星空に両手をあげて 思ってることを 話そうよ  

 【くろしお】徒歩はボランティア 日中はまだまだ暑いものの、夜はかなり過ごしやすくなった。ちょっと長めの散歩をと思い立ち、普段は車で往復する会社まで歩いてみた。およそ4・5キロ。混んでいない夜間だと車で10分かからない距離だ。◆大淀川に架かる橋を越えてひたすら歩く。途中でけっこうきつくなり、普段の運動不足を痛感する。1時間を目標にしていたのだが、わずかに及ばなかった。昔は楽々1時間を切っていたのだが…。歩く速度も遅くなれば筋肉痛が出るのも遅くなり年齢を感じる。◆車と歩きでは、考えることも違う。運転中よりも歩いているときの方が「思索」に近い気がする。徒歩は運転ほど集中力を必要としないので、より深く物ごとを考えられるのだろう。今回長距離(というほどでもないが)を歩いたのは、きょうが「徒歩の日」と知ったから。◆と(10)フォー(4)で「徒歩」なのだそうだ。むろん単に記念日だからというだけで慣れないことをしたのではない。宮崎生まれの記念日だったからである。東京から宮崎市に移り住んだ貞原信義さんが24年前に「健康のために徒歩を習慣づけよう」と提唱。日本記念日協会にも認定されている。◆「1人でも車に乗らなければ渋滞は減る。健康なら医療費もかからない。歩くことは1人でできるボランティア」とかつて語っていた貞原さん。まさにその通り。ここは「分かっちゃいるけど…」などと四の五の言わず、少しでも歩く時間を増やすとしよう。(宮崎日日新聞・2022/10/04)

 夏に入る頃から、毎日のようにやっていた「ウォーキング」ができなくなった。理由はいくつかありますが、子猫がやたらに増えて、家をあけることができなくなったから、それが第一の理由です。数年がかりでマークをしている野良くん(♀)が家の隣の雑木林で産んで、まだ目が開かないうちに、悪天候で家の縁側に連れてきた。そこにダンボールを置き、仮の住処(すみか)にしたが、やがて家の中に入りだした。その数、なんと八匹。愕然としましたね。すでに先住しているのと合わせると二十に一つ欠けるだけ。これまでにも何度もお産をしたので、多くの子猫を友人知人に、なんとかして受け入れてもらってきました。これまでの数だけでも相当数になります。好んで猫を増やしているのではなく、なんとか避妊手術をと思いながら、逃げられてきました。これが最後と覚悟の上で、猫の捕獲に入っているのです。問題は、この新入りたちをどうするか、まだ思案は続いている。この新入り以外は「すべて手術」は済ませた。ところが、この子猫の産みの親が曲者で、なかなか懐(なつ)いてくれない。ぼくもかみさんも、何度も噛まれたり引っかかれたりしている。もう、完全に振り回されてきました。(これも来週で終わるのだ!)

 子猫が生まれる前も、病院へ連れて行くために「洗濯ネット」を用意して捕まえようとしたが、警戒して、しばらくは家に寄り付かなくなった。その後にやってきたが、かなり大きなお腹になっていた。後先を考えなかったわけではないが、これを最後の「出産」と、人間の側で勝手に考えて、猫の好きにさせていたら、この始末。(昨夏は酷暑のせいだったか、同じような時期に「流産」していたので、少し油断していた)来週の木曜日に、動物病院に予約を入れてある。何が何でも「避妊手術」をと、医者とも相談している。先週も連れて行こうとして抵抗され、焦らないでゆっくり構えよう、それで来週の木曜日に決めている。

 以上のようなことを「歩きながら」考えることはできない。ぼくは昔から「歩く」ことは「考える」ことと、幸田文さんの経験に忠実でした(彼女は女学校へ、往復五時間以上もかけて通学し終えたという。千葉県の市川から、都心まででした)。山登りの最中には頭は真っ白というか、ゆっくりとなにかを深く考えることはできなかった。走っているときも当然でしょう。マラソンランナーたちがいろいろ言っていますが、「考える」という点で、集中しているなどとは聞いたことがありません。「くろしお」の記者は「徒歩の日」に因(ちな)んで歩き出されたと言う。いいですね。ぼくは杜甫であろうが李白であろうが、歩きたいのは山々(道々)です。しかし、猫の面倒を見なければと、なかなか外出もままならないのです。もちろん、コロナ禍も閉門蟄居の一因ではありますが、少しでも手がかからなくなるのを待望しつつ、「歩くは考える」を実践したいと願っている。もちろん、そういったところで、体を動かしていないわけではない。それこそ「猫の額」ほどの庭の草取りや植木の剪定など、なかなかに時間も手間もかかります。一ヶ月前にようやく刈りとったのに、もう次の草が成長している。恐らく、年に四回は草取りや庭木の剪定に時間と体を取られます。それがいい運動かどうかわかりません。 

 しかし、草を取り除く作業も無駄ではないのであって、その作業中にも「考える」というはたらきはしているんですね。除草剤は使わない、草取りが面倒だからと防草シートを使わない、繰り返し、伸びた草を刈る。伸びたー刈った、伸びたー刈った。根こそぎにはしない。球根性や地下茎性のものは可能な限りで除去しますが、その他の草は刈り取るだけ。根は残る。それが土を固くしない理由になるからです。また雑草を肥料代わりにして残しておく。そうすると、ミミズがたくさん出てきて土地を耕してくれるのです。というわけで、歩く時間の代わりに野良仕事が「考える」手伝いをしてくれる。しかし困るのは、草を取るのに腰をかがめていると「蚊」に襲われる。どういうわけだか、ぼくは家の内外で蚊に刺されて困るほどです。

 また、草刈り・植木剪定の時期が来ました。それが終われば、猫も大きくなり、家を留守にして、散歩というか「徒歩」に出かけることができます。そのせいかどうか知りませんが、最近は、夜、空を見上げることが多い。このところ晴天続きでしたから、夜空に星が瞬いているのがよく見え、なんだか嬉しくなる。いろいろな原因で、空気がきれいになったのでしょうか、星の数がとても多く見えるのです。蚊に刺されながらの「星空に両手を上げて ♪」です。(*「星空に両手を」島倉千代子・守屋浩 https://www.youtube.com/watch?v=rTi8fS81TA8

 この歌(昭和三十八年発売)はぼくの高校生の時に流行りました。当時はあまり関心がありませんでしたが、歳を取ってから、この何でもないメロディーに惹かれるのですから、歳は取るもんですね。まあ、日本版「星に願いを」ですかな。(*Disney’s “Pinocchio” :When you wish upon a star Makes no difference who you are Anything your heart desires Will come to you)(https://www.youtube.com/watch?v=5f7UxhzAwGI

 時代が悪いというのも変ですが、いろいろと考える種はあるのです。でも、気を許すと、とんでもないことを考えている。いや怒りや憤りが湧いてくる。もう少しロマンティックなと思って、「星空に両手を」が蘇ってきたんですね。ということは、戦後もしばらくは、のんびりはしていなかったけれど、まっすぐに生きようとしていたともいえます。つまりは、上を見ながら歩き、空を見ながら生きていたんでしょうね。他人の裏をかくとか、他人を騙す・裏切るということがよくないことという、素朴な社会正義のようなものが存在していたのかな。

 西沢爽さんの詞がいいですね。互いが素敵な人間同士でなければ、こんな歌も歌えないし、歌っても心は晴れないでしょうね。特に三番、「星空に 両手をあげて 思ってることを 話そうよ」と。一体、この季節はいつか。夏だったら蚊に刺されてれて大変だし、冬空だったら、風邪をひくでしょうね。でも、「あなたと私」は萌え(燃え)ているから、大丈夫か。という「甘くて、温かい歌」でした。

守屋浩・島倉千代子「星空に両手を」 
  昭和38年9月発売
  作詞:西沢爽 作曲:神津善行
 一 星空に 両手をあげて       三 星空に 両手をあげて
   この指を 星で飾ろう         思ってることを 話そう            
   君に可愛い あの星を         二人のことを あの星に 
   あなたに青い あの星を        未来のことを あの星に
   宝石なんて なくっても        あの星空が しあわせな         
   こころは夢の エメラルド       あしたをきっと つれてくる       
   星空に 両手をあげて         星空に 両手をあげて 
   この指を 星で飾ろうよ        思ってることを 話そうよ   

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 「心が歩いて行くことが、考へる、思ふなのだ」という幸田文さんの、珠玉とも言えるエッセイの触りの部分を。

 「手足を動かしてするといふことと、頭でじつと考へるといふことは、二ツの違つたことに思ひがちな習慣がある。けれどもこれは結局するといふ一ツのことになる。考へるというふことをしてゐるのであつて、するといふことを手足を動かしてすることにきめるから、じつと考へることがすることと別物に思へるだけの話である。だからすることは頭の部分と手足の部分と二ツあるのだ。目に見えるのと見えないのとの相違だけである。考へるとか思ふとかは、現在の一点から動いて、高い丘へ広い野へ低い谷へと一歩一歩歩きだして行く心なのだ。心が歩いて行くことが、考へる、思ふなのだ。」(幸田文「歩く」1956年)

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