天之道、不争而善勝、… 天網恢恢疏而不失

 ロシアのP大統領が択捉島を訪問した際に、「強く抗議する」と常套句を発表した首相でした。国益を第一になどとは、どこを探しても言えた義理ではないのが、この首相の正味・正体でしょう。ICC所長に対する米大統領の「制裁」云々の発言は、この大統領にしてこの発言ありと見逃していいはずもない。「世界中に平和と繁栄をもたらせるのはドナルド」だけと、三月に媚態を振りまいて、言ってのけた日本首相、今般は大統領に何というのかと、誰もは期待していないでしょう。外務省が発表した「報告」は、実にこの国らしい、恐る恐るアメリカに物申した風を装っていて、誠に情けないものだった。日本はICCをいくつかの観点で支持してきた。だから今回のアメリカの「制裁措置」は「大変残念です」(the announced measures are very unfortunate.)と外務省は発表した。この単語(「残念な(unfortunate)」はどういう意味があるのでしょうか。「不運でした」、「アンラッキーだったね」とでも言っているように、ぼくには見えます。

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【斜面】最後の砦 司法試験に合格後の修習中。検察官になることを決めたら、修習生の仲間数人に説得された。「(権力側になるのは)やめろ」。大勢で囲み翻意を迫るやり方に「卑怯(ひきょう)だ」と反発した。「法曹は何事にもフェアであるべきだ」と思った◆国際刑事裁判所(ICC)の赤根智子所長にとって、力による無理強いへの思いは同じなのだろう。ウクライナからの子ども連れ去りで、3年前にロシアのプーチン大統領に逮捕状を出した。ガザ攻撃ではイスラエルのネタニヤフ首相に同様に発付した◆大国の反発が予想されても「どこの国の誰でも同じ審査をして逮捕の理由があるか判断する。ためらいはなかった」。大阪弁護士会の7月末のインタビューで語っている。戦争犯罪などを行った個人を国際法の枠組みに基づき訴追するICCは、法の支配の「最後のとりで」とも◆逮捕状への反応は苛烈だ。ロシアは赤根さんらを指名手配。イスラエルを支援する米国はICC裁判官らを次々に制裁対象とし、18日に赤根さんの制裁に踏み切った。「国家主権への攻撃」とする主張はガザの惨状を前にすれば説得力などないに等しい◆ICC解体も宣言する米国は政府関係者や米兵の訴追を懸念しているとされる。ICC本部があるオランダやドイツ、EUは米国を強く非難する声明を出した。日本は日米関係を意識し「大変残念」だけ。法の支配は日本が国際社会で生きるよすがでは。座視して失うものの大きさを思う。(信濃毎日新聞・2026/08/21)

【春秋】揺らぐ国際法のとりで 2023年、ウクライナ侵攻を巡り国際刑事裁判所(ICC)はロシアのプーチン大統領に逮捕状を出した。反発したロシアはICCの裁判官、赤根智子さんらを指名手配した▼「裁判官は仮に1人が死んだとしても、いくらでも代えが利くものです」と強い覚悟を語っていた赤根さんは翌年、ICCの所長に就いた。ICCは戦争犯罪や人道に対する罪を犯した個人を裁く常設の国際法廷だ▼かねてトランプ米政権は、イスラエルのネタニヤフ首相にも逮捕状を出したICCを敵視してきた。今回、ついに制裁は所長にまで及び、裁判官18人のうち9人が制裁の対象となった▼制裁を受ければ米企業関連の情報通信サービスは停止される恐れがあり、送金やカード決済にも支障が出る。職務と日常生活への圧力である▼赤根さんは著書「戦争犯罪と闘う」に記した。もし大国の思惑でICCが解体されてしまえば、世界は勝者が敗者を裁く時代へ戻りかねない。処罰されるべき者が正しい手続きで裁かれることが、世界の平和につながる。それこそが平和憲法を持つ日本が目指すところである、と▼オランダにある赤根さんの執務室には「大象無形(たいしょうむけい)」と書かれた書が掛かっている。大いなるものは見える形を持たない、と説く老子の言葉だ。目に見えない法は、世界が力の支配に傾くことを食い止めてきた。赤根さんを、国際法のとりでを孤立させてはならない。(西日本新聞・2026/08/21)

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 「明道若昧、進道若退、夷道若纇。上徳若谷、太白若辱、廣徳若不足。建徳若偸、質真若渝、大方無隅。大器晩成、大音希聲、大象無形」(老子「道徳経」第四十一章)                                                                     「天之道、不争而善勝、不言而善応、不招而自来、繟然而善謀。天網恢恢疏而不失」(同上・第七十三章)

 ここは「道徳経」について駄弁る場ではないので、無駄話はしません。世界の大国が「無法」状態を常態化させようとしつつある中、世界の全体に「正義」や「秩序」をいきわたらせるためには、目にも耳にもとらえきれない、法網(天網)を使うほかないのでしょうが、悪事に余念のない不正義専一の政治家たちには、目に見えず、耳に聞こえないものは「無きに等しい」とばかりに乱暴狼藉を働くのに余念がない。ICC及びその代表の危機・危篤に対して、この国は何をすべきかは明らかなはずだが、それができないままで、屁理屈を探すばかり。あるいはまた、どこに向かってだか知らないが、首相は「遥拝」をするのでしょうか。

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【素粒子】おや。赤根所長に累が及ばないように沈黙していたはずでは。いざ累が及ぶと「制裁は日本に向けられたものではない」と来た。つまりは米国が怖いのか。首相が約束した力強い支援はいつやるの。 イランの最高指導者を殺害し、ベネズエラの大統領を連れ去ったのはどこの国か。グリーンランドの割譲を求め、カナダを51番目の州と言い放った大統領はだれか。 米国こそ、他国の主権に対する許容できない脅威になっている。だから国際刑事裁判所が自国にとって許容できない脅威に見える。(朝日新聞・2026/08/20)(右写真:「世界中に平和と繁栄をもたらせるのはドナルドだけ」)(2026/03/19)

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 「米ICC制裁に衝撃 日本政府、対応に苦慮 トランプ米政権が国際刑事裁判所(ICC)の赤根智子所長を制裁対象に追加したことを受け、日本政府に衝撃が走った。自国出身の国際機関トップが唯一の同盟国から標的にされる展開を想定していなかったためだ。日本政府はICC支持を継続する構えだが、正面切って米国を批判すれば同盟関係に響きかねず、対応に苦慮している。(以下略)」(左写真:記者団の取材に応じる高市早苗首相=19日午後、首相官邸)(時事通信・2026/08/19)

国際刑事裁判所(ICC)に対する米国の制裁(外務報道官談話)1今般、国際刑事裁判所(ICC)の裁判所長である赤根智子判事が、米国の制裁措置の対象として新たに追加されました。2 我が国は、国際社会における最も重大な犯罪の処罰と撲滅、法の支配の徹底のため、常設の国際刑事法廷であるICCを一貫して支持してきています。このような立場から、今回の措置は大変残念です。(”Japan has consistently supported the ICC, which is a permanent international criminal court, in its efforts to prosecute and punish the most serious crimes of concern to the international community and to uphold the rule of law. From this standpoint, the announced measures are very unfortunate.”)3 我が国としては、引き続き、関係国等と意思疎通を取りつつ、国際社会における法の支配の強化に取り組んでいく考えです。(令和8年8月19日)

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◎ 国際刑事裁判所(こくさいけいじさいばんしょ)(International Criminal Court: ICC)= 1998年の「国際刑事裁判所に関するローマ規程」Rome Statute of the International Criminal Courtに基づき設置された常設の国際司法機関。ジェノサイドや戦争犯罪,人道に対する罪,侵略の罪などで告発された個人を審理・処罰する。個人の刑事責任を問う国際裁判は過去にも第2次世界大戦後に,国際軍事裁判(ニュルンベルク裁判)および極東国際軍事裁判(東京裁判)が開かれている。2002年7月1日,60ヵ国がローマ規程を批准し発足した。所在地はオランダのハーグ。/ICCは国家間の争いを審理する国際司法裁判所 ICJとは異なり,個人を訴追する。国内の裁判所が対応できない場合に,最も重大な罪を犯した個人を起訴に持ち込む最終手段として設立された。訴追対象は 2002年7月1日以降に締約国国内で発生した事案あるいは締約国の国民によって引き起こされた事案である。/ICCが初めて取り扱った事件は,コンゴ民主共和国で子供兵士(チャイルドソルジャー)を徴募・採用したとして告発されたトマス・ルバンガをめぐるもので,ルバンガは 2006年1月に逮捕状が出されて同 3月にハーグに移送され,2012年3月には有罪判決がくだり,同 7月に禁錮14年の刑が言い渡された。/ローマ規程には約 140ヵ国が署名したものの,アメリカ合衆国は 2002年までに批准の意思がないことを通告,ロシア,中国も非加盟である。日本は 2007年10月1日に加盟。2024年2月現在,批准をすませた締約国は 124ヵ国。(ブリタニカ国際大百科事典)(左図表は東京新聞・2026年8月20日)

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