さいかちのこぼれこぼれつ師走かな(犀星)

 十二月は「師走」とも「臘月(ろうげつ)」とも「極月(ごくげつ・ごくつき)」とも言われてきました。それぞれに意味合いが異なるようでもあり、やはり年(歳)が詰まってきたという忙しなさも感じられます。時代が変わるに連れて、人々の年月に寄せる思いも深く、あるいはこれみよがしに騒々しく変わってきました。多くの人は、いまはどんな感覚をもって「十二月」を過ごしているのでしょうか。この駄文集も、開始から三年目が目前です。なんの感慨もありません。何を書くでもなく、寝床でも道端でも、ひたすら「寝言」を漏らしているような、あるいはのべつ「涎(よだれ)」を垂らしているような、ひどい醜態を晒してきました。いまさら、この為体(ていたらく)をどうすることもできません。これはぼくの「生活綴方」であり、管見・浅見のあけすけな恥晒しでもあります。(*「蝋」という漢字にはいくつかの意味があります。ぼくが知っているので、珍しいのは、岡山県高梨市にある川上町臘数(かわかみちょうしわす)です。ここに「蝋」があります。暮(くれ)と訓じます。(右上と左下の写真は「さいかち」)

 この駄文の山を築くきっかけになったのは、いまから三年前、ぼくの後輩である、都下の私立学校で教員をしている友人と話した一本の電話からでした。彼は勝れた教師であろうと、懸命に力を振るっている人であり、ぼくも多少の付き合いがありましたから、なにかできることがないかと、学校や教育、あるいは授業などに関して、ほんの思いつきでしかありませんが、駄文を書いてみましょうか、それはまた、著しいわが「老化」の妨げにもなるかという、余計なことも重なっていました。まことに余儀ない仕業で、書きなぐっていくうちに、どんどん思わぬ方向に逸れていくのが、自分でも如何とも仕方がありませんでした。その実態については、いやというほど書き綴ってきましたから、これ以上は言わないことにします。

 つくづく、ぼくたちはどんな時代・社会に生きているのかと、埒もない疑問や不安が絶えることはありませんでした。「長く生きれば恥多し」と宣ったのは兼好さんだった(誰彼なしに、兼好流の「老境」を生きている)が、それにしても、「長生きすること」は社会の迷惑と、あからさまに言っているような状況に置かれている気がする。だれだって、「青春」が永遠に続くことはあるはずもないことは知っています。(右写真は「侵略で破壊されたウクライナの冬の景色」・BBCより)

 しかし、殊の外、「老人よ早く去れ」と、当てつけがましく言われるのではなくても、多くの人は微かに気づいているのです。世に蔓延(はびこ)る敬老精神の希薄を嘆くのではない。他人を敬う精神(心遣い)が十分に育たないままで生きている中で、お互いを気遣う心持ちが失われてしまったのでしょう。これは個人ばかりではなく、至るところで生じている時代の病理かも知れません。隣人を大事にすることがまるで沽券に関わるような、尊大不遜な態度を隣国に向けているのは、ロシアだけに限りません。(こんなところに、学校教育の犯した誤ちの重さを、苦々しく思い憚っているのです)

 ぼくにはいささかの「誇るべきもの」もありません。それはしかし、負け惜しみではなく、いいことだったと、今では痛感しています。人に勝りたいという「根性」が著しく欠けています。それも、ぼくにとってはさいわいことでした。ないものはねだらないし、ない知恵は縛れないのも道理で、身の丈にあった歩幅でしか歩けなかった、そんな「カメ」のような人間の、カメだったら、こんなことをもそもそと喋るのだろうという当て推量で、駄文を重ねてきたのでした。流転とか論ねという言葉がふさわしいかどうか、ぼくにはよくわかりません。しかし、一瞬たりとも「静止状態」にあることはないという点では、カメの鈍い動きであろうが、うさぎの俊敏さであろうと、変わりはないのでしょう。うさぎはうさぎなりに、カメはカメなりに、それが何よりも肝心だと思い続けてきました。カメはうさぎにはなれないし、その反対も真。尺度は「悠久(eternity)」です。その中での「私の生涯」をいつも考えている。 

 (数日前から、今使用しているHP用のプラットホームがうまく働いてくれません。安価とはいえ有料ですが。きっと、書かれている内容に嫌気がさして、ストライキを起こしているのでしょう。気分一新とは行きませんが、ほんの「表紙」だけを捏造した次第です)(右は「さいかち」)

●さいかち【皂莢】=マメ科の落葉高木。山野や河原に自生。幹や枝に小枝の変形したとげがある。葉は長楕円形の小葉からなる羽状複葉。夏に淡黄緑色の小花を穂状につけ、ややねじれた豆果を結ぶ。栽培され、豆果を石鹸(せっけん)の代用に、若葉を食用に、とげ・さやは漢方薬にする。名は古名の西海子 (さいかいし) からという。《 実=秋 花=夏》「夕風や―の実を吹き鳴らす/露月」デジタル大辞泉) (2022/12/10)

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