「病は木から」、それってほんと?

【日報抄】休日に薬局に立ち寄った。見渡すと、2千円を超える高い目薬の棚が空になっていた。目のかゆみに悩まされている人が相当いるに違いない。かゆみに効く目薬は他のものも残りわずかだった。つらさから一刻も早く解放されたい心理が見えてくる▼環境省は今年の春に花粉が多く飛ぶことを早くから予測していた。スギの雄花を調べると飛散量が見通せるらしい。本県を含む北陸や関東は「極めて多くなる見込み」と公表していた▼「極めて」というのは「2021年までの10年間の最大値を超える」レベルだという。かなり手ごわそうだ。解説によると、前年の夏の日照時間が長く気温が高いと、飛散する量が多くなってしまう。夏の好天がうらめしく思えてくる▼大量飛散の予測は正解だったようで、くしゃみがあちらからも、こちらからも聞こえてくる。「きょうは多いみたいですね」。量を敏感に感じ取って、いたわり合うのがあいさつ代わり。電車内では、どこのクリニックがお薦めか、情報交換で盛り上がる姿があった▼マスクを着け続ける人が多いようだが、ウイルスへの警戒でなく、花粉症対策のためにやむなく、という人も多いのではないか。「春が嫌いです」という鼻声が、なんともかわいそう▼一粒ならなんてことはない小さな花粉も、束になって向かってこられるとかなわない。環境省の予測に添えられた一文がわずかな救いだろうか。「飛散が多かった年の翌年は量が減る傾向がある」。望むのは心軽やかな春だ。(新潟新聞デジタルプラス・2023/03/24)

 花粉症は勢いを削(そ)がれることなく、さらに「スギからヒノキへ」のバトンリレーもなされて、五月ころまで続くという気象庁の予報が出ています。天気予報が主務の気象庁では、かなり頻繁に花粉「飛翔情報」を発表して、警戒を呼びかけている。この不愉快な症状に関しては、駄文収録でも何度か触れています。ぼくの記憶が正しいなら、京都にいる時代(高卒まで)には「花粉症」の罹患者を見たことがなかった。当時も杉や檜は植林されていたのですから、考えてみるまでもなく、どんな因果がそこにあるのか、よくわからないままに半世紀以上が経過しています。国土の七割近くが山林であり、そのまた何割かは杉や檜の林だから、それらの花粉は爪に浴びていたはずだし、それが原因で花粉症が、毎年のように、季節的に起こったというのは、狭いハンデの経験でしたが、知りませんでした。

 ぼく自身、四十になるまでは未経験だった。ところが、不惑を過ぎた頃から、軽い症状が現れた。生活に支障を来すほどではなかったが、年齡とともに症状も変化し、この数年ではかなり重いと感じるようになった。花粉症は「アレルギーの一種」で、いろいろな原因が上げられ、それに応じて「処方箋」も示されてきた。つい最近では「免疫療法として、スギ花粉抗原エキスを舌下または皮下に繰り返し投与することで抗原に慣れさせる方法があり、原因に対する根本的な治療法となりえる」(下掲の「ニッポニカ」)とされている。なんのことはない、スギ花粉を体内の取り入れ、それに対する免疫(抗体)を作るというのです。(とても高価な薬ですな)

 高校卒業までは花粉症なんて知らなかったのは、ほとんどの人が日常生活において、さまざまな生活資材に木製品を使用しており、特に杉や檜が多かったこともあり、十分に体内に抗体ができていたからであるとされています。ぼくが四十歳頃になって「花粉症」罹患者になったのは、それまでに蓄積されていて有効に作用していた「抗体」の効力が消滅したからだともいえます。花粉症治療のために医者にかかったことはない。様子が知れていたからです。根本的な治療法がないということ、一時しのぎで済まされてしまうこと、などでした。その理由は単純です。年を追って、花粉症被害者が増加の一途を辿ってきたのは、治療の効果が決定力を欠いていたからです。季節性のものということははっきりしていたので、医者には行かなかった。

● 花粉症(かふんしょう(pollinosis)=花粉に対するアレルギー反応により、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎が引き起こされる現象。おもな症状は、鼻ではくしゃみ、鼻水(鼻漏)、鼻づまり(鼻閉)、眼(め)ではかゆみである。花粉が鼻腔(びくう)粘膜、結膜に付着することにより発症するため、原因となる花粉が飛散する季節にのみ症状がみられ、「季節性アレルギー性鼻炎」ともいわれる。 原因と対策 日本において原因となる花粉でもっとも多いのはスギ花粉であり、2019年(平成31)の調査では全人口の39%の人に症状がみられるとされているものもある。どの季節に症状がみられるかによって、原因となる花粉の見当をつけるが、スギは2~4月、ヒノキは3~5月、カモガヤは5~6月、ブタクサ、ヨモギ、カナムグラは8~10月、シラカンバは4~6月がおもなピークである。地域による差もあり、スギは北海道、南九州、沖縄を除く全国でみられ、シラカンバはおもに北海道でみられる。/ 対処法としては、花粉が鼻や眼に付着しないように、マスクやゴーグルをすることなどがある。スギ、ヒノキの花粉は遠くまで飛散するため、森や林に行かなくても影響がみられるが、雑草の花粉は飛散距離があまり長くないため、生えている場所に行くことを避けるという対策も有効である。 合併症 花粉症がある場合に、果物や野菜に含まれる類似成分に対してアレルギー反応がおこることがある。口の中やのどに限局したかゆみや違和感である場合には、口腔アレルギー症候群(oral allergy syndrome:OAS)といわれる。また、これは花粉症のある人にみられる現象であるため、花粉‐食物アレルギー症候群(pollen-food allergy syndrome:PFAS)ともよばれている。 治療 花粉症の薬物治療では、おもに内服薬と点鼻薬、点眼薬が用いられる。内服薬としては、くしゃみ、鼻水、眼のかゆみに対しては抗ヒスタミン薬、鼻づまりに対しては抗ロイコトリエン薬がある。点鼻薬はステロイド薬が中心である。点眼薬は抗ヒスタミン薬、メディエーター遊離抑制薬が中心である。症状が強い場合にはステロイド点眼薬、免疫抑制点眼薬を選択できるが、ステロイド点眼薬は眼圧の上昇に注意が必要である。免疫療法として、スギ花粉抗原エキスを舌下または皮下に繰り返し投与することで抗原に慣れさせる方法があり、原因に対する根本的な治療法となりえる。(ニッポニカ)

自覚症状がなくても油断は禁物 花粉症は、アレルギー性鼻炎の1つで、くしゃみや鼻水、鼻づまり、目のかゆみなどが主な症状です。日本において花粉症を引き起こす植物はおよそ50種類ありますが、スギ花粉症患者がもっとも多く、人口の約16%のおよそ2000万人いるとされています。近年では、ヒノキ花粉症やその他の植物の花粉症患者も増えています。/ また、これまで花粉症にかかったことがないのに、急に発症したというケースも珍しくありません。これは、毎年花粉を体内に取り込んでいるうちに、花粉に抵抗しようとアレルギーを引き起こすIgE抗体と呼ばれる物質の量が、その人にとってアレルギー反応を引き起こす一定の許容量に達した(感作が成立)ためです。/ 一度感作が成立すると、体内に侵入してきた花粉をIgE抗体が異物とみなし、免疫反応を起こして花粉を追い出そうと攻撃します。つまり、花粉症は身体に備わっている生体防御システムが過敏にはたらくために、くしゃみや鼻水、鼻づまりといった症状を起こすのです。(以下略)」(全国健康保険協会:https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g5/cat510/h26/270201/)(以下の図も)

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 今年は早い段階(二月初旬頃)から、目鼻に症状が現れました。これまででもっともきつい症状だと思われます。それでも医者にはかからず、市販の目薬とティッシュで対処している。「休日に薬局に立ち寄った。見渡すと、2千円を超える高い目薬の棚が空になっていた」というコラム氏の指摘の通り、これまでのものよりも数倍も高額な目薬を使っています。高価(効果)覿面(てきめん)とはいかないのは、市販薬の常です。だから医者に行くとべしとなるか、そうなるとは思えない。医者に言われることと、施される治療(薬療法)は知れているからです。このまま、季節が過ぎるのを待つ他ないという気にもなる。そこへ、気象庁は、スギからヒノキへと花粉のリレーが始まったという予報を出した。

西日本のエリアでは、まもなくスギ花粉のピークは終了見込みですが、今年は飛散量が多いため、ピークが過ぎても油断はできません。ヒノキ花粉も九州・中国・四国の一部ではすでに飛散開始しており、3月下旬から4月中旬にかけて各地でピークが続くでしょう。東日本では、3月いっぱいはスギ花粉のピークが継続し、この先も3月下旬にかけて気温が平年より高い予想のため、東京ではヒノキのピークが例年より早い3月下旬から始まる見込みとなり、3月下旬はスギ花粉とヒノキ花粉のどちらにも注意が必要です。  今シーズンの東京・大手町の飛散量の様子を過去2年と比較したところ、今シーズンの飛散開始日は、2022年に比べると2週間早くなりました。2022年は飛散開始が遅かったものの、その後ピークまでの立ち上がりが早かったのが特徴です。一方で、今シーズンは2月末から3月頭にかけて、急激な大量飛散となったことで、3月9日時点で2021年、2022年のスギの総飛散量を超えています。(※スギ花粉のピーク定義:50個以上/㎠が2日連続した初日がピーク開始日)(気象庁:https://tenki.jp/pollen/expectation/)

 「西日本からヒノキ花粉の飛散が増えてきており、東京など関東南部でもスギ花粉からヒノキ花粉のシーズンを迎えました。/ ヒノキ花粉で症状を発症する方は万全な対策が必要です」(ウエザーニュース・2023/03/24 )(➔):https://weathernews.jp/s/topics/202303/230285/)

 拙宅は雑木林の真ん中にあります。その森林の一角には杉と檜が植林されている。林の一部を住宅用に開発したといった塩梅ですから、スギとヒノキの花粉なら、「売るほどあります」といいたいところ。少しでも窓を開けると、かならず鼻や目をやられ、「くしゃみ」の連発です。スギの花粉にはアレルギー反応が起こることは自覚しているが、同じ種類のヒノキはどうか、まだぼくには区別がつかないままです。檜でも花粉症が起こるなら、この状態は五月ころまで続くことになります。花粉が飛散しまくる劣島のある地域では、すでに「夏日」が到来しています。WBCで浮かれている間に、冬と夏を同時に経験するという「未曾有の事態」が生じています。  

 アレルギー源(アレルゲン)に処方箋が書けるのかどうか。すなわち、有効な対処法があるのか。ぼくにはわからないが、素人療法として、まず逃げないこと。後ろめたく感じないで、堂々とま向かっていけば、やがて「抗体」(免疫機能)も作られるはずです。これは「対人間」にのみ当てはまる方法かどうか、野蛮なことではあれ、ぼくは試しているのです。

 世間ではよくいうではないですか、「病は木から」と。あるいは「虎穴にいらずんば、虎子を得ず」「Nothing venture, nothing gain.」とも。

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投稿者:

dogen3

 毎朝の洗顔や朝食を欠かさないように、飽きもせず「駄文」を書き殴っている。「惰性で書く文」だから「惰文」でもあります。人並みに「定見」や「持説」があるわけでもない。思いつく儘に、ある種の感情を言葉に置き換えているだけ。だから、これは文章でも表現でもなく、手近の「食材」を、生(なま)ではないにしても、あまり変わりばえしないままで「提供」するような乱雑文である。生臭かったり、生煮えであったり。つまりは、不躾(ぶしつけ)なことに「調理(推敲)」されてはいないのだ。言い換えるなら、「不調法」ですね。▲ ある時期までは、当たり前に「後生(後から生まれた)」だったのに、いつの間にか「先生(先に生まれた)」のような年格好になって、当方に見えてきたのは、「やんぬるかな(「已矣哉」)、(どなたにも、ぼくは)及びがたし」という「落第生」の特権とでもいうべき、一つの、ささやかな覚悟である。(2023/05/24)