
やりきれない事件や事故が続発しています。「凶悪」な事件の犯人には極刑が当然という感情は当然でしょうが、それでもなお、「死刑を望まない」という犯罪被害者もおられます。極めて少数かもしれませんが、おられます。どうして「そうなのか」と問いたくなるのもわかる気がします。ぼくも何人かの「犯罪被害者」にお会いしてきました。すべての方が「極刑を望んだか」といえば、そうではなかった。以下は、当事者の一人でもある原田正治さんの軌跡の一端を紹介することにします。(お会いする機会を得ないままで今日に至っています)
ひとりの人間の内部には魔性と仏性が併存しているのです。その意味では、人生はおのれとの闘いにつきるといっていいでしょう。わが内なる悪心をいかにしてなだめるか。一面では「人権」は木の葉一枚の重さに如かずともいえますが、それはまた、人の人たる所以でもあるのです。なんどでも、気を取り直して生き続けるばかりです。(「飯塚事件」を扱った右の東京新聞は18/12/29付け)
ついてくる犬よおまへも宿なしか(山頭火)
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償い 死刑でも癒やされぬ心
「遺族が加害者に求めるのは刑でも罰でもない。償いなんです」。6月18日、京都市の同志社大学。裁判員制度が始まったのを機に人を罰する意味を考えようというシンポジウムに招かれた愛知県春日井市の原田正治さん(62)は、学生たちに語りかけた。

1983年1月、運送会社に勤めていた弟=当時(30)=のトラックが京都府内で河原に転落した。当初は事故死と判断されたが、翌年5月、弟に2000万円の保険金をかけて殺害したとして、勤務先の社長と同僚が逮捕された。/社長は母親に「(弟に)貸した金を返してほしい」とうそをついて数百万円をだまし取ってもいた。
原田さんは怒りが収まらず、法廷で「極刑しかない」と訴えた。社長は共犯者とほかにも2人を殺していた。一、二審とも判決は死刑。社長は上告した。
ある日、拘置中の社長から手紙が届いた。それまでにも100通を超す手紙が来て読まずに破り捨てていたが、たまたま読んだこの手紙に「(弟の)墓参りに代理の者を行かせてほしい」と書いてあった。
会って怒りをぶつけてやると意を決し、拘置所に向かった。社長は面会室に姿を現すと感謝し、両手をついて「ごめんなさい」と謝罪した。憎しみは消えなかったが、話すうちに「もう一度面会したい。ずっと謝罪を続けてほしい」と思うようになった。上告は棄却され、最高裁で死刑確定後も3回面会した。2001年には法務大臣に死刑の執行停止も求めた。

「生きて罪を償うことを切にお望みくださった正治様には、ご期待にこたえることができなくて申し訳ありません」。同年末に死刑になった社長は、原田さんに遺書を残していた。
原田さんは遺族が極刑を望むのは間違っていないと考える。死刑の廃止論者でもない。ただ「社長が死刑になり、怒りをぶつける対象を失った」と感じた。
被害者と加害者の距離を縮め、本当の癒やしを考えたい-。原田さんは07年に「OCEAN 被害者と加害者との出会いを考える会」をつくった。
シンポではこう訴えた。「被害者の感情にもいろいろある。裁判官や裁判員は『遺族が望むのは厳罰』と型にはめて裁くのだけはやめてほしい」(原田正治さんのブログです。http://may23174.blog.fc2.com/)
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福岡市のエステ店で04年5月、石材会社を営む息子=当時(44)=を中国人留学生に殺害された佐藤泰彦さん(74)=長崎県長与町=は、中国で捕まった男の死刑回避を求め、中国の裁判所に嘆願書を出した。当初は死刑を望んでいたが、男の初公判が1カ月後に迫った時、妻と「優しかった息子は死刑を望むだろうか」と話し合った。悩んだ末の結論が「死刑になっても息子は帰らない。彼が死刑になれば、彼の両親も悲しむ」だった。判決は死刑を回避した。男は十数年後に社会に戻る可能性がある。佐藤さんにとっての償いは、男の「親孝行」という。(西日本新聞・09/07/08)

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死刑(制度)問題、いったい何十年ぼくは考えつづけてきたか。簡単に割り切れないし、割り切るべきではないと悩んできました。「人を殺すのはよくない」という命題は、誰に対しても、どんな場合にも妥当する(すべき)はずだとも考えてきました。「死刑」はまぎれもない殺人です。それを「国家」が行う場合は許されるというのは是認できないし、だから、…。 いかなる理由で、「死刑廃止」の国が増加してきているのでしょう。
「死刑になっても息子は帰らない。彼が死刑になれば、彼の両親も悲しむ」
「遺族が加害者に求めるのは刑でも罰でもない。償いなんです」
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● 「私たちアムネスティ・インターナショナルは、死刑を人権の問題と考えています。そして、「生きる」という最も基本的な人間の権利を根本から否定する刑罰が、死刑だと考えています。

アムネスティは、1977年に「死刑廃止のためのストックホルム宣言」を発表し、「死刑は生きる権利の侵害であり、究極的に残虐で非人道的かつ品 位を傷つける刑罰である」として、あらゆる死刑に例外なく反対する姿勢を明確にし、死刑のない世界の実現に向かって活動してきました。
こうしたアムネスティの活動は、死刑廃止への世界的な潮流につながり、1991年には国連の死刑廃止国際条約(自由権規約第二選択議定書)が発効しました。それから20年あまり経った今日、死刑廃止国は世界の3分の2以上の140カ国になっています。」(https://www.amnesty.or.jp/human-rights/topic/death_penalty/)
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