答弁の中には事実に反するものが…

【水や空】 118回 村上春樹さんは「壁と卵」と題したスピーチの冒頭で「小説家」について〈上手な嘘(うそ)をつくことを職業とするもの〉と語っている。もちろん彼の言う「嘘」は、人間や社会の真実を描くために〈本当のように見える虚構を創り出すこと〉▲〈しかしそのためにはまず真実のありかを、自分の中に明確にしておかなくてはなりません〉-それがうまい嘘をつくための大事な資格だ…とスピーチは続く▲さて、こちらは、村上さんがこしらえる極上の嘘とは似ても似つかぬ子どもじみたウソだが「真実のありか」ぐらいは分かっていたはずだ。自身の後援会が開いた「桜を見る会」前日の夕食会の費用補填(ほてん)問題で検察の事情聴取を受けた安倍晋三前首相▲費用は参加者の自己負担、ホテルの明細書はない、事務所は関与していない…事実と異なる可能性のある国会での答弁は少なくとも118回に上るとされる▲数字が「い・い・や」と読める。関与してないことにすればいいや、きちんとホテルに照会したことにすればいいや、虚偽だと言うなら証拠を示せと言い張ればいいや▲検察には「知らなかった」と話したらしい。近く予定される国会招致では、ウソの報告を鵜呑(うの)みにした結果、ウソを述べてしまった-とでも説明するのだろうか。数字が増えなければいいが。(智)長崎新聞社・2020/12/24 )

【正平調】 長く生きていると、ありとあらゆるうそを見聞きしたと、作家佐藤愛子さんが随筆に書く。話をおもしろくする。同情を買う。自分を偉く見せる。損得勘定で。追い込まれて、つい◆お金に困り、「シンダ」と電報を打ってきた身内がいた。行ってみると、横たわる布団から手が伸びる。持ってきただろう金をもらう手だった。佐藤さんはこう思った。「堂々の嘘(うそ)であるがゆえに私は許したい」◆この118回を佐藤さんは許しますか。安倍前首相の「桜を見る会」問題である。事実と異なる虚偽答弁と指摘されるものがこんなにもあった。秘書から受けた説明と釈明しているようだが、それで済まない◆夕食会の費用を補填(ほてん)したとして、東京地検特捜部は秘書を略式起訴するようだ。異例の聴取を受けた安倍前首相は不起訴の公算大という。いや、安倍さん、安心するのは早い。世間という名のお白州が待っている◆秘書が…後援会が…事務所が…で幕引きにはならない。秘書の説明に「?」はなかったのか、問い詰めようとしなかったのか。みんなが見つめる場で疑問に答えてもらいたい。当然、記者会見も。それが長期政権を誇った方の身の処し方、責務である◆佐藤さんのうそあれこれに加えよう。おごりが生むものもある、と。(神戸新聞NEXT・2020/12/24)

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●うそ【×嘘】 の解説 1 事実でないこと。また、人をだますために言う、事実とは違う言葉。偽 (いつわ) り。「嘘をつく」「この話に嘘はない 2 正しくないこと。誤り。「嘘の字を書く」 3 適切でないこと。望ましくないこと。「ここで引き下がっては嘘だ」

 [用法]うそ・[用法]いつわり―「嘘偽りは申しません」のように同義重複で用いたり、「嘘(偽り)を言う」のようにほとんど同義で用いられる。◇「嘘も方便」「嘘から出た実 (まこと) 」「そう来なくては嘘だ」「嘘のように晴れ上がる」のような慣用句や慣用表現の「嘘」は「偽り」に置き換えることはできない。◇「偽り」は「嘘」よりも意識的、作為的で、改まった言い方。「偽り」はまた、「彼の言動には偽りが多い」「偽りの愛」のように言葉以外に行動や態度で欺く場合にも用いられる。◇類似の語に「虚偽」がある。「偽り」と同義で、「虚偽の申告をする」のように、多く文書などに用いられる。

●うそつき‐いわい〔‐いはひ〕【×嘘▽吐き祝(い)】 の解説 本州中国地方で12月8日に行う商人の行事。1年間ついた嘘が帳消しになる日だとして、豆腐汁やこんにゃく田楽を作って祝う。うそつきばらい。

●うそつきおとこ〔うそつきをとこ〕【嘘つき男】 の解説 《原題、(フランス)Le Menteur》コルネイユの喜劇。1634年初演、1644年刊行。スペイン風の軽妙な喜劇。

●エピメニデス‐の‐パラドックス の解説 古代ギリシャ七賢人の一人、エピメニデスにまつわる論理的逆説。クレタ島出身のエピメニデスが「クレタ人はみな嘘つきだ」と述べたという命題の真偽を問う際、クレタ人であるエピメニデスが真実を述べているとすると、クレタ人はみな嘘つきになり、嘘を述べていたとすると、クレタ人はみな正直になり、発話の主体であるエピメニデスが正直ものか嘘つきかであることと矛盾する、という説。自己言及のパラドックスまたは嘘つきのパラドックスとして広く知られる。クレタ人のパラドックス。(以上はデジタル大辞泉)

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 学校時代、何時も教師に「辞書で意味を調べろ」と言われていました。「意味って何だ」と、そのつど不思議に思っていました。意のあるところ、意味、いろいろな含みがある言葉ですが、その実、ほとんどみんな素通りしていたように思います。辞典や辞書は「ことば」がたくさん載っていて、それについて何かと「解説」しているにすぎない、なぜなら、辞書ごとに「説明」がちがっていたからです。1mは100cm、これは万国共通で、この規則を守らない人は「ゲーム(学問や常識)」に参加できない。1時間は60分も同様です。でも、言葉はどうでしょう。英語でもフランス語でもドイツ語でも日本語でも、翻訳すれば同じ「意味」を示していることがわかるといえるでしょうか。

 面倒なことになりそうですから、ここでは述べませんが、言葉は記号ではないということだけははっきりしています。赤信号は記号(印)です。でも、「赤」にはさまざまな含みがあるでしょう。グラデーションと言ってもいいし、ニュアンスと言い換えてもいい。と言っておいて、「嘘」について考えようとしています。上に辞書の「解説(説明)」を出しておきました。毎回のように「デジタル大辞泉」を使っていますが、これは他よりも優れているからというのではない、単に使いやすいというだけで、ぼくは愛想(用心して使うこと)しています。本当は「明解」さんが好きなんですが。

 若い時から「愛用」していたのは「エピメニデスのパラドックス」です。大体は「解説」どおりです。「嘘つきの矛盾」「嘘はきっとバレる」ということでしょう。「私は嘘をついたことがない」という分には実害がないようなものですが、「私」が名うての「嘘つき」だったらどうでしょう。さらには「私は嘘をついている」という意識や自覚がない、生来(根っから)の「嘘つき」であったらどうか。自分は嘘をついているという自覚がないのですから、「私は嘘をついたことがない」というのは真になるのです、か。自分で知らないままでつく「嘘」も、真でなければ、かならず「嘘だと判明」します。その結果、「ああ、これが嘘というものか」ということになります。しかし、それで「気が付かなかった」「勉強しました」と一件落着となりません。

 「嘘つきの天才」のレベルは、この段階じゃないでしょうか。手に負えないのです。「事情聴取」においても、当然嘘をつきます。そうでないと辻褄が合わない。記者会見でも「嘘八百」です。首尾一貫しているのです。途中で宗旨を変えるわけにはいかないからです。「事実と異なる」「事実に反する」という言葉遣いは「ご指南番(元地検)」がいたから使えるんですね。「嘘」とは断じて言わないところが味噌です、腐った。

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 《 ホテルとの交渉や支払いは東京の事務所が行っており、「(退職した)前任者が記載すべきものを記載せず、後任の東京の責任者もそのまま放置した。東京の事務所と地元の事務所の連絡、連携が不十分だった」と釈明した。また「そもそも夕食会の運営は、総理大臣ですから、職務に専念しているのでかかわっていなかった」と説明。「私が事実を確認した際、事実確認の仕方として私自身がホテルに当たることは考えられず、当然信頼している責任者に確認をとった。その際、真実について私に話してもらえれば、こうした事態にはならなかった」と秘書の責任を繰り返し強調した。補塡分は、安倍氏の預金から事務所に預けていた安倍氏の「手持ち資金」が原資だと明らかにした。国会で事実と異なる答弁を繰り返したことについて、「事務所に幾度も確認し、当時の私の知る限りの認識の限りの答弁をさせていただいたつもりだ」と釈明。「結果として、これらの答弁の中には事実に反するものがございました。それがゆえに、国民の皆さんの政治への信頼を損なうこととなってしまった」と説明した。

 「私の政治責任は極めて思いと自覚しており、真摯に受け止めている」と述べたものの、議員辞職と自民党離党の可能性については「初心に立ち返り、全力を尽くすことで職責を果たす」と述べ、否定した。》(東京新聞・2020/12/25)

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 彼は天性(生来)の「嘘つき」だとは思いますが、彼一人では嘘つきは成就しない。協力者というか仲間というか、そう「サクラ」=偽客が必ずいたのです。「おとり」ともいいいます。なんで「サクラ」かは言わない。いろいろと面白い由来があります。さてこの問題では、だれだれが「サクラ」だったか。ヤッコにかかわる人すべてと言いたいのですが、それじゃサクラが多すぎます。この記者会見も「振付師」がいたし、サクラもおとりもいた。会見の中の記者はほとんどがサクラだったといえます。ここが、ぼくが悲しくなるところです。いい加減に散れよ。この天才一人の問題で終わらせたいけど、そうじゃないのが情けないんですね。検察ともつるんでいるし、弁護士もなかなかの猛者ぞろいです。たぶん、このサクラや取り巻きを見て、東京地検は怖気づいたのかもしれない。しばし待て、ここまでくれば、仕留めたも同然と、一息入れているでしょう。「容疑者として、事情聴取した」とまで漏れていますよ。

 嘘をついたら、それは必ずバレる。嘘が嘘のままなら、世の中はなり立たない。もう一つ、この天才の嘘は、常人、つまりは庶民の嘘とは同日の談ではない。「宿題やったの、シンちゃん」「とっくにやったよ」とシン君、というレベルでは終わらない。傷つき苦しむ人も出る、死人まで出る、大枚の金(税金)が絡む等々、それを抜きにして終わりはない、終わらせてはいけない。ぼくも深く傷ついている、一人の国民です。

*** 参考までに 「人は誰でも小さな「嘘」の一つや二つはついた経験があるとおもいますが、「劣等感」や「自信喪失」に陥ったことが一度もない、という人もいないとおもいます。でも普通の人は、劣等感や自信喪失を「嘘」で克服するということはありません。/ ところが「虚言癖」のある人は、根本的には「劣等感」の強い人が陥りやすいといわれます。「虚言癖」の人は「嘘」に対して罪悪感が希薄ですから、一度「嘘」で劣等感が緩和される事があると、嘘をつくことが「癖」になるとおもわれます。」(https://driver-times.com/driver_work/driver_biz/1062655)

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投稿者:

dogen3

「上を思えば限りがないと、下を見て咲く百合の花」になれるものなら、という想いです。それこそ、「高嶺の花」ですが。「昨日は俗人 今日は僧、生涯胡乱(うろん)これがわが能」と自称した一休さんは、一面では「相当な人物」だったと、歳をとるとともに思わされています。