福島がどのように復興したか知ってほしい

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原子力災害、記憶つなぐ 福島・双葉伝承館開館

 東京電力福島第1原発事故を後世に伝えるため福島県が双葉町に整備した東日本大震災・原子力災害伝承館が20日、開館した。収集した資料約24万点から約170点を展示し、原発事故が地域にもたらした影響と復興の歩みを紹介する。
 伝承館は津波被災地区に総工費53億円で建設。事故の経過を振り返るシアターに続き、発生から復興までの取り組みを5コーナーで解説する。当初の7月の開館予定が新型コロナウイルスの影響で2カ月遅れた。
 20日は開館に先立ち高村昇館長(長崎大原爆後障害医療研究所教授)が「福島が未曽有の災害からどのように復興したか知ってほしい」とあいさつ。初日は1051人が来館した。
 伝承館の展示内容には原発がはらむ危険性や県が誘致した経緯への言及が少ないとの指摘もある。高村氏は取材に「(原発の危険性に)触れるかどうかは来館者の声などを聞いて検討する」と述べた。20日は内堀雅雄知事と2人の副知事は現地に来なかった。
 開館時間は午前9時~午後5時。火曜休館。入館料は大人600円、小中高生300円。(河北新報・2020年09月21日月曜日)

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 だれがこんな無謀・無残なことをするのでしょうか。人の住めない町(消された街)にどこかの神殿のような空漠たる建物が完成しました。名づけて「東日本大震災・原子力災害伝承館」という。まるで巨悪の象徴にして、中味は空虚。伝承すべき内容も空無なら、事故の原因や復興の道筋も稀薄な気配が濃厚に漂っている「伝承館」、ぼくはきっと行かないと思う。果たして「原発事故から、如何にすれば復興したことになるのか」という最大の核心部分が抜けています。建設段階から開館までと、それ以後の各方面の報道や当館の展示やその他に目を通してきたつもりですが、よく見えないことおびただしいのです。いったい、何を隠したかが実によく伝わってくる「伝承館」です。あるものがない、ないものがある、「不思議の国の伝承館」、「見えないものが展示されている伝承館」です。ふんだんに税金だけは投入され続けるのです。

 福島復興のための五輪開催を謳って誘致したのは七年前。今ではそれ(開催)すら風前の灯火。加えて日々増加するトリチウム汚染水の最終処理問題。「海洋放流」を当局は目論んでいるが、抵抗を避けて時間をやり過ごしているのです。じつに薄汚い真似をするものか。いたるところで人命の無視、人権の蹂躙、棄民政治の暴力が、東西南北、しのぎを削っているとしか言えません。「地図から消される街に新築の廃墟」、人はそれを正視するに堪えないでしょう。

(記事中の女性記者Aさんは『地図から消される街』(講談社現代新書)の著者青木美希さんです)(青木さんの件についての新聞記事は「日刊ゲンダイ」で読めます。<https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/270283>)

 伝承館館長の「あいさつ」を読んで、えっと声が出ました。しばらくして、気が付いたのです。迂闊だったかもしれません。福島には二通りの地域があるということです。一つは「すでに復興した地域」、他は「まだ復興していない区域」です。それは「決して復興することのない区域」の別名なんですね。ぼくはもう一度、福島行脚に出かける必要に駆られています。

(余話ながら  『地図から消される街』の著者、青木美希さん(右下写真)は朝日新聞記者です。青木さんについては、北海道新聞時代の「道警裏金問題」の報道(この件でも多くの新聞記者の犠牲が出ました)で、その仕事ぶりをぼくは知っていました。この問題の発端は原田宏二さん(元道警の№2)(左写真)の告発から始まります。一時期、原田さんとは何度もあっていろいろな話を伺うことができ、また未解決の冤罪事件などに関する研究会などを開いたこともありました。

 その青木さんが移籍してきた朝日で「猛烈ないじめ」に遭遇します。青木さんの福島原発事故の取材と報道の時期、この島では五輪招致が決まり、朝日を始め各新聞がこぞってスポンサーになった時期と重なります。(政府に提灯を持ったのですが、同時に社運は陥穽にハマりこんでいったのです)新聞社の本体が腐っているのは性悪な政治家連中と「仲良くする(腐敗が感染する)」ことの当然の帰結でしたが、その余波が誠実に報道の真ん中を歩いている「現場記者」を汚い仕打ちで虐めるという醜態に顕現するのですから、ブンヤの風上にも置けない連中で、こいつらの大半は男だと、ぼくは同性の誼(よしみ)、いや怨み骨髄という怒りで、見もしないで断定します。この会社の幹部連の質の悪さは犯罪級です。五輪中止は既定の路線ですが、さらにIOC解体まで進んでほしいね。青木美希さんのご健闘を祈るとともに、闘いの戦列につながりたと願っています)

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投稿者:

dogen3

 語るに足る「自分」があるとは思わない。この駄文集積を読んでくだされば、「その程度の人間」なのだと了解されるでしょう。ないものをあるとは言わない、あるものはないとは言わない(つもり)。「正味」「正体」は偽れないという確信は、自分に対しても他人に対しても持ってきたと思う。「あんな人」「こんな人」と思って、外れたことがあまりないと言っておきます。その根拠は、人間というのは賢くもあり愚かでもあるという「度合い」の存在ですから。愚かだけ、賢明だけ、そんな「人品」、これまでどこにもいなかったし、今だっていないと経験から学んできた。どなたにしても、その差は「大同小異」「五十歩百歩」だという直観がありますね、ぼくには。立派な人というのは「困っている人を見過ごしにできない」、そんな惻隠の情に動かされる人ではないですか。この歳になっても、そんな人間に、なりたくて仕方がないのです。本当に憧れますね。(2023/02/03)