季節は空を渡るなり

淡くかなしきもののふるなり
     紫陽花いろのもののふるなり
淡くかなしきもののふる
     紫陽花いろのもののふる道(三好達治「乳母車」より)
 夏至がやってくる。 誰が望んだわけでもないが、きっと季節は流転する。流れに逆らうように人智も人為も変転を軽んじ、あげく、弾みに足元を掬われ、ついに、うたかたの如くに霧消する。「よどみに浮ぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとゞまりたるためしなし」
 花の美しさをひとはいうが、美しい花があるばかり。人の世の淀みも穢れもしらぬままに、今年もまた、美しい花が咲いた、あちこちに。だが瞬くうちに、花々はふかく朽ちはてる。花のいのちは短いし、人のいのちもなお短い。花に嵐というように、「別離」もまた、人生のよせかえす波の仕打ちなのだ。(山埜郷司・聡司)(2020/06/23)

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