人のなす罪より低し雲の峰

 【滴一滴】〈おうい雲よ/ゆうゆうと/馬(ば)鹿(か)にのんきさうぢゃないか/どこまでゆくんだ/ずっと磐(いわ)城(き)平(たいら)の方までゆくんか〉▼山村暮鳥の有名な詩だ。青い空を見上げると、のんびりと空を流れていく雲。思わず親しげに声をかけたくなったのだろう▼暦の上では秋を迎えたとはいえ、暑い夏が続く。夏空を代表する風景と言えば「入道雲」だ。もくもくと立ちのぼる様子が、仏門に入ったお坊さん(入道)の丸刈り頭や、妖怪の大入道に似ていることから名付けられたとされる▼積乱雲と同じと勘違いされがちだが、厳密に言えば、入道雲は雄大積雲に分類され、積乱雲に成長する前の段階だ。雄大積雲の上部に髪の毛のような筋が見られるか、雷活動を伴うようになったら積乱雲に分類される(荒木健太郎著「すごすぎる天気の図鑑」)▼ある研究によると、非常に発達した一つの積乱雲に含まれる水の量は最大で25メートルプールの1万杯に相当するという。一般的な家庭の浴槽なら3千万杯。積乱雲が次々に発生して連なり、同じ地域に大量の雨を降らせる線状降水帯の怖さを改めて痛感する▼〈投げ出した足の先なり雲の峰〉小林一茶。ごろんと寝転んだ足の先に、山のようにそびえ立つ入道雲。その雄大さが心地よい。もっとも現代は「おうい雲よ、極端な豪雨は勘弁してくれよ」と呼びかけたくもなる。(山陽新聞・2022/08/16)

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● 雲【くも】=微小な水滴または氷晶からなる雲粒(くもつぶ)が集まって大気中に浮かんで見えるもの。水滴の場合,普通半径10μm程度のものが1cm3に50〜500個浮かんでいる。赤道地方で高度約18km,極地方で約8kmが分布の上限で,真珠雲夜光雲などの特殊な雲だけが20〜100kmの超高空に発生する。大気中の水蒸気が凝結して雲粒となるためには,空気が露点温度以下に冷却され飽和または過飽和の状態になることが必要である。この冷却は主として各種の上昇気流中で行われ,空気塊が気圧の低い高層に移動する際の断熱膨張により冷却する。地表面の空気は,気温をt℃,露点温度をτ℃とすると,h=125(t−τ)mの高度まで上昇すると飽和状態になり水蒸気が凝結して雲が発生する。この高さを凝結高度と呼び,地表面の空気が上昇して発生する雲の雲底の高さがこれで決まる。雲の成因となる上昇気流には,温暖前線,寒冷前線,低気圧に伴う大規模な暖気の上昇,台風や雷雲などでみられる垂直な熱上昇気流,山を吹き上る風,上空の気流の波に伴う小規模な上昇気流などがあり,それぞれの場合に生じる特有の雲形や雲の分布(雲系)を観測することによって大気の運動状態を逆に推測することができる。(マイペディア)

● 積乱雲(せきらんうん)(cumulonimbus)=雄大積雲の上部に鉄床雲(かなとこぐも)が生じたもの。記号Cb入道雲雷雲ともいう。大気の成層状態が不安定なときには、大気下層に発生した積雲が急速に上空に向けて発達し、雲頂が圏界面の近くまで達することがある。この状態を雄大積雲という。積雲の雲粒は水滴であるが、上空まで発達すると気温が下がり氷晶が発生する。小さな氷晶は上昇気流によって対流圏上部まで吹き上げられ、そこで水平に広がる。その部分を鉄床雲(鉄雲(かなとこぐも)とも書く)という。積乱雲の直径は10キロメートル、高さは、中緯度で8キロメートル、低緯度で16キロメートル程度である。激しい雨(夕立、スコール)または地表気温が0℃以下であれば雪を降らせる。ときとして、鳴、雷光を伴い、(ひょう)を降らせることがある。雲底は低く、暗く、乱れており、ちぎれたような雲(片乱雲(へんらんうん))を伴う。積乱雲の内部から冷たい空気が吹き下りて地表面に沿って広がることがあり、その先端にはアーチ雲とよばれるロール状の雲が発生することがある。(同上)

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 一茶の時代(1763~1828)は、もちろん、今よりも遥かに空気は汚れていなかったし、大気中の雲の輪郭もずっとくっきりとしていたに違いありません。当然ながら、そんな環境に生きていた「人心」が、今日の顚落状態にあったはずがありませんね。その一茶は、森羅万象、俳句に詠み込めないものはなかったと言ってもいいほど、ありとあらゆる事物を俳句に取り入れています。目下の話題である積乱雲(入道雲・雲の峯など)もその題材の代表例で、いくつもの作句があります。その中から、評価抜きで、いくつかを挙げておきます。

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・しづかさや湖水の底の雲の峰   ・すき腹に風の吹けり雲の峰   ・たのもしや西紅の雲の峰   ・人のなす罪より低し雲の峰   ・大の字に寝て見たりけり雲の峰   ・寝むしろや足でかぞへる雲の峰    (左の石碑の句 :涼風の淨土即我が家哉)                                                                                                                   

・投げ出した足の先なり雲の峰   ・早稲の香や夜さりも見ゆる雲の峰  ・涼しさよ手まり程なる雲の峰   ・湖へずり出しけり雲の峯   ・湖水から出現したり雲の峯   ・順々にうごき出しけり雲の峰                                                      

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 八月も半ばを過ぎました。ひたすら「豪雨」をもたらした台風8号、その被害たるや、秋田・青森をはじめ、静岡地方にも甚大な傷跡を残しながら、さらに次なる「積乱雲」の群生と襲来が危惧されています。このところやたらに耳目に届く「線状降水帯」なるものは、今に始まった現象ではありませんが、環境悪化の激化に伴って、その被害は尋常ではない災禍を示しています。政治の世界は「(旧統一教会という)線状降水帯」によって、ずぶ濡れ(水浸し)になっており、政治家も政党も「命の危険」にさらされているほどの悪状況であるにも関わらず、「この国を更に前進させる」という。口からでまかせをいう至芸は、僧侶と政治家の「十八番(おはこ)」だという世評があり、口当たりのいいことばかりを垂れ流して「功徳」の値打ち下堕落腐敗させているのです。それにしても、どうしてこうも無軌道に「嘘を付き」「虚言を弁ずる」輩ばかりが(といいたくなる)、政治屋になっているのだろうかと、不思議にも思わなくなっている自分の驚嘆しています。「嘘つきは泥棒の始まり」という俚諺を残して、元総理は逝った。その元総理に肖(あやか)りたい面々ばかりが、国政を食い物にし、そんな連中を性懲りもなく国政に送り込む、ぼくらもまた、罪深い過ちに懲りる気遣いがなさそうです。まさしく「(罪悪においては)一蓮托生」ですね。

 政治家も坊さんも、いわば「雲をつかむような話(a vague story)」の名人でもあります。雲にもいろいろありますが、このところ、つかんだ雲は「積乱雲」だったという埓のないことばかりではないでしょうか。つまりは「放埒」そのものであります。少しは、歴史に学び、あるいは歴史に恥じない、そんな当たり前の行動を取ってはどうか、取っても悪くはないんだが。いろいろな「先祖祭り・祀り」の続いたこのところ、ぼくは雲でも、積乱雲とは別種の雲に、やがては「瑞雲」に恵まれることを希っているのです。暗雲・風雲・雷雲はお断りするばかりだし、戦雲などはもってのほか。雲霞のごとくに議事堂に人は集まってはいますが、本当に助けを必要としている人には、まったくの音沙汰ない、それが現実政治の実態です。衆寡敵せず、これは実際のところでしょうか。

 歴史に学ぶということは、出過ぎたことをしない、出来もしないことを言い募らない、ようするに「謙虚」になりきること、それが政治家に限らずに、ぼくたちに求められているのでしょう。「不戦の誓い」は国家や政治家だけがなすものではなく、個々人が、いろいろな意味において、「不戦」「非戦」を肺腑に刻むことだと、ぼくは考えているのです。

 人のなす罪より低し雲の峰 (一茶)

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● 線状降水帯(せんじょうこうすいたい)=次々と発生する発達した複数の積乱雲が並ぶことで形成される、線状の積乱雲の集合体。厳密な定義はないが、気象庁では「次々と発生する発達した雨雲(積乱雲)が列をなした、組織化した積乱雲群によって、数時間にわたってほぼ同じ場所を通過または停滞することでつくりだされる、線状に延びる長さ50~300キロメートル程度、幅20~50キロメートル程度の強い降水をともなう雨域」と説明している。日本で起きた集中豪雨のうち、台風によるものを除いて、約3分の2が線状降水帯によるものであるとの調査もある。気象庁では、警報や注意報、天気予報等で用いる予報用語に指定していないが、報道発表資料や予報解説資料で用いる解説用語としている。/ 線状降水帯は、暖候期に発生し、大きな災害や集中豪雨が発生する要因となる。1990年代から日本の集中豪雨発生時に線状の降水域がしばしばみられることが指摘されていたが、この用語が頻繁に用いられるようになったのは、2014年(平成26)8月の豪雨による広島市の土砂災害以降である。/ 線状降水帯は、日本全国で発生しているが、なかでも九州と四国に多い。発生メカニズムは解明しきれていないものの、次のように考えられている。(1)多量の暖かく湿った空気が、およそ高度1キロメートル以下の大気下層に継続的に流入する。(2)前線や地形などの影響により、大気下層の暖かく湿った空気が上空に持ち上げられ、水蒸気が凝結し積乱雲が発生する。(3)大気の成層状態が不安定ななかで、発生した積乱雲が発達する。(4)上空の強い風により、個々の積乱雲が風下側へ移動して帯状に並ぶ。このメカニズムが持続すると、線状降水帯は長時間にわたってほぼ同じ場所に停滞することとなり、一つの積乱雲では50ミリメートル程度の雨しか降らせないのに対し、結果として数百ミリメートルの雨をもたらす。(ニッポニカ)

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