「復興を弄ぶ狂気」の止むときはあるのか

 首相、原発処理水先送りできず 福島第1巡り、認識表明

(右写真 高田松原津波復興祈念公園を訪れ、献花する菅首相= 10日午後、岩手県陸前高田市)

 菅義偉首相は10日、東京電力福島第1原発の汚染水を浄化した後の処理水の処分について「極めて重要な事であり、いつまでも先送りはできない」との認識を改めて示した。視察先の岩手県宮古市で記者団に語った。/ 処理水を保管しているタンクは2022年夏にも容量が限界となる見込み。政府は海洋放出を検討。10月にも処分方針を決定する方向だったが、調整に時間を要しており、結論を得ていない。/ 首相はこれまでも処理水への対応を先送りできないとの認識を表明。風評被害対策にも取り組む考えを示している。/ 首相は、被災地の復興状況に関して「内閣として全力で応援していきたい」と強調した。(秋田魁新報電子版・20年12月10日)

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 年が明ければ、福島原発事故発生以来、十年目を迎えます。「復興」は急ピッチで進み、各地に避難していた被災者もほとんどが帰還し、それぞれの地域はかつての賑わいを取り戻したように見える、よくここまで「復興」したものだ、さすがは「政府の力は本物だ」と、被災地では感嘆の声がしきりです、かくいうのは「真っ赤な嘘」で、復旧もしていなければ、復興などなおさらだという景観(証拠)がいたるところで見られるのです。被災地におられる方々には申し訳ありませんが、まるで「無人の荒れ野」ではないか。

「なんとか伝承館」が作られ、今夏(9月20日)開館しました。中味は空虚で、福島原発事故は遥か彼方に消えてしまったという「原発事故遮断。隠蔽記念館」のようでもあります。東京新聞の空中写真でもわかるように(右写真)、広大な無人の荒野に「伝承館」は位置し、その西側には福一がいまなお事故後の困難を極める処理作業に奔走しているさまが見て取れるのです。今でも日々、放射能は降り注ぎ、地下水は汚染され、場所によっては基準値(誰が設定したのか)を超える数値が示されているのです。「伝承館」もできた、「震災と原発事故」を「振り返りましょう」という旗を立てて、インバウンドにも誇らかに復興を誇示するかのように、人も住めない場所に「伝承館」は孤立しています。

 最後まで復旧が遅れていた常磐線。この春にようやく全線が開通した。この春でなければならなかった。まだ十分に安全だとは言えない状況にもかかわらず「全線開通」の日が三月に設定された。なぜか。いうまでもなく、東京五輪開催のためには、三月開通は至上命題だったのです。避難者がどれだけ残ろうが帰還者がまったくいなかろうが、被爆線量がどれだけ高くとも、とにかく「全線開通」で、福島は復興したのだと、世界に向けてアピールした(かったのだ)。驚くべき、政治の退廃。

 つまりは、島の中だけではなく、世界に対して「嘘」を発信していたのです。「原発はコントロール」下にある、汚染も減少した、復興住宅も召し上げる、とさんざんのごまかしや無理強いをして、荒れ地を更地にするかのごとく、そべて「汚染物」を地下に隠し、海中に投棄して、さあ「五輪開催」です、と既成事実つくりの一環で、あることをないことに、ないことをあることにされてきたのでした。とにかく「万難を排して、五輪を開きたかった」という前総理の企みだった。「この馬鹿が」、と今では誰もがみなしているだろうか。

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 常磐線、きょう全線開通 被ばくの懸念 根強い声

(写真左 帰還困難区域を通過する車両の線量測定などを訴える動労水戸の組合員ら=ひたちなか市で)

東京電力福島第一原発事故の影響で不通が続いてきたJR常磐線富岡(福島県富岡町)-浪江(同県浪江町)間の二〇・八キロで十四日に運行が再開し、茨城県民になじみ深い鉄路が九年ぶりに全線開通する。しかし、不通区間の駅周辺の避難指示は解除されたものの、一帯は放射線量の高い帰還困難区域のままだ。県内の労働組合や沿線住民の間からは、放射線被ばくによる健康被害を懸念する声が根強い。 (佐藤圭、水谷エリナ)

 JR東日本の社員らでつくる労働組合「動労水戸」の調査によると、試運転で帰還困難区域を通過した車両のフィルターに付着したちりから一キロ当たり二三五〇ベクレルのセシウム137が検出され、放射能濃度は通常の車両より二十三倍も高かった。動労水戸は調査結果を踏まえ、帰還困難区域内を通過する車両の線量測定のほか、車両整備員の被ばく防止教育や防護用具の配備を要求したが、JR側は「車両の測定を実施する考えはない」と拒否している。

 JR東日本水戸支社の雨宮慎吾支社長は十三日の定例会見で、車両への放射性物質の付着について「(不通区間の空間線量が避難指示の目安を下回る)毎時二マイクロシーベルトだということから考えて問題ないと思う」と主張した。/ 動労水戸は十三日、ひたちなか市のJR東日本勝田車両センター前で抗議活動を展開し、約二十人が「会社は車両の線量を測れ」「労働者を被ばくさせるな」「乗客を守れ」などとシュプレヒコールを上げた。/ 車両センターでフィルターの洗浄作業に携わっている整備員は約五十人。木村郁夫委員長は「毎日のように放射性物質が付着した車両が入ってくるが、現状のままでは労働者が健康を害し、命を失う危険さえある」と警鐘を鳴らす。

 牛久市の主婦(62)は全線開通に疑問を抱き、勉強会を開いたり、JRに問い合わせたりしてきた。「JRは観光PRばかりで、帰還困難区域内を通過する点には触れない。車両を測定せず、社員の健康を守ろうとしない姿勢では、乗客の安全も心配だ」と不信感をあらわにする。

◆専門家ら疑問視 

 福島第一原発事故を経験した元首長や専門家も常磐線の全線開通を疑問視する。

 原発事故当時の福島県双葉町長で、町民の県外避難を指揮した井戸川克隆さん(73)は「原発事故の悪いイメージを早く払拭(ふっしょく)し、東京五輪という大行事に国民を熱くさせるためだ」と指摘した上で、「放射能汚染を示す数字はごまかせても、重要な交通インフラの鉄道が開通していない物理的実態は隠蔽(いんぺい)できないので、無理な開通をさせた」と断じる。

 原発の危険性を告発してきた元・京都大原子炉実験所助教の小出裕章さん(70)も「(不通区間は)本来なら放射線管理区域に指定しなければならない場所。公共の交通手段が乗り入れるなんてあり得ない」とあきれる。/ 放射線管理区域は、原発や放射性物質を取り扱う研究機関や医療機関で設定され、作業者や周辺住民の被ばくを基準以下に抑えるため、人や物の出入りを厳重に制限している。

 一般人に許容される年間被ばく量は一ミリシーベルトだが、福島第一原発事故による避難指示に当たって年間二〇ミリシーベルトに緩和。国は今月、緩和した基準に基づき、不通区間の夜ノ森(富岡町)、大野(大熊町)、双葉(双葉町)の三駅と線路、周辺道路の避難指示を解除した。/ 小出さんは「二〇ミリシーベルトというのは、かつての私のような放射線業務従事者が、給料をもらう引き換えにようやく受け入れさせられる線量。それを子どもも含めて適用するなんて論外だ」と指弾した。 (宮尾幹成)(東京新聞2020年3月14日)

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 人命尊重が何よりという。ホントにそう考えているのかと問えば、途端に怪しくなる。「国民のいのちを最優先にするのがわたしの政治」と現総理は啖呵を切った。詭弁を使うことは知っているんですね。口から出まかせとは言うまい。心底そう思っていることを吐露したまでだと言われるかもしれないが、それならもっと悪質だと言わなければなるまい。この総理が何をするか、ぼくは手に取るように見える。「汚染水」は海洋投棄を腹では決めているという。なぜそうなのか、理由や根拠は示せない。つまるは「問答無用」なんですね。俺のすること、言うことに文句をつけるなという、もっとも唾棄すべき手法です。「鬼に金棒」ではなく、「なんとかに刃物」の類で「権力」をふりまわされて困るのは、だれあろう「最優先で守らなければならない国民」であることを、この御仁は忘れたらしい。つまり、「口から出まかせ」の化けの皮、なんでこんなのばかりがまかり出すのでしょうか。それが政治家というものさ、とささやく声がする。

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 「政府は、『復興』の名の下に避難指示区域の解除を進める。住民の立場に立って考えてほしいと思うが、霞が関や赤坂のビルの中から、福島の住民のことを「我がこと」として考えるのは難しいのかもしれない。霞が関は、東大をはじめ有名大学を出ている人たちが仕切っている」「首長は避難指示の解除を求めるが、住民はほとんど戻らない」「家に戻りたい人たちもいる。しかし健康影響がわからず、廃炉が進まない中では戻れないという人たちもいる。今後の放出のリスクをどこまで引き受けられるか、被爆のリスクをどこまで引き受けられるかという判断は、すべて自己責任になる」「賠償は打ち切られる。原発事故避難者用につくられた復興公営住宅に入居した人や多くの自主避難者が避難者数から除外され、数字の上では避難者数そのものが急速に減っている。避難指示区域が解除されると、避難者は「強制避難者」から「自主避難者」へと呼び名が変わり、そればかりか、「帰らないわがままな人たち」とレッテルを張られるようになる」「『避難者を支持しよう』という言葉すら、言えなくなる日も近いかもしれない」(青木美希『地図から消される街 3.11後の「言ってはいけない真実」』講談社現代新書、2018年刊)

 青木美希さんについてはどこかで触れておきましたが、この間、つねに福島に通い詰めで、事故後の軌跡を丹念に報告されています。このような人の仕事に対して、ぼくは敬意を隠しません。彼女以外にも、何人もの方が取材を続け、事態の行く末を報道されています。青木さんも、どこかで言われていますが、このような取材や報道を快く思わない、語るに落ちた「選良たち」が大きな顔で闊歩している。

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