絶望と希望は紙一重?

【滴一滴】学びをAIに任せたら HOT(暑い)ーC×××。×を埋める文字を答えよ。ヒントは反対語▼自力でCOLD(寒い)と考えた人と、HOTーCOLDという答えをただ読んだ人。前者の方が記憶に残りやすいことが、50年ほど前の実験で明らかになっている。「生成効果」と呼ばれる▼では考える作業を生成人工知能(AI)に頼ったら、どうなるか。米英の大学が分数や読解の問題で調べたところ、AIを使ったグループは最初の10~15分は正答率が高かった。だが、AIの補助を外すと成績は低下。難問をあきらめる人が増え、粘る力が弱まったという。うなずける結果ではないか▼いま、そんな研究が世界中で進んでいる。経済協力開発機構(OECD)は「AIは課題の出来を良くしても、実際の学びにつながるとは限らない」と指摘している▼日本では、次期学習指導要領にAIの活用を明記する案が示された。英会話の練習や調べ学習などでの利用が想定され「深い学び」につなげることを目指している。一方で「AIが最適解を示すことで受け身になりやすい」といった記述もある。記憶力や思考力が下がらないよう使い方には注意が必要だろう▼子どもがAIを継続利用した場合の影響についてまだ十分なデータはない。何を任せ、何を自分の頭で考えるか。どこに線を引くべきか、大人が考えねば。(山陽新聞・2026/09/10)

⁂「週のはじめに愚考する」(136)~ おそらく、我々はまだ、進化中の「AI」の全貌をほとんど知り得ていないでいます。ぼくの勝手な類推ですが、この「発明」と「進化」はアルフレッド・ノーベル(Alfred Bernhard Nobel・1833~1896 )によるダイナマイトの発明が、「可能な限りの最短時間でかつてないほど大勢の人間を殺害する方法を発見し、富を築いた人物」(Wikipedia)とされた、その「原爆への進化」に至る業績に匹敵するもののごとく、ぼくには思われます。

 「生成AI」の善用と悪用問題ということになるのでしょうか。コラム「滴一滴」の指摘するところは、実は、その領域にとどまらず、さらに大きな問題、いや危険性をも含んでいることを知るべきでしょう。学習に「AI」を導入するとどうなるか。そんな研究が各国で進められていますが、結論はすでに出ているでしょう。「自分で考える」「自分で歩く」「自分で働く」ことを止めたら、「自分は自分でなくなる」、その割合は日一日と増大し、最後には、自分は機械・器械(AI)に依存しなければ生きていけなくなるの存在となるのは目に見えています。

(ヘッダー写真;ウォーターハウス「パンドラ」(1896年)・https://greek-myth.info/prometheus/pandora.html

 「子どもがAIを継続利用した場合の影響についてまだ十分なデータはない。何を任せ、何を自分の頭で考えるか。どこに線を引くべきか、大人が考えねば」(「滴一滴」)と、いかにも陳腐な結論で終わります。でも、考えるべき大人こそが、「AI」に頼っているのですから、もうこの問題は詰んでいるでしょう。

 ギリシア神話の「パンドラの箱(匣)・甕(壺)」を想起します。それとの関連で、あるいは浦島太郎の「玉手箱」を思ったりします。便利だから、役に立つからと、次々に機器・器機という名の道具を作り出してきたのが人間の想像力でした。機器が人間の生活を便利なものに仕向けてくれたということで、ぼくたちは「文明の恩恵」を受けてきました。しかし、便利な反面、それに伴って、ある種の不都合も生まれることは避けられませんでした。機器の多用による「事故」という副産物、それは大半が災厄につながるものでした。

 「玉手箱」や「パンドラの箱」は、その持ち主には開けるなといわれていたものでした。「開けぬが花」ということだったでしょうか。浦島太郎の「玉手箱」の暗示は何を示すのでしょうか。つまりは軽々しく開けてはいけない「玉匣」だったのでした。禁を破って開けてしまったとたん、「太郎はたちまちおじいさん」という落ちが付きました。乙姫様からもらった「玉手箱」には浦島太郎の「年齢・人生・経験」が閉じ込められていたのです。実に象徴的ですね。開けたがために、一瞬にして「後期高齢者」になってしまったのですから。余生は幾ばくもなかったという意味だったでしょう。ギリシア神話における「パンドラ」という女性が、禁を犯して開けた箱には「ありとあらゆる災厄の種」が封じ込められていた。パンドラを見初めたエピメテウス(プロメテウスの弟)はパンドラを妻にします。まるで「爆弾」と結婚したようなもの。ここ、ギリシア神話でも、女性は呪われたものとして扱われています。旧約聖書の「アダムとイブ(エヴァ)」の寓話に比肩されるでしょう。(右写真:楽天ショップで¥46.440)

 見るな、開けるなといわれれば、どうしても見たい、開けたいのが、人間の弱さであり欲望なんでしょうね。「パンドラ」は神々の使者だったということです。とても意味深です。誘惑に駆られて箱を開けた途端、中から白煙ではなく、あらゆる病苦、災難が飛び出してきました。つまりは「楽園追放」「楽園崩壊」を迎えてしまったというのでしょう。パンドラは慌てて箱の蓋を占めたが、時すでに遅かった。よく言われるように、箱の底には「希望」だけが残されたという。これもまたきわめて暗示的です。以来人間の世界は「深重の海」を化したままでした。

 ここで言われる「希望」とは何でしょうか。ギリシア語では「「ἐλπίς」(エルオイス)、それを英語圏では「hope」と言い換えてきました。金を犯した結果、あらゆる災厄の種が地上に噴出され、その後の人間界は不運や不幸の歴史を刻んできましたが、さいごには「希望」だけは残っているので、…というのでしょうが、果たしてどうでしょう。ぼくはとても悲観的です。「希望」とは「あることの実現をのぞみ願うこと。また、その願い」、あるいは「将来に対する期待。また明るい見通し」(デジタル大辞泉)とあります。「こうなるといいなあ」という願いや望みであって、そうなるかどうかは不分明です。よく「希望」に対して「絶望」を並べます。ぼくに言わせれば、希望は1で、絶望は0です。ゼロかイチ化、そういうことでしょう。望みが絶たれているか、微かなの望みがあるか。望みというのは、希(のぞ)みです。「 滅多にない。『希少・希代/古希』」(同上)つまりは「稀(まれ)」という意味でしょう。

 「望するな」、「希望があるぞ」というのでしょうが、どこに違いがあるのかと、ぼくは考えます。ここが大事なところですね。(この先は別の機会に)

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〇 パンドラ(ぱんどら・Pandora)= ギリシア神話における地上最初の女。プロメテウスが天上の火を盗んで人間に与えたのを怒ったゼウスは、仕返しのため人間に災いをもたらせようと、ヘファイストスに命じて泥から人間の女をつくらせた。神々はこれにさまざまな性格や技量を与え、飾り物もつけて、プロメテウスの弟エピメテウスのところへ連れていかせた。パンドラとは、「神々からすべての贈り物を与えられた女」の意とも、「すべての神々からの人間への贈り物」の意とも解釈される。エピメテウスは、かねてより兄プロメテウスからゼウスの贈り物を受けないよう戒められていたにもかかわらず、美しいパンドラを見るとそれを忘れ、妻にしてしまう。こうしてゼウスは家の蓄えを片っ端から食い尽くす女という種族を人間界へ送り出し、人間どもに災いをまき散らすことができた。またパンドラは、神々から甕(かめ)(または手箱)をもらってきた。その中にはあらゆる災いや害悪が詰まっていたので、彼女は見てはいけないと忠告されていたが、好奇心から開けてしまい、それらはたちまち四方に飛び散った。このときから人類は、さまざまな病苦と災難などの不幸にみまわれることになる。パンドラはあわてて蓋(ふた)をしたが、その中にはむなしい「希望」だけが残ったという。(日本大百科全書(ニッポニカ))

〇 パンドラの箱 = [由来] ギリシャの詩人、ヘシオドスの「仕事と日」に出てくる話から。太古の昔、人間たちは、神、プロメテウスによって火を使うことを教えられました。これによって人間たちの暮らしは豊かになりましたが、同時に、火を用いて争いをするようにもなりました。そこで、全能の神、ゼウスは、人間たちを懲らしめるために、パンドラという女性に箱(本来は壺)を持たせて、人間界へと送り込みます。絶対に開けてはいけないと言われていたその箱を、好奇心にかられてつい、開けてしまう彼女。すると、中から疫病、犯罪、悲しみなどなど、ありとあらゆる災いが飛び出してきました。慌てたパンドラが箱を閉めた結果、箱の中には「希望」だけが残された、ということです。

[解説] ❶火の使用は科学技術の源。技術が発展すると災いも広がっていくという、現代の私たちが直面している大問題が、紀元前八~七世紀のヘシオドスによって、早くも語られていたのは、とても興味深い事実です。❷現在では、「パンドラの箱を開ける」の形で、「災いを招くきっかけを作る」ことを指してよく使われます。(故事成語を知る辞典)

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 アンソロCEO、AI業界に開発減速要求【ニューヨーク共同】人工知能(AI)を開発する米アンソロピックのアモデイ最高経営責任者(CEO)は12日までに自身のウェブサイトで「われわれはAI開発を遅らせなければならない」と述べ、AI業界全体に開発の減速を促した。悪用リスクなどを理由に挙げた。(共同通信・2026/09/13)

 米オープンAI、開発減速を検討か【ニューヨーク共同】米ブルームバーグ通信は10日、対話型人工知能(AI)「チャットGPT」開発を手がける米新興企業オープンAIが、最先端のAI開発を減速させる検討に入ったと報じた。(共同通信・2026/09/11)

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