トランプは大統領に戻れる状態ではない

(隔離中にも関わらず病院の外に出てきて両手の親指を立てるトランプ)Cheriss May-REUTERS(10月4日、メリーランド)
Stanford Prof Questions Trump's Ability to Lead While on Dexamethasone
<トランプが投与された「デキサメタゾン」には精神作用があり、何でもできる気になる。執務に戻ったら戦争を始めかねない、と経験者は語る>
新型コロナウイルスに感染し、ドナルド・トランプ米大統領に投与されたのと同じステロイド薬「デキサメタゾン」を投与されたことがあるスタンフォード大学の教授が、トランプの精神は薬のせいでまともではなくなっており、とても執務に戻れる状態ではないと警告している。/「私がデキサメタゾンを処方されていた時には猫の面倒さえ見られなかった。トランプも大統領の職務に復帰するなど許されるべきではない。下手をすれば戦争を始めかねない。トランプは正常ではない」と、スタンフォードで法律と社会学を教えるミシェル・ダウバーは日曜の午後のツイートに書いた。
「私は脳の手術の後にデキサメタゾンを与えられた。これは精神を侵す薬だ。早く止めたかったが、この薬はいっぺんにやめられず、徐々に減らさなければならないので時間がかかる。トランプもそうだろう」/ トランプの医療チームは週末に、ウォルター・リード陸軍病院でトランプにデキサメタゾンを投与した。トランプは木曜の夜遅くに、彼と妻のメラニアは新型コロナウイルス陽性だとツイートした。そして金曜の午後に、ホワイトハウスからヘリでウォルター・リードに移った。/ アメリカ国立衛生研究所(N I H)はデキサメタゾンは人工呼吸器に繋がれているか、酸素吸入を必要とする患者に推奨している。N I Hのウェブサイトでは、デキサメタゾンの副作用の1つに精神症状を挙げている。/ トランプは日曜、支持者向けにビデオメッセージを送り、「サプライズ」を待てと言った。直後、トランプはS U Vの後部座席に乗って表れた。黒いマスクをしたトランプは支持者に手を振り、親指を立ててO Kのサインをして見せた。
異様で、同乗者を感染の危険に晒すこの車によるパフォーマンスは、薬の影響かもしれないとスタンフォードのダウバーは言う。「私の時は手術の直後主治医から、副作用の『ムード変容』のために山にれ、マラソンも走れるような気持ちになると言われた」/ ト ランプの医療チームはトランプは5日にも退院できると言っている。(スコット・マクドナルド)(NewsWeekJapan・2020年10月5日)
 

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 この一枚の写真が、現代歴史の予期せぬ「過誤」の証明にならないことを祈っています。感染症で隔離中の大統領が「己の示威行為」のために法律(規定)を無視し、同乗者を危険にさらしたという、なんという愚昧で異様な情景ですか。よくぞ医師団がこれを許可したと思われますが、なにそんな「諫言」さえ無視して、「October Surprise」(「米国で、大統領選挙の前月に起こる、選挙結果に大きく影響するような出来事」デジタル大辞泉)に及んだという恐るべきこの人物の荒唐無稽(absurdity)ぶりです。

 (この写真にかかわる一連の大統領の行動自体が、医師団や関係者と巧妙に(?)図って仕組まれた「演出(Fake)」である疑いはぬぐえない。再選されるためにはどんな手を使ってもやり遂げようとする人物であることは、これまでにも証明済みだからです。ぼくは四年前から、他所事ながら、こんな「人間」を大統領に選ぶアメリカという国の悲しさ、救い難さを感じてきました。いかなる意味でも「他山の石」であり「反面教師」としてしか受け取れない事態です)だが、ぼくの言いたいのはそれではありません。(ここでは、デキサメタゾンの効能や副作用については触れないでおきます。かなり前に、高名な学者から、この薬に関してはいろいろと伺ってはいましたが、今般の事情が分かりませんので、ここでは割愛)

 もう一か月半近く前(8月28日)になりますが、この島のPMが「解離性大腸炎」の悪化を「理由」に「辞任」表明の会見をしました。その際にも触れたことですが、彼は徹頭徹尾、逐一報道関係者に情報を流し、あろうことか車列よろしく、病院の往復道中まで写真と記事にしていました。(情報公開か)自分は病気なんだ、大変な重病なんだと宣伝する総理大臣が実在するのだから、驚きでした。長生きはしたくない、したいもの、どちらかに決められない稀な出来事。会見も時間をかけて練った作戦通りに、立派な振る舞いで開かれました。ぼくは怪訝に思い、さらに奇妙だなと感じたのは、すべてが「自作自演」だったという、その一点です。医療関係者は一度も顔を出さなかった。詳細は省くが、会見に病院の医師が同伴を求められたが、医師の責任上から、申し出を断ったとも伝えられています。医師の立ち合いがない代わりに「診断書」が出されたということはまったくなかった。

 一国の、いや一島の最高権力者が病気を理由に「辞任」するという緊急事態時に、見事な演技(だったか)を演じきったPMは、その後は「外交大使」(読売新聞)にでもと、大張り切りです。大事に至らなかったのは不幸中の幸いでしたが、いかにもつじつまが合わないという疑惑ばかりが残りました。指を指されるような事案があったら、議員も総理も辞めると、つまらぬ啖呵を切ったが、本音は「何があっても、どんな悪いことがバレても総理は辞めない」であったことは、さすが「権力志向ばかりは、ちっともブレない」最長不倒の人だった。

 このトランプ氏の入院・治療・外出(退院はまだですが)まで、その一挙手一投足に深く医師団がかかわり、逐次記者会見をして情報(内容の当不当は、今は問わない)の公開を進めています。島の「緊急事態」の状況となんと異なることか。なに、それは国力・影響力のチガイだからだ、と言えればいいが、そうはいきません。いかに小さいと言えども、一端(いっぱし)の権力者の交代ですから。さらにこのPMは権力欲の高さは偏差値の比ではなさそうだと睨んでいたのですから。ぼくはトランプに感じた異常とはまた違った異様(abnormality)を「トランペット」のケースにも感じていました。

 「特効薬が効いて、元気だ」と元PMは遊行の境地のようで、なにはともあれ、ご同慶の至りですけれども(腸(ハラワタ)は煮えくり返っているんだが)、いったい「辞任」の真意、真相は何だったのか。ほんとはここに書きたいんですが、今は筆(じゃなくキーボード)を折る(壊すか)ことにします。「腐っても鯛」(A diamond on a dunghill is still a diamond.)(この鯛は腐っていないね)ならぬ、腐ってもアメリカというのか、天文学的な愚かしい御仁であって、なお権力誇示と自己宣伝に身命をかける、この大統領の計り知れない愚行や欺瞞、恐喝や不道徳を、彼の国は余すところなく公開している、そのことを羨ましがるのではなく、本来、あるべき人民の「知る権利」がなんとしても堅持されようとしていることに万感の思いをいだきつつ、属国魂の卑屈さを、時の権力者の人間性やその陰湿な行動に見るという、けた違いの権利(人権)意識の希薄さ、薄情さに砂粒を噛み、それを嚥下するという、なんともいやーな思いがします。ぼくの持病は胃潰瘍だ。虫唾が走る。ああ、無常・無情!

 蛇足 「トランプは大統領に戻れない」という評価がありますが、こなたはどうか。「あわよくば、三度目の登場」となるか。二度あることは三度ある。仏の顔も三度まで、といいます。そのこころは「《いかに温和な仏でも、顔を三度もなでられると腹を立てるの意から》どんなに慈悲深い人でも、無法なことをたびたびされると怒ること。」(デジタル大辞泉)とすれば、庶民は仏ではないのですから、三度と言わず四度でも五度でも、登板はありそうですね。先発もリリーフもさっぱりの「選手」だと思うのですが。それに反して、中抜きは?(左は北海道新聞・2007年9月25日朝刊)

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 いつか来た道は、ぼくは初めて通るが

 筆洗 文芸春秋編集長などを務めた池島信平は日米開戦の前、歴史学者、羽仁五郎を訪ねている。破竹の進撃を始めていたドイツについて、<やがて同盟国の反抗に遇(あ)って負けますよ。必ずドイツは負けます。こんな国と日本が組んだら大へんだ>と聞く▼あまりの正しい予想に敬服したと池島は戦後、書いている。(『雑誌記者』)。マルクス主義史観の羽仁らは思想弾圧を受け、言論界に、沈黙も訪れた時代である。「正しい予想」も世の中には大きな影響を与えることはなかった▼戦後、羽仁も加わって発足した日本学術会議は、学問と思想の自由を掲げることになる。政府と軍事をめぐる問題などで関係が緊張したこともある。「正しい予想」が生かされなかった戦前の反省が、どこかにあったのかもしれない。政府が露骨に組織の人事に踏み込んだことはなかったという▼権力と学問の関係の中で不安がよぎる話である。菅義偉首相が、日本学術会議の新会員候補六人の任命を拒否した。なじみのある名前も並んでいる。特定秘密保護法に反対を示していたことなど、政府の方針に対し、どんな立場だったかが、理由になっている可能性があるという▼法的にも妥当性に疑義が出ている。詳しい説明が必要だろう。お気に召さない人を遠ざけるのが菅さんの手法なら、それも気になる▼学問の世界に沈黙がおとずれないことを願う。(東京新聞・2020/10/03)

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 任命拒否問題が尾を引いている。もっともっと引かなければなるまい。「筆洗」氏のいう羽仁五郎さんは、治安維持法で逮捕され、敗戦後に釈放された。後年になって、鶴見俊輔さんに「敗戦の日になぜ君は僕を助けに来なかったの?」となじられ、その瞬間に、鶴見さんは「アッ」と気が付いたといわれた。「戦後」はどこから始まるかということについて、自分は錯覚していたと。囚われの人々のところに駆けつけることがまず何よりも優先されるべきだったというのでしょう。「バスチーユ」に気がつかなかったのです。この直後、三木清や戸坂潤たちは獄中死を余儀なくされています。(学生時代に、一度だけでしたが、お逢いしたことがりました)

 いい加減にこの問題への言及をやめにしますが、言いたいことは、触れるべきではないものに手も出し足も出す政治権力のあやうさについてです。なんでもできるとばかりに、手当たり次第に勝手な振る舞いをするような政治権力は断罪しなければならない。学術会議だからどうとかいうのではありません。この問題を放置しておくと、どこかに出かけるにも届け出が必要だというような、埒もない事態を招くからです。「何がなくとも、まず交番から」というのはいやだ。この数年の間に、さまざまな法律が強引に制定されてきたのは承知の事実です。

 現政権はそのような時代に即さない状況をさまざまな抜け穴を悪用して生み出してきた前政権の直系であり、その性格は「居抜き」と言われるように、まったく同じ路線上を邁進しようとしているのです。前に向かって進んでいるように見えますが、実際には「治安維持法」時代の昭和初期(一世紀近く前)へと爆走・逆走しているのです。逆走時代というけれども、時代(時間)を遡れないのは物理の法則に問うまでもありません。だが、その不可能事を可能にしようというのだから、開いた口が塞がらないというのだ。どんな政治家も、誰からも穏健であると証明書付きのような者でも、いったん権力の椅子に座れば、標線します。君子豹変すというのではない、それまでは猫をかぶっていただけ、雌伏何年という耐性・持久力はあるんですね。

 ぼくは昭和初期を知りません。未生以前です。でも歴史の教えるところによれば、状況は今日と酷似しているとまでは言えないまでも、世界の政治・経済の現状、コロナ禍に呻吟する諸国、見通せない世情・世相への不安など、十分に透視できない「時代閉塞」の風潮は、さまざまな証拠類に照らして、当時に重なるようにも思えるのです。これを二重写し(オーバーラップ)という。「いつか来た道」とは誰も考えないだろうが、気が付いてみたら、同じ道を歩いていたということになりかねません。しかしながら、「歩く人にとっては初めて足を運ぶ道なんです」それをして、歴史はくりかえすというのかもしれません。

 学術会議がどんな性格のものであったか、いろいろな視点から確認することができます。先ず第一に、羽仁五郎さんが主要なメンバーとして設立初期の会議体をリードしてこられた、この一点を知るだけで、実際上の性格が判明するというものです。羽仁さんは一貫してバリバリのマルキストであったし、それを理由に獄中生活を余儀なくされた方でした。その他、挙げれば際限がなくなりますが、学術会議は権力者の意向で左右されることがあってはならないのに、それを敢えて犯した錯誤は、政府にとっては、なかなか高くつきそうです。鈍刀はやはり鈍刀、「汝自身を知る」に勝る処方箋は見当たらない。「過ちては改むるに憚ること勿れ」という俚諺の意味が主だった政府筋の面々に理解されるでしょうか。無理かも。

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●羽仁五郎(1901-1983)大正10年渡欧、ドイツ・ハイデルベルク大学で歴史哲学を学ぶ。昭和2年東京帝大卒業後、同大史料編纂所嘱託、日本大学・自由学園講師となり、3年日本大学教授、史学科を創設。三木清らとの討論により、歴史問題と唯物史観の構想に開眼。同年「新興科学の旗の下に」の創刊に参画、4年プロレタリア科学研究所創立に参加。6年マルクス主義学者として「日本資本主義発達史講座」では明治維新を執筆し、人民史観的考察で維新史研究に新時代を画す。その後も人民の抵抗精神を標榜し、治安維持法違反で2度逮捕され、終戦を獄中で迎えた。戦後、歴史研究会の再建に尽力、「日本人民の歴史」(24年)をまとめた。また22年には無所属で参院議員に当選。国立国会図書館の創設、破防法反対、学問・思想の自由保障委員会の中心になるなど精力的に活躍。2期つとめた後は著作に専念。23年より3期、日本学術会議会員。43年の「都市の論理」は大学紛争の全共闘運動に大きな影響を与えた。他に「転形期の歴史学」「歴史学批判序説」「明治維新」「ミケルアンヂェロ」などのほか、「羽仁五郎歴史論著作集」(全4巻 青木書店)「羽仁五郎戦後著作集」(全3巻 現代史出版会)がある。(20世紀日本人名事典の解説)

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