紅葉北ア涸沢 赤と青のコントラスト
標高約2300メートルの北アルプス涸沢(松本市安曇)で、紅葉が最盛期を迎えている。爽やかな青空が広がった5日、錦秋の涸沢カールと穂高連峰の雄大な眺めを大勢の登山者が楽しんでいた。
この日は朝から好天に恵まれ、初めて訪れた茨城県の根本慎二さん(62)は「青空と山と紅葉のコントラストが美しい。世界中の山々を巡ったが、涸沢の眺めは世界一」と感嘆の声を上げた。
山小屋「涸沢ヒュッテ」によると、今年はダケカンバの黄色が鮮やか。ナナカマドは真っ赤に色づく実の数がここ数年で最も多いという。今年は例年より1週間ほど早く紅葉が進み、現在はヒュッテ周辺が見頃。16日ごろまでは楽しめそうだという。秋の深まりとともに紅葉前線は標高を下げ、山裾に広がっていく。(ヘッダーの写真 紅葉が最盛期を迎え、真っ赤に色づいたナナカマドが彩る北ア涸沢カール=5日午前11時41分、松本市安曇)(信濃毎日新聞2021/10/06)
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上高地から涸沢に向かい、穂高を目指していたのは、もう何年前になるだろうか。ぼくは決して登山家ではなかったし、そうありたいと考えたこともなかった。いつでも時間を見つけて、友人と気軽に出かける、それが北アルプスだった。時には大変な雨嵐(天候)に遭ったりしましたが、山登りにおいても、ぼくの態度は「無理をしない」ということだった。もう少し「頑張ればあの山にも行けたのに」という、そんな気持ちを持ったことがない。機会があれば、また昇れるときがあるだろう、そんなゆったりした雰囲気であった。だから登山で不愉快というか、困ったことはなかったし、いつでも楽しかった。涸沢にも何度か足を踏み入れた。ここのヒュッテで、山岳写真家の白幡史郎氏に、山の写真のいろいろな経験談を聞かせてもらったこともあった。

主として、ぼくが登ったのは夏だったから、いわゆる「紅葉」にはお目にかかったことがない。それゆえに、このような新聞に出る「写真」の一枚で、大変に嬉しくなるのだ。今は便利過ぎて困るほどに、ネット上には、「紅葉の写真」が溢れかえっている。だから、それを小一時間も眺めていると、もう満腹を超えそうな気持になる。ぼくの年下の友人が、上高地手前の島々の出身で、今は長野で教師をしている。彼は地元人間だったから、山には飽き飽きしていただろうから、山登りの話は聞いたことがなかった。それでも、星や草花には興味を持っていた。というわけで、「いろいろな思いを込めて北穂高」という語りになるのも致し方ない。
ナナカマドはいたるところで見ることが出来る植物です。ぼくが、もっとも多く見たのは、やはり長野だった。いったいどれだけの種類があるのか、どれもこれも、ぼくには美しい。花も実も、言うことはない。拙宅にも小さなのが、数本ある。いつもそれが大きくなるのが好ましくないと、乱暴に剪定してしまっていた。今年は、何もしないで伸び放題になっている。紅葉は無理だろうが、少しは色づくかも知れない。ここに来る前に住んでいた家では、白樺を二本植えていたが、数年して虫にやられて枯れてしまった。気候が合わなかったのかもしれない。もちろん、じゅうぶんに気を付けていなかった当方の落ち度でもあった。
花でも樹でも、座っていて眺めたいという性根が、そもそも間違いなので、やはり、こちらから出向く。タイミングが合わなければ、また出直す。「秘すれば花」というではないか。
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◎ ナナカマド(ななかまど)[学] Sorbus commixta Hedl.=バラ科(APG分類:バラ科)の落葉高木。高さ7~10メートル。枝に皮目がある。葉は互生し、羽状複葉。小葉は長さ3~7センチメートル、無柄で9~15枚あり、長楕円(ちょうだえん)形または披針(ひしん)形、先はとがり、縁(へり)に鋭い重鋸歯(じゅうきょし)がある。5~7月、枝先に約10センチメートルの複散房状の花序を出し、白色の5弁花を多数開く。雄しべは20本、雌しべは1本で花柱は3~4本、子房は下位。5枚の萼片(がくへん)は内曲する。果実は球形のなし状果で径約5ミリメートル。やや涼しい山地に生え、日本全土、および朝鮮半島、千島、樺太(からふと)(サハリン)に分布する。名は、七度かまどに入れても燃え残るくらい燃えにくいことからついたといわれる。秋の紅葉と赤熟した果実が美しいことで知られる。北海道では並木などに植栽される。同属のナンキンナナカマドS. gracilis (Sieb. et Zucc.) K.Kochは高さ約2メートルと小さく、托葉(たくよう)は葉質で半円形、幅1~2センチメートルと大きい。関東地方以西の本州から九州に分布する。ナナカマド属は北半球の、おもに温帯に約100種分布する。(ニッポニカ)
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◎ ダケカンバ=ソウシカンバとも。カバノキ科の落葉高木。本州(中部以北),四国では亜高山帯に,北海道では低地からはえ,東アジアにも分布する。樹皮は赤褐色〜灰褐色,葉は三角状広卵形で先はとがり,縁には細かい重鋸歯(きょし)がある。雌雄同株。5〜6月開花。雄花穂は黄褐色で枝先から尾状にたれ,雌花穂は短枝の先に直立する。果穂も直立し9〜10月に熟す。(ニッポニカ)
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紅葉(もみじ)高野辰之(詞)・岡野貞一(曲) 秋の夕日に 照る山紅葉 濃いも薄いも 数ある中に 松をいろどる 楓や蔦は 山のふもとの 裾模様 渓の流れに 散り浮く紅葉 波に揺られて 離れて寄って 赤や黄色の 色さまざまに 水の上にも 織る錦 (明治四十四年発表)
若いころは、この季節になると気分が紅葉(高揚)して、じっとしていられないということもあった。友だちたを誘って(誘われて)、近間に出かけることもあったし、一人でふらりと家を空けたりもした。冬場になれば、スキーという具合で、趣味も何もあったものではない。都会に住んでいる悲しさで、機会があると、遠いところ、高いところに出かけたくなるという、一種の「高山病」だったと思う。飽きもせず列車に乗ったり、車を使ったりと、今から思えば、無駄な時間というか、そんなにいい経験になったという感覚もない。
不思議でも何でもないが、三十年、四十年前の「山登り」の一コマ、一コマが記憶の底から湧き出してくる感じで、この駄文を書いている。登山道の「梯子」を昇ったり、「鎖」を握ったりしたことも、前にいるのはだれ、後ろからくるのはだれ、そんなことまで、ありありと覚えているのだ。高い山低い山と、人並みに出歩きましたが、大きな事故にも遭わなかったのは幸いだったし、じつに恵まれていたと思う。頂上で呑んだ酒、こんなことを言うと忌み嫌われますが、コーヒーがうまいのと同じように、気圧がが平地と違うだけで、味は格別だった。酒は山頂に限るとは思わないが、山頂でもうまいということがいいたかった。

数年前の御岳山の爆発から五年がたったという。あるいは山の遭難が絶えまなく報じられている。それを聞くたびに胸が痛くなる。いまは「携帯電話」がある時代だから、それ以前よりは、救助の機会が増えたのは、文明開化の「おかげ」でもあろうが、反面で、「なんじゃ、これは」と胆をつぶし、その後でいやな気分になることも多くなった。日本一高い山といわれる「乗鞍高原」に自動車道が出来たのはいつだった。ハイヒールにスカート、サンダルに半パン姿の「登山客」が、山頂近くで、バスから掃いて捨てるほど湧き出してきていた。時代も人心変わったのである。(今は、自動車の乗り入れ規制がされているけれど、「スカイライン」道路を通って、それでも車は登ってくる)ぼくは、そのニュースを知って以来、人が多く集まる山にも出かけなくなった。(頂上で順番待ち、まるで上野動物園のパンダ見物のありさま)(左上写真はサイクリング競技に集まった人々、乗鞍で)
遠くない将来に、乗鞍をはじめ、高い山の頂上まで直通の「エレベーター」、あるいは「エスカレータ」が作られるだろう。土建国家究極の「利権大工事」だ。それに比べれば「リニア新幹線」などまだまだ、そんな気が狂った劣島の「秋酣(たけなわ)」なのである。
HHH
・冷えびえと袖に入る日や秋の山 (一茶) ・秋山やこの道遠き雲と我(蛇笏)
・声あげて父母を呼びたし秋の山 (阿部みどり女)
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