北斗星(10月31日付)
一雨ごとに寒くなるようだ。夜に一降りした翌朝は特に肌寒く感じる。街を歩くと色づき始めた街路樹が風に揺れる。枯れ葉がカサカサと歩道を鳴らす。秋の終わりも近いと感じる時だ▼農業の祭典県種苗交換会は毎年、そんな時期に開かれる。今年は横手市で昨日開幕、日程を短くし農産物展示は出品数を減らした。会場入り口では検温を実施。全て新型コロナウイルス対策のためだ。「歴史の火を絶やすことなくつなげたい」。関係者の強い思いで143回目が実現した▼開始間もない明治の中頃は中断の危機があった。主催者だった県が隔年開催を決めたからだ。だが創設に力を注いだ石川理紀之助らが私費を投じ乗り切った。1回休めばその分、農業の発展が遅れる。そう受け止めるほど農家の意欲は盛んだった▼もう一人忘れてならないのが秋田市出身の聖農、森川源三郎だ。理紀之助と同い年でお互いを「先生」と呼んだ。協力関係は「混然一体」と評された。源三郎には「三心」の語がある。発心、決心、相続心(継続心)を指す▼発心と決心は誰でもするが、相続心がないと事業は完成しない。そう言って自らの戒めとした。143回を迎えた交換会はこの心あっての歩みだ▼最後に理紀之助の言葉を紹介したい。「樹木は祖先より借りて子孫に返すものと知れ」。樹木を田畑に置き換えれば、世話をして後世に伝えるのが食を支える農の営みだろう。コロナ時代の交換会に「子孫に返す」大切さを思う。(秋田魁新聞・2020年10月31日 9時51分 掲載)
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久しぶりに秋田魁(さきがけ)新聞の「コラム」に出会いました。その意味は、毎日のようにぼくは「47コラム」で各地の新聞記事や、とりわけ「コラム」に目を通して、その直々の話題や問題を確認しようとしているのです。秋田魁新聞も、もちろん毎日のように目を向けていますが、食指が動かなったというのが正直なところです。なぜ今日のコラムに触れたか。まだ十分に確認していないので(これから調べます)、確かなことは言えないのです。でもこのコラムでは秋田の農業に甚大な貢献をした二人の先人の遺徳をしのんで「種苗交換会」の「相続心」を絶やすなと、書かれているのにもかかわらず、「種苗法」「種子法」問題には一言半句も触れられていないので、これは異なことと扱う気になったのです。
言うまでもないことで秋田で農業にかかわる方々は、上記法律がどのように変えられ、どのように農業の現場が変わらざるを得ないのか、篤とご存じなのでしょう。(この法律などの変更に関しては農水省HPを参照してください。これをたちどころに理解できる方は並の知能の持ち主ではありません)(https://www.maff.go.jp/j/shokusan/shubyoho.html)
種苗法改正案、成立断念 2020/6/12 10:17(共同通信) 種苗法改正案のポイント 政府、与党が、国内で開発されたブランド果実などの海外への不正な持ち出しを禁じる種苗法改正案について、今国会での成立を断念したことが11日分かった。一部の品種に限って農家が収穫物から種を取って次の作付けに利用する行為に許諾料の支払いを迫られることで、負担が高まるとの声がインターネット上で広がり、懸念を払拭(ふっしょく)しきれない中では困難と判断した。秋に想定される臨時国会での成立を目指す。/ 自民党の森山裕国対委員長は11日、「国内の種苗を国際的にどう守っていくかを考える大切な法案だ」と強調。内容について誤解があるとして説明を尽くすと訴えた。 種苗法改正は、新品種の開発者の権利保護を強化するために農林水産省が検討を進め、3月に閣議決定されて国会に提出された。ブドウ「シャインマスカット」など日本で開発された品種が海外に流出する事例が相次ぎ、国内の農業関係者や政府が力を入れる輸出戦略への悪影響を無視できなくなったことが背景にある。/ 改正案は、開発者が栽培地域を指定できるようにすることで海外への不正な持ち出しを防ぐことが柱。違反した場合の罰則も用意し、流出に歯止めをかける狙いだった。/ 一方、農家が収穫物から種や苗木を採取し、翌年の栽培に使う「自家増殖」について、これまで原則自由だったものを種苗法上の登録品種については許諾を必要とするよう見直す点に懸念の声が出た。農水省は、農産物の大半を占める一般品種には規制が及ばず、影響は限定的だと説明しているが、負担増加につながるとの慎重論に押され、今国会では審議入りできなかった。【共同】

種子法廃止と種苗法改正如何の問題点についてはいろいろな資料や文献がありますが、差し当たっては以下のURLを参照してほしい。(https://bigissue-online.jp/archives/1070466468.html)さらには農業協同組合新聞の、以下の記事を見てください。
わかりやすい種苗法改定Q&A【鈴木宣弘・食料・農業問題 本質と裏側】2020年6月4日【鈴木宣弘・東京大学教授】
Q 種苗法改正案は、種子のいわば著作権を守るためのものだといいますが、どんなものなのでしょうか? A:種苗法は、植物の新品種を開発した人が、それを利用する権利を独占できると定める法律。ただし、農家が利用するのはOK、自由に自家採種してよいと認めてきた(21条2項)。今回の改定は、その条項を削除して、農家であっても登録品種を無断で使ってはいけないことにした。 Q 「日本の貴重な品種が海外に流出するのを防ぐ」と評価する声がある一方、「海外の大手企業に種子を支配される」という懸念の声もあります。真逆の評価が起きている状況をどう考えますか? A:種苗法には賛否両論があるが、双方とも「日本の種を海外に取られてはいけない」という想いは共通している。賛成派は日本の新品種の種が海外で勝手に使われているのを止める改定なのに、なぜ反対するのか、と指摘する。 一方、懸念する側は、種苗法で自家採種に制限をかけるだけでは海外流出の歯止めには不十分。むしろ、「種は買う」ものとなって、日本の農家がグローバル種子企業に譲渡されたコメなどの種を買わざるを得ない状況を促進して、日本の種を海外企業に取られて、それに支配されてしまいかねない。結果的に、「流出阻止」のはずが「流出促進」にならないか、と心配する。 確かに、平昌五輪でイチゴの種苗が無断で流出していたと騒いだのに、グローバル種子企業へ米麦の種を「流出」せよと法で義務付け、それを買わざるを得ない流れを促進するのは矛盾している。(中略) Q 2018年に種子法の廃止がありました。これも日本の農業に大きな影響があったようです。どのような法律だったのでしょうか? A:命の要である主要食料の、その源である種は、良いものを安く提供するには、民間に任せるのでなく、国が責任を持つ必要があるとして、国がお金を出して、都道府県がいい種を開発して農家に安く提供する法律だった。 Q 種子法を廃止し、種苗法を改正する、日本はどのような農業を目指してそのようなことをしているのでしょうか? A:種子法が突如廃止されて、さらに、それとセットで、これまで国と県が開発した種は民間企業に譲渡せよ、という法律ができた。これと、今回の種苗法改定での無断自家採種の禁止とつなげると、公共の種をやめてもらって、それを自分のものにして、それを買わないと生産・消費ができなくなる、という形で、民間企業がもうけやすい構造をつくろうとしているように見える。(以下略)

いきなり種の話とは、どういう風の吹き回しかと、大いに訝られると思います。ぼくは農業をしていないし、始めようとも考えていないのに、なぜと問われると思う。うまく答えられないのは当たり前のようですが、実はこの問題は農業や食料にだけかかわってくるのではなく、あらゆる事柄が関係してくるというか、否応なく、日本の既成の制度や経済産業も含めて、あらゆる分野の事物が、グローバルスタンダードという「美名」(?)のもとに、国境を越えた多国籍企業群(農業の場合はモンサント)の餌食にされてしまう事態が着々と進行しているという、ぼくたちの現在と将来にとっては深刻な問題なのだと認識しているのです。かなり面倒な問題なので、分かりやすく、あるいは簡単に要約することはできません、ぼくの能力では。最近、以下のような映画が完成し、上映が始まっています。ぼくも鑑賞する予定です。


「日本の農業生産者にとって、深刻な影響を与える可能性のある法案がひそかに国会で通過しようとしている――。今年6月に継続審議となって国会成立が見送られ、11月上旬にも再び国会審議入りが予想されている種苗法改定案に警鐘を鳴らすドキュメンタリー映画『タネは誰のもの』が完成した。製作陣は農業者や地域で開く自主上映会の主催者を募っている。/ 種苗法改正案を巡っては、同法が成立するとグローバル企業が独占する種や苗を購入しなければならなくなる可能性がある自家採種・自家増殖農家と、知的財産権の保護を求める種苗開発農家との間で賛否が分かれている。同映画のプロデューサーを務めた元農林水産大臣で弁護士の山田正彦氏は「同法案の何が問題なのか。法案が成立すると生産者にどのような影響ができるのか。メディアはほとんど報じていない。拙速な法案成立は日本の農業を取り返しのつかない禍根を残す可能性がある」と呼びかけている。(https://biz-journal.jp/2020/10/post_188142.html)



この島のかけがえのない「財産」「文化」「歴史」つまるところは「生活といのち」を、アメリカではなく、それをも睥睨する強大な「モンサント」「バイエル」という怪異な企業に売り渡すような事態が深く静かに進行しています。この島は得体のしれない「多国籍企業」の軍門に下ろうとしているのです。「モンサント」は二年前にバイエルに買収されて、その傘下に入りました。「モンサタン(悪魔のモンサント)」、「ミュータント(突然変異)」という異名を持って、恐るべき歴史を刻んできたこの会社は、それを上回る恐怖の企業史に塗りこめられてきた「バイエル」と合体して、ともに世界制覇の無軌道を暴走しているのです。(https://www.afpbb.com/articles/-/3186001)
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