コロナ禍で制約を受けるアメリカの日常は、黒人にとっての日常(パックン)2020年05月30日(土)15時30分
ロブ・ロジャース(風刺漫画家)/パックン(コラムニスト、タレント)

…風刺画では「自由の国」なのに、経済活動も生活も自由にできないって、どんなアメリカだよ(What kind of America is it?)と、新型コロナウイルス感染拡大中の生活に不満を感じる白人の疑問が挙がっている。そして普段から学校でも、銀行でも、不動産屋でも、会社でも裁判でも平等な扱いを得られず、買い物、デートなど外に出るだけで命の危機を感じる黒人は「俺のアメリカだ(My America)」と答える。切ない限りだ。

さらに残念なことに、コロナ危機においても黒人が受けるダメージは白人のそれより大きいようだ。職種や貯金額などの違いから自宅待機ができないとか、「疑われると撃たれる」恐れがあるからマスクを着けないとか、さまざまな理由で感染率が高い。そもそも黒人の医療保険の加入率が白人より低い。予防治療を受ける割合も低い。黒人が受ける医療の質も低い。その結果の違いが、いま著しく表れている。全国平均で、黒人のコロナによる死亡率は白人の死亡率より2.4倍も高い。
ここまで病んでいる国がMy Americaでもあると考えると、僕は実に恥ずかしい。(https://www.newsweekjapan.jp/)<本誌2020年6月2日号掲載>
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いまアメリカで生じていることは、けっして対岸の火事ではないとぼくには思われます。銃が発射されたり、街頭で火の手が上がるような事態にはめったに遭遇しませんが、事いたったならば、その程度のことは起きても不思議ではないでしょう。要するに「きっかけ」の有無が問題になっているのです。さらにいえば、それだけ日常的に「抑圧」や「強制」、あるいは監視や管理が現下一にまで達しているからこそ、時には暴発するのだというのです。

警察署に火をつけ、集まるデモ参加者。5月28日、ミネアポリスで撮影(2020年 ロイター/Carlos Barria)
君は「暴力」や「暴動」を認めるのかと問われれば、ぼくは場合によっては、というほかありません。圧倒的な武力(暴力)を一方的に容認されている権力側に対抗する、どんな手段を民衆は持っているのか。むのたけじという人が怒りを以て言われたことがありました。秀吉は「刀狩り」をしましたとかんたんにいうが、それは「刀狩られ」だと。武具や農具をことごとく召し上げられ、以来、武力は権力の占有となったのです。それに対するに、被抑圧者は身命をかけるしか方途はないのです。アメリカとこの島では事情は大いに異なりますが、「差別」とそれを生み出す「偏見」が野放しされているままで、どれだけきれいごとをいっても始まらないというのがぼくの実感です。
目には目を、歯には歯( lex talionis )をというのはいかなる意味合いだったか。ぼくは詳しくは知りませんが、同じ力関係でない限り、この報復は成り立たないでしょう。暴力を肯定はしませんが、それも条件次第です。ガンジーの非暴力抵抗主義も単純なものではないようです。「暴力(武力)」をだれが使うか、行使するかということを見逃すべきではないとぼくは考えているのです。「自衛」「防衛」は認められなければならないでしょう。そのために力や武器を使うこともある。それを禁じたなら、事態は変わらず、権力はいつでもそれを我が物にするだけです。
「もしも黒人の暴動がなかったら、アメリカは少しも変わらなかったろう」という意味のことを言ったのはM.Foucaultでした。
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