As we act, let us not become the evil…

Statement of Rep. Barbara Lee on the floor of the House of Representatives・Sept. 14, 2001.

Mr. Speaker, I rise today with a heavy heart, one that is filled with sorrow for the families and loved ones who were killed and injured in New York, Virginia, and Pennsylvania. Only the most foolish or the most callous would not understand the grief that has gripped the American people and millionsacross the world. This unspeakable attack on the United States has forced me to rely on my moral compass, my conscience, and my God for direction.

September 11 changed the world. Our deepest fears now haunt us. Yet I am convinced that military action will not prevent further acts of international terrorism against the United States. I know that this use-of-force resolution will pass although we all know that the President can wage a war even without this resolution. However difficult this vote may be, some of us must urge the use of restraint.

There must be some of us who say, let’s step back for a moment and think through the implications of our actions today–let us more fully understand its consequences. We are not dealing with a conventional war. We cannot respond in a conventional manner. I do not want to see this spiral out of control. This crisis involves issues of national security, foreign policy, public safety, intelligence gathering, economics, and murder. Our response must be equally multi-faceted. We must not rush to judgment.(omit)

Finally, we must be careful not to embark on an open- ended war with neither an exit strategy nor a focused target.(omit)

I have agonized over this vote. But I came to grips with it in the very painful yet beautiful memorial service today at the National Cathedral. As a member of the clergy so eloquently said, “As we act, let us not become the evil that we deplore.”

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 引用の英文はその日付からもわかりますように、2011年9月14日、「WTCビルへのテロ攻撃」の三日後に、アメリカ下院議会で行われたバーバラ・リー議員の演説内容です。時のブッシュ(ジュニア)大統領は「アルカイダへの武力決議案」を大統領権限として議会に出した。リー議員は「武力行使はアメリカに対する国際テロのさらなる攻撃を防ぎえない」と決議案に反対を表明したのです。議会の議決を要しない大統領案にもかかわらず、彼女は「この(反対」投票がどんなに困難であっても、私たちのだれか自制するように説得しければならない」と述べる。

 ぼくは、当時、この演説草稿をリー議員のHPから手に入れて、繰り返し読んだことをはっきりと覚えています。議会に出すことなく、大統領は「戦争できる」にもかかわらず、決議案を提出して議会の一致を求めたのです。圧倒的な支持と同意を手にしたかったのです。すでに上院では大統領決議案は「98対0」で通過していた。リー議員の反対演説には全米からの非難や中傷が浴びせかけられたのでした。「私たちは急いで判断してはならない」と彼女は訴えた。

「私は確信しています。軍事行動でアメリカに対する、これ以上の国際的なテロを防ぐことはできないということを」

「急いで判断をくだしてはならないのです。もうすでに、あまりにも多くの無実の人びとが亡くなっているのです」

「出口も、また明確な目標もない終わりのない戦争にふみださないようにしなければならないのです」

このように述べて、彼女は演説を終えました。

 投票の結果は「420対1」だった。その直後から、彼女は全米中の激しい非難や中傷の的になった。陰湿な脅迫すら受けた。しかし彼女は引き下がらなかった。彼女の「一票」に、もし正しさがあったなら、それはやがて五にも十にもなるでしょう。もし「0」だったら、そこからは何も生まれないどころか、敵愾心に襲われた国家の反逆が殺戮をほしいままにするでしょう。ぼくは何度も、この「一票の反対」の意味を考えた。全員一致がどんなに危険であるか。反対がなく「全員」が武力行使に賛成であることを大統領もアメリカ市民も求めた熱狂の中で、一票の反対は、それこそ「目の敵」「目ざわり」「度し難い反抗」とされたのです。「千里の道も一歩から」というのは本当ですね。その「一歩」、そう、最初の一歩をだれが踏み出すか。これが問われたのです。

 全体がまちがえたなら、その過ちを救うのはだれか。リーさんの出した問題は困難きわまりないものでしたが、かろうじてアメリカを救出する可能性を示す光となったのではなかったか。あえて言う必要もないことですが、「満場(全員)一致」は退廃であり、堕落であることがほとんどです。それは「たった一人の意向」に無条件で従うことでしかないのですから。ある問題や状況に、反対意見があるというのは、健全であり望ましいことだとぼくは信じてきました。今はことにそう信じています。反対を許さないという風潮に、ぼくたちはよく抗しえているか。

 あえて異議を唱えるというのは、けっして生半可なことではない。どんな物事にも裏表の二面(両面)がある。事柄の一面しか見ないという「狭さ」が人を過ちに誘うのです。バーバラさんの行動を知るにつれて、ぼくは見果てぬ夢のデモクラシーの所在に、いっそうの思いを重ねてきました。「異議あり!」「ナンセンス!」と。(この項は、つづく)

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〇 Barbara Lee 職業・肩書 政治家 米国下院議員(民主党) 国籍米国 生年月日1946年7月16日 出生地テキサス州エル・パソ 学歴ミルス大学〔1973年〕卒,カリフォルニア大学バークレー校大学院(社会福祉)〔1975年〕修了 経歴アフリカ系。1990年から6年間、カリフォルニア州議会下院、2年間同上院議員。’98年4月カリフォルニア州選出の民主党連邦下院議員に当選。平和、環境、社会福祉などの問題で活躍。2001年9月ニューヨークなどで起きた同時多発テロ事件直後、アフガニスタンに潜伏するテロリストに対する武力行使を、ブッシュ大統領に認めるか否かの決議に際し、上院は全会一致だったが、下院でただ一人反対票を投じ(420対1)、注目を集めた。2002年初来日し広島などを訪れた。(「現代外国人名録2016」)

投稿者:

dogen3

 毎朝の洗顔や朝食を欠かさないように、飽きもせず「駄文」を書き殴っている。「惰性で書く文」だから「惰文」でもあります。人並みに「定見」や「持説」があるわけでもない。思いつく儘に、ある種の感情を言葉に置き換えているだけ。だから、これは文章でも表現でもなく、手近の「食材」を、生(なま)ではないにしても、あまり変わりばえしないままで「提供」するような乱雑文である。生臭かったり、生煮えであったり。つまりは、不躾(ぶしつけ)なことに「調理(推敲)」されてはいないのだ。言い換えるなら、「不調法」ですね。▲ ある時期までは、当たり前に「後生(後から生まれた)」だったのに、いつの間にか「先生(先に生まれた)」のような年格好になって、当方に見えてきたのは、「やんぬるかな(「已矣哉」)、(どなたにも、ぼくは)及びがたし」という「落第生」の特権とでもいうべき、一つの、ささやかな覚悟である。(2023/05/24)