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今回も「コラム」ふたつばかり


筆洗 少し前、テレビでよく見た若手お笑いコンビのギャグには、なぜか、謝罪の言葉が多かった▼思いつくまま挙げれば「すいま、すいませんでした、すいま」(ハイキングウォーキング)、「ごめんね、ごめんねー」(U字工事)、ふてくされた顔で「どうも、すいませんでしたぁ」(響)というのもあった▼さて、福島第一原発事故を受けた東京電力による損害賠償の手続きが始まった。だが、被害者からは苦情が殺到しているという。無理もない。東電が送り付けた個人向け賠償請求書は六十ページ、説明書類は百六十ページほども。さらに難解な用語だらけでは、ことにお年寄りなど意気阻喪して当然だ▼例えば、企業が世間体を考えて何か制度を設けるが、実際は社員にあまり利用させたくないという場合の常套(じょうとう)手段は手続きを煩雑にすること。あるいは東電の賠償も…と勘繰りたくなる。さすがに経産相も書類簡略化を求めたが、東電はそのまま押し通す意向らしい▼賠償とは謝罪の意を込めた償いのはずだが、こんなやり方では、あの“謝罪ギャグ”と同じ。被害者は、謝られた気がしないどころか、小ばかにされたようにさえ感じよう▼あれだけのことをしでかしながら、原発事故時の対応手順書をべったり黒塗りして国会に提出し「知的財産だから」と嘯(うそぶ)いた件もしかり。この企業の無神経ぶりこそ“想定外”である。(東京新聞・11/09/23)

風土計 「誕生日ローソク吹いて立ちくらみ」(大阪府、63歳男性)。19日の敬老の日を前に「シルバー川柳」の入選作が届いた▼社団法人全国有料老人ホーム協会が公募。11回目の今年は98歳男性の最年長者から最も若い3歳男児まで、約9400句が寄せられた。老いも物忘れも何のその、前向きに笑い飛ばそうとする入選作品を紹介すると▼「歩こう会アルコール会と聞き違え」(大阪府、66歳男性)たのは決して耳のせいではなく、まだまだ意欲満々。「飲み代が酒から薬にかわる年」(滋賀県、72歳)までは夫婦や友人たちと楽しいひとときを持ちたい▼「『いらっしゃい』孫を迎えて去る諭吉」(大阪府、63歳女性)。来訪はうれしいが、出費がかさむのは痛しかゆし。「お迎えはどこから来るのと孫が聞く」(愛媛県、73歳女性)のも、ちょっと返答に詰まる質問ではある▼自らの老いを明るく受け止めようというのも川柳の真骨頂。「若作り席を譲られムダを知り」(東京都、71歳男性)とがっかりしながらも「少ないが満額払う散髪代」(東京都、66歳男性)と気概は十分。「聴力の検査で測れぬ地獄耳」(新潟県、71歳女性)も健在だ▼「なれそめを初めてきいた通夜の晩」(鹿児島県、25歳女性)。おじいちゃん、おばあちゃんの若き日の思い出は、座を和ませたことだろう。(岩手日報・11/09/18)

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東電はまるでブラックです。もう何年前になるか、知り合いの若者が二人、たてつづけに「東電」に就職した。辞めたらいいのにと、いいたかったが、「あなたは原発のことをどう考えていますか」と聞いた。男性の方は、「大丈夫」の一点張り。女性は「よくわかりません」と答えた。数年後の事故で、メールのやり取りとりをした。「東電という組織が、どんなにえげつないか、その実態をよく見てくださるといいね」とぼくは、そのようにお願いした。その後はまったくつながりが切れてしまいました。「停電か」な。お二人はどうされたか。ぼくは「東電」を変えました。ろうそくにでもと考えたんですが、連れ合いが「仏壇」じゃあるまいしと、反対。無理はしない。
シルバー川柳はとにかく明るい。人生、暗いよりは明るい方が何倍もいいに決まっています。でも当節は独占電力会社の停電が大流行ですから、ここは自家発電するほかなさそうです。(いろいろな電力会社が新規に参入してきましたが、基本の構図は旧態依然です。つぶれたはずの「東電」が生き残っている、まるでゾンビですね)ぼくは下手の横好きで、俳句をと、もう何年も苦心しているのですが、出来上がりは川柳の出来損ないばかりです。下手でもいいというが、それには限度というものがあるだろうと、横から言われると気分が悪いから、愚作は秘密のアッコちゃん。
そして、ここまで来て、どうしても紹介したくなった人がいます。ノーマン・カズンズ。彼についてはすでに何度か紹介しました。以下の文章も既出ですが、もう一度。

《 わたしは十年ばかり前にハンス・セリエの古典的な名著『生命のストレス』を読んだことを思い出した。セリエはその書物の中で、副腎の疲労が、欲求不満や抑えつけた怒りなどのような情緒的緊張によって起こり得るということを非常に明快に示し、不快なネガティブな情緒が人体の科学的作用にネガティブな効果をおよぼすことを詳しく説明していた。/ それを思い出した途端に、当然の疑問がわたしの心に湧いてきた。では積極的、肯定的な情緒はどうなのだろう。もしネガティブな情緒が肉体のネガティブな化学反応を引き起こすというのならば、積極的な情緒は積極的な化学反応を引き起こさないだろうか。愛や、希望や、信仰や、笑いや、信頼や、生への意欲が治療的価値を持つこともあり得るのだろうか。化学的変化はマイナスの側にしか生じないのだろうか。/ たしかに、積極的な情緒を引き起こすということは、水道の栓をひねってホースの水を出すように簡単にはいかない。しかし自分の情緒をある程度までコントロールできれば、それだけでも病理学的にいい効果を生ずるかも知れない。不安の念をある程度の自信感で置きかえるだけでも役に立つかも知れない 》(ノーマン・カズンズ『笑いと治癒力』岩波現代文庫。2001年)
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「企業が世間体を考えて何か制度を設けるが、実際は社員にあまり利用させたくないという場合の常套(じょうとう)手段は手続きを煩雑にすること」とありますが、企業に限らないのは先刻承知なのに、コラム氏は頬かむりを決め込んでいます。現下の税金からの「給付金」のいやたらしい手続きの意地悪さ加減は半端じゃない。なんでもそうだ、官庁や役所に「登録」する際、きっと「業者」に頼まなければ書けないような悪ふざけ・妨害をします。ぼくは、何とか自前でやろうとしますが、いつも窓口で「ケンカ」まがいになります。これこそ、困っている人間に同情なんかするものかという「お上」根性と、庶民を見下す「横柄」が(一部を除く)役人の腹部に黒々とに巣くっているのです。救い難い「頽廃」というべきです。「この企業の無神経ぶりこそ“想定外”である」というが、貴紙でもそうじゃないですか。電話をかけても「盥回し」、ぼくは何度も経験してきました。まじめに答えないで、いつかはゴマかそうという魂胆、その点では官民の差はなく、みなさんお揃いじゃないですか。問題を指摘する、今はそんな元気も失せましたが。(「読者の皆様」、「消費者の皆様」「皆様の✖✖✖」と、まるで「神様」あつかいが、聞いて呆れます。

川柳はいい薬ですが、「シルバー」という名称は嫌ですね。「シート(座席)」を即座に連想します。何十年も前のアメリカのテレビドラマの警備隊員(?)が乗っていた馬が「シルバー(「ローンレンジャー」1949年に最初のテレビ化))、さっそうとしていました。今では米国もとんでもないステートに成り下がったか、まるで島社会並みです。「おのれファースト」ですから。ついでに、「後期高齢者」は何ですか。後期も前期もあるものか。ステージいくつ(?)東京にも神奈川にも「アラート」ばやり、バカみたいというより、バカ丸だし。
マイナンバー ナンマイダーと 聞き違え 耳が悪いというのですか、お経も「百万遍」とは。聖人さんの御心にかないます。
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