル大辞泉)

⦿シーガー(Seeger, Pete)[生]1919.5.3. ニューヨーク,ニューヨーク [没]2014.1.27. ニューヨーク,ニューヨーク アメリカ合衆国のシンガー・ソングライター。別名 Peter Seeger。1950年代から 1960年代にかけて,フォークソングのリバイバルの立役者として数多くの曲を生み出した。代表作は『花はどこへ行った』『天使のハンマー』『ワインより甘いキス』『ターン・ターン・ターン』などで,単独作品も共作もある。ハーバード大学中退後,全米を旅してカントリー・バラード(→カントリー・アンド・ウェスタン)や労働歌,賛美歌を収集し,5弦バンジョーの名人芸を身につけた。1940年ウディ・ガスリーらとともにアルマナック・シンガーズを結成,1948年にはウィーバーズを立ち上げた。だが,シーガーがかつて左翼的な活動にかかわっていたせいで,ウィーバーズ時代,ソロ演奏家時代に要注意人物とみられた(→マッカーシズム)。1990年代にはそうした過去を乗り越え,1994年にナショナル・メダル・オブ・アーツを受けた。1996年にロックンロールの殿堂入りを果たした。1997,2009年にグラミー賞を受賞。(ブリタニカ国際大百科事典)

*Pete Seeger: Where Have All the Flowers Gone?(https://www.youtube.com/watch?v=1y2SIIeqy34

Where Have All The Flowers Gone?   
(Pete Seeger & Joe Hickerson)        

Where have all the flowers gone,
Long time passing?                 
Where have all the flowers gone,            
Long time ago?                     
Where have all the flowers gone?            
Young girls have picked them, ev'ryone.         
When will they ever learn?              
When will they ever learn?              

Where have all the young girls gone,         
Long time passing?
Where have all the young girls gone,
Long time ago?
Where have all the young girls gone?
Gone to husbands, ev'ryone.
When will they ever learn?
When will they ever learn?

Where have all the husbands gone,
Long time passing?
Where have all the husbands gone,
Long time ago?
Where have all the husbands gone?
Gone to soldiers, ev'ryone.
When will they ever learn?
When will they ever learn?
Where have all the soldiers gone,
Long time passing?
Where have all the soldiers gone,
Long time ago?
Where have all the soldiers gone?
Gone to graveyards, ev'ryone.
When will they ever learn?
When will they ever learn?

Where have all the graveyards gone,
Long time passing?
Where have all the graveyards gone,
Long time ago?
Where have all the graveyards gone?
Gone to flowers, ev'ryone.
When will they ever learn?
When will they ever learn?

Where have all the flowers gone,
Long time passing?
Where have all the flowers gone,
Long time ago?
Where have all the flowers gone?
Young girls have picked them, ev'ryone.
When will they ever learn?
When will they ever learn?

*Where have all the flowers gone -The kingston trio(lyrics)(https://www.youtube.com/watch?v=bI3QVsW30j0&list=RDbI3QVsW30j0&start_radio=1&rv=jwpz-wkofZw

Peter, Paul and Mary – Where Have All the Flowers Gone (25th Anniversary Concert)(https://www.youtube.com/watch?v=ZgXNVA9ngx8

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dogen3

▶この国には「政治」はなく、「政局」ばかり。議会制民主主義の筋をいうなら、現に政権交替がなされて当然の事態にあるとみられるが、弱小を含めた各政党は頽廃の現実を大肯定、かつ心底からの保守頑迷固陋主義派。大同団結といかぬのは「党利党略」が何よりの根本義だとされる故。何が悲しくて「政治」を志し、「政治家」を名乗るかよ。世界の笑いものになるのではない、定見のない「八方美人」には、誰も振り向かないという事実に気がつかないのだ。(2025/04/02)