手に取るなやはり野に置け蓮華草

 ただ今の季節は 「霜降(そうこう)」の砌(みぎり)。二十四節気の第十八番目(10月23日~11月07)に当たります。昨日が「初侯・霜始降」(10月23日~10月27日)」の入り。本日は、霜ではなく雨が朝から降っています。台風30号の影響でもあるのでしょうか。南太平洋上に発生し、ひたすら北上しつつ、どういうわけか、ある場所(地点)で、劣島を目指して大きく右折(東進)する台風が極めて数が多い。いくつかの気象条件が重なっての現象でしょうが、あるいはこの劣島付近の海水温が台風を呼び寄せる引力を有しているからかもしれません。まるで、台風に「魅入られた小島」という感じが強くするのです。台風の目的地化しているようですね。柳田國男さん(民俗学)は「や詩のみ」を介して「海上の道」を発見したかに夢想されましたが、ぼくは、その伝でいうなら赤道直下「風の道」を想定したくなります。海流と解水温に誘われて、南の遠き島より旅をする風の便り。あまり大掛かりに吹かないでほしいものです。

 当地(だけではありません)では、一か月前の台風25号の直撃を喰らったわけではなかったが、それがもたらした豪雨のためだったか、その破壊力に方々の崖(斜面)が崩され、今なお交通遮断、復旧作業が続いています。毎日のように買い物に出かける、その目的地まで迂回路を縫っていく途次にいくつもの損壊現場を通るのですが、山肌に蓄えられた水分が溢れだし、道路上に流れ出すことおよそ三週間。どれほどの雨が山に落ちたのか。高くない丘程度の山にも幾分かの保水力はあるはずですが、来る日も来る日も道路上に流れ出している様子を見るにつけ、掛け値なしに「自然の威力」を痛感させられている。加えて、その現象の何割かに人的要因も加わっているとみるなら、単に「自然の脅威」と受け止めるわけにはいかないでしょう。

 (ヘッダー写真は「広い花畑に咲き誇るコスモス=鴻巣市明用「コスモスアリーナふきあげ」周辺の花畑」(埼玉新聞・2026/10/19)

 県下では、いまだ「停電中」の住まいもあります。道路や電気、あるいは水道やガスなど、日常生活に不可欠なインフラを奪われて、人々の暮らしは「不自由」と「不便」を強いられ、加えて、生活の生命線である鉄道やバス便もまた、甚大な被害を被っています。百年前よりも大量の雨が生活圏内に降るという意味(背景)は、その百年の「開発」「進歩」「便利」「豊かさ」という人間の欲求・願望などと引き換えに、ぼくたちにもたらされた「負の恩恵」だともいえるでしょう。地球温暖化、気候変動、さまざまな方面から、現下の世界的「不安定な気象」状況が説明されますが、その「定説」さえもが、ある人々からは否定され続けているのも現実です。狭い敷地内で、好き放題に枯れ葉や枯れ木の山を燃やせば、どういうことになるか、誰にもわかりそうなものです。一方、広い敷地があって木々も豊富だから「焚火」ができるのだ、どうだ、といわぬばかりの隣人がいる、そんな世界の現状に、愚か者や、馬鹿者が、自分勝手な振る舞いを起こし、それでも「泣く子と地頭には勝てぬ」と、引っ込んでいて、被害を被るのは「弱者」ばかりとは、いかにも理不尽だというほかありません。

 今、地球上の各地で、政治家の、いわば「政治的不作為」に発する「生活苦」が我慢の限度を超えたかのように「抗議行動」、これをある人々は「暴動(riot)」と呼ぶ、毎日の生活苦の果ての行動が生じています。この島国も例外ではないにもかかわらず、政府に対して、批判も抗議も、目立って起こらないのはいいことなのか。あるいは「大和は 国のまほろば たたなづく 青がき 山ごもれる 大和し 美 (うるわ)し」(倭建命)《日本武尊・小碓命(おうすのみこと)、父は景行天皇、毋は播磨稲日太郎姫(はりまいなびおおいらつめ)。「古代伝説の英雄」》とおおらかに詠うのは「自尊」精神の表れでしょうか。笑わせないでくれといいたいですね。(「まほろば」は「まほら」です。その意とするところは「素晴らしい場所」を指す古語。「楽園」「理想郷」を言うそうです。その多くは「奈良」を指しますが、大きく言って「日本(大和)」を言うのでしょう。神話時代はいざ知らず、日本の歴史は「権力闘争」の連続だったことは事実です。

=========

【忙人寸語】暦の上では晩秋。紅葉シーズンに先駆けて、セイタカアワダチソウ(背高泡立草)が耕作放棄地や道路沿いで一斉に咲き出した▼その名の通り、背丈は1~2メートル以上にもなり、小さな黄色い花が泡立って見える。北米原産の多年草で、明治時代に園芸目的で持ち込まれた。旺盛な繁殖力から「要注意外来生物」とされ、嫌われ者のイメージが強い▼根や地下茎から化学物質を出し、周辺の在来種を排除して繁茂するため問題視されてきた。ところが、最盛期の昭和40年代と比べて繁殖力が失われ、ススキなどの在来種が再び勢力を取り戻しているという▼植物が放出する化学物質が、周囲の植物や昆虫、微生物に影響を与える現象はアレロパシー(多感作用)と呼ばれる。この効果は、長期間同じ場所で育ち続けたセイタカアワダチソウ自らの発育も阻害していた。一面を埋め尽くすほどの繁殖力は過渡的な状態だったのかもしれない▼記録的な猛暑と長雨、さらに強大化する台風が追い打ちをかけ、夏から秋にかけて自然界は無軌道ぶりを露わにした。温室効果ガスの増加や森林破壊が地球環境のバランスを崩し、異常気象へとつながっている▼アレロパシーは、ギリシャ語が由来の合成語で「互いに影響する」という意味だ。自らの活動が気候変動を招いた人間も、セイタカアワダチソウと同じ道をたどらなければいいのだが。(千葉日報・2026/10/24)
【あぶくま抄】強く立て 草原に咲き誇るコスモスは、秋の風景を代表する。日本には明治時代に渡来した。和名の「秋桜」は花弁の形がサクラに似ているため付いたと伝わる▼歌人の与謝野晶子も愛[め]でたようだ。〈こすもすよ/強く立てよと/云ひに行く/女の子かな/秋雨の中〉。冷たい風雨に負けないでと、少女が花を励ます。その純粋な心が初々しくも、たくましい。今年は特に雨雲が長く居座り、生育が遅れた。例年9月に咲き始める県内の名所・猪苗代ハーブ園では、ようやく見頃を迎えた。磐梯山と猪苗代湖を望む高原を吹き抜ける秋風に、100万本が揺れる▼意外だが、原産地はメキシコ。標高1600メートル以上の冷涼な高地を好む。日光が差し、風通しが良ければ土壌は選ばない。道路脇や痩せた休耕地にも自生し、種を残し続けてきた。コロンブスによるアメリカ大陸発見後、ヨーロッパに入り、改良を重ねながら栽培されるようになった▼力強さを宿している。はかなげな見た目からは想像もつかない。自己主張や承認欲求がはびこるネット社会に疲れを感じたら、群生の地に足を運びたい。たおやかだが野性味を秘めた花々から、ささやきが聞こえる。強く立てよ、と。(福島民報・2026/10/23)

 本日の「コラム」は二編です。千葉日報「忙人寸語」と福島民報「あぶくま抄」。前者には「セイタカアワダチソウ」、後者には「コスモス」が登場している。どちらも、誰にも見慣れた草花でしょう。一方は「好かれ者」、他方は「嫌われ者」、そんなところが世間の相場でしょうか。昨日もセイタカアワダチソウと、ぼくは格闘していました。背は高く、幹も太い、まるで樹木かと思うほどのたくましさ。「旺盛な繁殖力から『要注意外来生物』とされ、嫌われ者のイメージが強い▼根や地下茎から化学物質を出し、周辺の在来種を排除して繁茂するため問題視されてきた。ところが、最盛期の昭和40年代と比べて繁殖力が失われ、ススキなどの在来種が再び勢力を取り戻しているという」(「忙人凡語」)こういう事態が静かに進行しているという指摘です。

 このところ連日のように取り掛かっている「外作業」も、本日は雨模様ですので、中止です。大きく伸びた木々の伐採、枝下ろし、敷地内外の除草作業などなど、昨年の猛暑・酷暑のためにできなかった作業を、漸くしのぎやすくなった気候を頼りに、ようやくここにきて動き出したところです。こんな作業を、老人一人でするのかと、我ながら呆れつつ、誰もやってくれないのだから、それこそ拙宅にはたくさんの猫たちがいるので、「猫の手も借りながら」と、意を決しているところです。「自分でできることは自分でやる」のがぼくのささやかなモットー。こんな楽しい作業を「金を払って業者に任せる」など、ぼくには考えられもしないのです。そしてまた、ぼくの信条は「無理をしない(My personal philosophy is “not to push myself too hard.”)」でありますから、今日できることは明日もできる、とばかり、先に延ばすことにいささかの躊躇もありません。

 アレロパシーという語は昔から知っていましたが、深く考えようとはしませんでした。一年を通して日当たりのいい空き地には、季節ごとに、と思われ程に、さまざまな草花(植物)が交代しながら繁茂します。その現象を毎年見ながら、それを素通りしていることを、ぼくは恥じている。この現象こそが多分「アレロパシ―」というものだったのでしょうか。この草(セイタカアワダチソウ)の隣にはススキが背も太さも負けないほどの旺盛な成育ぶりを発揮しています。後からやってきて他人の土地を侵略し、ついには「植民地化」に成功すると、やおら、みずからが崩壊過程に入るというのは、なんだか人間どもの蛮行に似ていなくもありません。いや人間の暴力的権力にも「アレロパシー」が作用しているのかもしれないなどと、ぼくは愚考しているのです。そうであるのは必然という気もしている。

 一方のコスモス。「原産地はメキシコ。標高1600メートル以上の冷涼な高地を好む。日光が差し、風通しが良ければ土壌は選ばない。道路脇や痩せた休耕地にも自生し、種を残し続けてきた。コロンブスによるアメリカ大陸発見後、ヨーロッパに入り、改良を重ねながら栽培されるようになった」(「あぶくま抄」)ぼくは何度か、コスモス栽培に挑んだことがありましたが、うまくいかなかったのは、要するに「手入れ」を怠ったからだったと思う。それと、自分の家の小さな空き地に植えるのにふさわしい草木ではなかったとも言えます。

 「やはり野に置け蓮華草」といいます。(「遊女を身うけしようとした友を戒めて、播磨(兵庫県)の瓢水という人が作ったといわれる俳句「手に取るなやはり野に置け蓮華草」の前半を略したもの」ことわざを知る辞典)コスモスもまた、「手に取るな」という戒めだったかもしれませんし、この植物にも「他感作用」「遠隔作用」を促す要素が含まれていたのでしょうか。それにしても、植物の世界にも、十分に未解明の不思議な(合理的な)現象がたくさんあることに驚嘆している。

 「自己主張や承認欲求がはびこるネット社会に疲れを感じたら、群生の地に足を運びたい。たおやかだが野性味を秘めた花々から、ささやきが聞こえる。強く立てよ、と」(「あぶくま抄」)コラムニストはロマンチストでしょうか。「おだやかな野性味」などとのんきなことを言っておられる。ここでもまたしのぎを削り、生存競争が繰り広げられているのだと考えるだけで、ぼくは「人間であること」に恐れをなしつつ、他人を貶めないよう、邪魔をしないようにしようと誓うのですよ。「手に取るなやはり野に置け蓮華草」と、江戸の粋人(滝野瓢水、1684年~1762年)は「レンゲソウ」を「遊女」に例えました。さすれば、コスモスは誰に例えたらいいのでしょうか。

 (蛇足 人によりコスモスは「針小」であり「棒大」でもあります。以下の「二句」を並べるのは非常識でしょうか)

・嘘すこしコスモスすこし揺れにけり(三井葉子)
                                                                            ・風に立つそのコスモスに連帯す(大道寺将司)

* 詩人の三井葉子さん死去 三井葉子さん(みつい・ようこ=詩人、本名山荘幸子〈やまじょう・さちこ〉)が2日、肝不全で死去、78歳。通夜は4日午後7時、葬儀は5日正午から大阪府八尾市清水町1の4の40の八光殿八尾中央で。喪主は長男山荘隆さん。「浮舟」で現代詩女流賞、「草のような文字」で詩歌文学館賞を受賞。(朝日新聞・2014年1月2日)

* 連続企業爆破事件の大道寺死刑囚が死亡 三菱重工ビル爆破事件など1974~75年の連続企業爆破事件で殺人罪などに問われた大道寺将司死刑囚(68)が24日午前、東京拘置所で多発性骨髄腫のため死亡したことが関係者への取材で分かった。/大道寺死刑囚は死者8人、重軽傷者165人を出した三菱重工業爆破事件をはじめとする一連の企業爆破事件を起こし、87年に最高裁で死刑判決が確定した。/その後「爆弾に人が死ぬほどの威力があるとは思わなかった」などとして再審を請求していたが、最高裁は2008年に再審開始を認めない決定をしていた。(日本経済新聞・2017年5月24日)

++++++++++++++++++++++++

◎ アレロパシー(allelopathy)= モーリッシュHans Molisch(1856-1937)が1930年代に提唱した用語で,他感作用,遠隔作用などと訳されることもある。特定の種の植物が生産する物質が同種あるいは異種の植物に対して及ぼす作用のことをいう。その作用は,阻害の場合も促進の場合もあるが,結果としては有害なものが多い。セイタカアワダチソウは周辺の植物を駆逐して旺盛な群落をつくるが,これはある種の阻害物質を出して周辺に生えている植物の生育を阻害しているためである。このような作用によって,近傍の他種との競争に打ち勝って繁栄している種があり,植物群落の種組成の決定や遷移の進行については,さまざまな生態的条件の一つとしてアレロパシーが大きな役割を果たしていると推定されているが,まだ研究はよく進んではいない。/作物の忌地とよばれる現象には同種間のアレロパシーが関与しており,ジャガイモ塊茎等の生育を阻害する物質がジャガイモから分泌しているらしい。しかし,忌地の場合の原因物質が何であるかはまだ同定されておらず,その作用機構の究明が待たれている。忌地以外にも栽培植物にはアレロパシーがしばしば認められるようで,これについての研究が進めば,作物の連作障害に対策が立てられ,また田畑の雑草の管理に役立つ知見が得られるものと期待される。/なお,本来の語源からいえば,アレロパシーはある種の植物の生育が他種の作用によって影響を受けることであるが,現在では,忌地のような同種個体間の阻害作用も含めて考えられるようになっている。(「改訂新版 世界大百科事典」)

◎ アレロパシー(allelopathy)= 他感作用あるいは遠隔作用ともいう.種々の生物が共存する自然界では,ある生物がほかの生物に対して影響を与えている場合がある.この生物間の影響が,生物により対外に排出される化学物質によって引き起こされる現象をアレロパシー(他感作用)といい,アレロパシーを引き起こす化学物質を他感作用物質という.一般には,植物がほかの植物に作用する現象をいい,クルミの木やマツの木の根本に雑草が生えにくい現象や,アスパラガスの連作障害などによる忌地(いやち)現象もアレロパシーによるものである.クルミの木のジュグロンや,セイタカアワダチソウのポリアセチレン化合物などが他感作用物質として知られている.(「化学辞典(第2版)」)

◎ コスモス(Cosmos)= キク科の一年草。メキシコを主として熱帯アメリカに原産するコスモスは25種を超えるが,園芸種の基礎となったのは次の2種である。(1)コスモス(和名アキザクラ,オオハルシャギク)C.bipinnatus Cav. 秋に群生して咲く様子がサクラの花に見えるので秋桜の名があるように,基本種は短日で花芽を分化するため,10月に開花する。コロンブスのアメリカ大陸発見後,ヨーロッパに入り,しだいに改良され庭園や切花に栽培されるようになった。草丈1~2m,茎は太く多数枝を分け,葉は対生で2回羽状複葉,裂片は線形。頭状花は総苞につつまれ,8枚ほどの紅,ピンク,白の幅広い舌状花をつけて秋に咲くが,園芸変種には八重咲き,丁字咲きなどがある。またアメリカで作出された早咲種はアーリー・センセーションEarly Sensationと名づけられ,播種(はしゆ)後60日で咲く。この色変りにピンクに暗紅色の目があるラデアンスRadianceが生まれ,さらにこの四倍体ベルサイユVersaillesが育成されて,周年コスモスが咲くようになった。(2)黄花コスモスC.sulphureus Cav. メキシコからブラジルにかけて原産する一年草で,高さ1~2m,葉は2~3回羽状複葉で9~10月に黄色の8枚弁の頭状花をつける。改良された品種では高さ1m,花色は橙黄色,黄,淡黄色などの一重,八重咲きになり,8月咲きとなった。さらに美しい緋紅色のサンセットSunsetやディアボロDiaboloが作出されている。いずれも一年草で日当りと排水のよい場所に春まきとして育てる。早咲きコスモスは1~2月に温室にまけば3~4月に開花するので,鉢植えや切花に利用する。秋咲種は花壇や庭には遅くまいて草丈を低く咲かせるほうがよい。(「改訂新版 世界大百科事典」)

IIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIII