何に此師走の市にゆくからす(芭蕉)

(東京新聞朝刊・2020/11/19)
(東京新聞・2020/8/14)
(毎日新聞・2020/5/2)

****************************

 本日から師走です。新型コロナというストーカー・ウィルスに迫られ、追い回されて、ほぼ一年が過ぎようとしています。今年はグローバルな意味では、人類史初の「マスク人出現」の曙光でした。世界の感染者数は六千三百万人、死者は百五十万人。いまだに、災禍からの回復の目途が立っていません。最古の細菌、或いはウィルスが猛威を振るう傍で、宇宙ロケットの打ち上げが相次ぎ、宇宙船に何か月も滞在する時代でもあります。人類の進歩というのは、あるいは夢幻物語で、片一方に数億年前からの超細菌が存在し、もう一方では人類史で初めての「地球外生存」への第一歩という偉業を誇っているのです。

 それもこれも含めて、地球の歴史であり、現在でもある。宇宙をの謎を解明せんとし、細胞の成り立ちから生命の「謎」をほぼ解明しようかという時代、もう一方の足は地球の歴史の始まりにつながれていたということになります。風邪なんかと言いますが、罹患のメカニズムは未解明です。天才であると同時に、驚くべき鈍才でもあるという人間群、それが力を合わせて人類史の壁を越えようという考え自体が、実はお門違いであったというのかもしれません。人類は「ヤヌス(Janus)」のひそみに倣っているのでしょうが、展望は開けていません。誕生前も死滅後もまったくの闇で、ひたすら「今を生きる」ことばかりに人類は釘付けされているのです。

 無数の写真を眺めていて、ぼくは「マスク人」の登場を、深く実感しています。科学の貢献は人類に著しい幸運をもたらしたといえますが、片方では素朴かつ単純な「予防法」が欠かせないのも事実でしょう。「B29に竹槍」「原爆投下にバケツリレー」は笑いのめされ、揶揄されましたが、今だって、その域を一歩も出ていないのです。「やっつける」という敢闘精神が安心感、いや焦燥感を和らげてくれるのかもしれません。しないよりはした方がいいかも、ね。

 たかが「マスク」と言いますが、それをすれば、コロナウィルスが防げるかどうかという以上に、「口を塞いでいるから」という、単細胞的な安心感が生まれて、免疫力の低下を防ぐ、いや免疫値を高めてくれるかもしれぬという無根拠の感覚が、もっとも「対コロナウィルス」に効果があるというのでしょう。イソジンも同じ発想だったが、ちょっとまずかったのは、何かが足りなかったからですね。「鰯の頭も信心から」「痛いの痛いの 飛んでけー」という呪いの精神ですよ。「非化学」だなどと、バカにしてはいけません。

「ご来光」を求めて山に登り、渚に出かけ、やおら手を合わせているではありませんか。

 まだまだ、マスク時代は続き、「マスク生活」は終わりそうにありません。(いろいろなマスクが登場してきましたが、ABENOマスクばかりは、ウィルス以上に汚染されていそうで、二度と御免ですね)

月白き師走は子路が寝覚かな 芭蕉「泊船集」
旅寝よし宿は師走の夕月夜 芭蕉「熱田三歌仙」
雪と雪今宵師走の名月か 芭蕉「笈日記」

空を歩む朗々と月ひとり (放哉)

######

12月1日のこよみ。
旧暦の10月17日に当たります。つちのえ とら 一白 友引。
日の出は6時52分、日の入りは16時58分。
月の出は17時37分、月の入りは7時21分、月齢は15.9です。
潮は大潮で、干潮は高知港標準で0時08分、潮位6センチと、12時20分、潮位80センチです。/ 満潮は6時47分、潮位173センチと、17時56分、潮位174センチです。(高知新聞・2020/11/30)

______________________________________